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第3章 リースナーの町 ダンジョン攻略

第27話 ダンジョン内で初めての治療

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 週明けのダンジョン初日。
 いつものように安全地帯へいくと、怪我をした女性を同じパーティーメンバーが取り囲んでいる。
 右手をかなり負傷しているようだ。
 ちらっと見た感じ広範囲に傷口が渡り、骨がのぞいている部分もある。
 見ているだけで、とても痛そう……。
 ハイポーションじゃ治らないのか、ポーションを取り出す事もしない。
 そこに兄が急いで駆け付ける。

「しみますよ! 我慢して下さい」

 舌をまないよう女性の口に棒を挟み、傷口へウォーターボールでじゃばじゃば水を掛けヒール唱え治療した。
 傷口が綺麗にふさがり安心すると、女性達は何故なぜだか困惑こんわくしている様子。 
 ありがとうございますとお礼を言っているけど、なんだかつらそうにも見える?

 私の方をちらりと一瞬だけ見やり、怪我を治療してもらった女性が兄の手をつかみ自分達のテントへと連れていってしまった。
 他のパーティーメンバーは動かないままだ。
 しばらくすると、兄が憤慨ふんがいした様子でテントから出てきた。
 パーティーメンバー達は、戸惑とまどった顔をして兄を引き留めようとする。
 
「何かあったの? 他にも怪我してた?」

 兄が怒りながら出てきた理由が分からずたずねてみたけど、

「テントの中に入ってから話す」

 そう固い声で言われ、気になったままマジックテントを設置する。
 問いただすと、連れていかれたテント内に入った途端とたん、女性が服を脱ぎ出したらしい。
 ???
 あぁなるほど……、少し考えてからその行為に思い当たる。
 要するに性接待をする心算つもりだったのか……。

 ハイポーションは銀貨6枚(6万円)だ。
 誰も持っていないのか効果が期待出来ないのか、使用してはいなかった。
 6万円は高級娼婦の値段だ。
 兄は外科医として、そうされたのが許せなかったんだろう。
 消毒薬もなく、麻酔薬も打てず、傷口をわず治療する事に、いつもどこか納得がいかない顔をしていたから。

 その後、仲良くなった女性冒険者に、こういう事はよくあるのか尋ねると、基本的に地下1階の治療代は使用するポーションの3倍払う必要があるそうだ。
 怪我をして、その日の収入を不意ふいにするのを考えると妥当だとうなのか。
 しかも今回のような傷だとハイポーション(銀貨6枚)では治らず、エクスポーション(銀貨30枚)が必要だとか。
 その3倍では銀貨90枚(90万円)になる。
 かなりの高額治療だ。

 それと光魔法を使える人は、あまり冒険者にいないらしい。
 必要になるMP消費も多く無料で治療はしないそうだ。
 それから槍を持ったリザードマンを見付けると兄は瞬殺していた。
 槍に血が付いていたから、女性の傷はもしかするとこの魔物に付けられたのかも?
 3時間毎の休憩時、いつもテントの中にこもりきりだと不審に思われるかも知れないと、購入した(小型)魔道調理器でお湯をかし、この世界の紅茶に似た飲み物を飲むようにした。

 ダンジョン内は15度くらいで少し肌寒い。
 辺りを見ると女性冒険者達は温かい飲み物を口にしていた。
 ダンジョン攻略は10時間くらいなので、お腹も空くだろうし水分も必要になる。
 まあ、トイレもね。
 10時間も狩りを続けるのは、休憩を挟みながらしないと無理だろう。
 ドライフルーツを食べ糖分も補充しているみたいだ。
 食事は何を食べてるんだろう?

 気になり隣のテントで料理中の女性へ見ても良いか聞き観察すると、切った野菜とつのウサギの肉だろうか? を鍋に入れ、塩とハーブのような物を一緒に煮込んでいた。
 ハーブのような物はローリエの代わりかも?
 露店に売っているパンが主食みたいだ。
 最初に材料をいためたりはしていない。
 いためると味にコクが出るし煮崩れも防げる。

 塩のみの味付けではなく、胡椒こしょうやコンソメを入れるだけで随分ずいぶん違うだろうなぁ。
 この世界は電子調理器に似た魔道具があるのに、食事に関して発展がかなり遅れている。
 調味料が塩のみとか……。
 主食のパンに至っては更にひどい。
 公爵邸で出されたパンは、一般的に食べられている物だった。(使用人の食べるパンじゃなかったよ!)
 
 無発酵で作られている所為せいか、固くぼそぼそした食感だ。
 食べると口内の水分が全て奪われる感じがする。
 当然、私達の口に合わず、この世界で外食はしなかった。
 野菜は普通で、じゃがいも・人参・玉ねぎの味は変わらない。
 日本と同じくらい農業が発展しているようなのに……。
 何故なぜ塩だけの味付けなのか、不思議で仕方ない。
 異世界独自の調味料があっても良いはずだ。

 日本人の食に対する執念しゅうねんは、世界でもトップレベルだと思う。
 ほとんどの多国籍料理を、日本人好みの味付けに変化させ売っているのだから。
 カレーやラーメンなんかは、その代表的な良い例だろう。
 あらゆる食材が普通にある私達は、異世界の料理を正直食べたいと思えなかった……。
 自宅で美味しい料理を食べられなければ、ダンジョン攻略は中止していたかも知れないなぁ。
 本当にホームの能力があるお陰で、食事に苦労せず助かった。

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