37 / 819
第3章 リースナーの町 ダンジョン攻略
第37話 地下8階での初治療&リースナーの町 子供達の家 2
しおりを挟む
翌週の探索期間中に、地下8階で怪我をした男性冒険者を取り囲んでいる姿を見かけた。
アーサーさんのパーティー仲間だ。
どうやらスケルトンが持つボロボロの剣で切られたらしく、左足を酷く損傷している。
かなりの出血量だ――――。
太い血管が切れているのだろう。
怪我をした男性は、真っ青な顔をし歯を食いしばっている。
エクスポーション(銀貨30枚)では治らないのか、アーサーさんの表情は硬い。
このまま帰還して今回の探索を終えると、高額治療費と往復時間の損害が大きいのだろう。
兄は周りの人をかき分け怪我人に近付くと、手早く傷口を確認し太ももをマジックバッグから取り出した紐で固く縛った。
それから「我慢しろ」と言い、ウォーターボールで傷口を洗い流す。
ヒールを掛けた後、元の状態に戻った太ももを見て全員が唖然としていた。
「助かった! 今回の探索は諦め帰還しようと思っていた所だったんだ。皆で礼を言わせてもらおうっ!」
「ありがとうっ!!」
アーサーさんのパーティーメンバー全員にお礼を言われ、深く頭を下げられた兄は淡々と縛っていた紐を解いた。
「いや、治療が間に合って良かった」
怪我をした男性が、お礼がしたいと兄をテントへ連れていく。
あっ指を刺されて侵入者防止結界の魔石に登録された。
後で登録解除って出来るのかしら?
魔道具の謎は深い。
何故か、パーティーメンバーは私を見ながら頷いている。
何をくれるんだろう?
暫くすると怒鳴り声が聞こえ、兄が憤慨した様子でテントから出てきた。
「お兄ちゃん?」
「テントの中で話す」
あれ、この展開前にもなかったっけ?
話を聞くとテントの中に入った瞬間、服を脱ぎ始めたんだそうだ。
まさかの、性接待である!!
「いらんわ、ボケ!」
と怒鳴り出てきたそうな……。
ご愁傷様です。
後でこれは普通なのか聞いてみると、深部を長期間探索している男性冒険者には治療のお礼として珍しくはないらしい……。
まぁ1ヶ月も閉塞されたダンジョンで、ひとつのテントを使用し6人一緒で生活するのだ。
若い男性には我慢するのが難しいのだろう。
そして庶民が就く仕事は冒険者が多い。
異世界は、妙な所に柔軟性があるみたいね。
後は、治療に必要なポーションの値段×(階層階+2)の治療代を支払うのが基本だとか。
今回の場合、エリクサー(金貨1枚・100万円)に該当するので治療費は金貨10枚(1千万円)。
エリクサーは王都にしか売っていないらしい。
しかも、貴族じゃないと購入出来ないんだって。
教会や治療院に金貨1枚支払い、治療するのが普通だそうだ。
いや浅い階層なら問題ないけど、深い階層で怪我をしたら帰還する間に出血多量で死ぬから!
まあ、だから路上生活をしている子供が多くなるんだろうな。
高額だったため、今回はありがたく金貨10枚を受け取っておいた。
これで家が一軒購入出来るしね。
こんな所に身分制度の弊害があるのは、日本との違いを実感させられる。
貴族は、やはり優遇されているんだろう。
今の所、関わる心算はないけど勘違いした面倒くさい人が多そうだ。
正直、身分を笠に着て高圧的な態度を取られたら、私は問答無用で喧嘩を売る自信がある。
身分制度のない日本で育ったから、地位に相応しい人間でもない限り敬う必要性を感じない。
探索の合間に炊き出しをしながら冒険者ギルド所有の中古物件を聞いてみると、一番安い物で金貨5枚(500万円)からあるらしい。
ミリオネの町より少し高いけど、金貨5枚の一軒家(中古)10軒と必要になる生活用品を少しずつ全員分買い揃えていった。
そして1ヶ月後。
路上生活をしている子供達全員が入れる環境が整った。
だって子供布団100枚とか店に置いてないから、不足分を注文し取り寄せたりと時間が掛かったのよ。
「ここが今日から貴方達の住む家です。お姉ちゃんとの【約束事】を守りながら綺麗に使ってね!」
子供達を引き連れ、一軒、一軒、案内していく。
家を見た瞬間に子供達は玄関まで走り出す。
住める家が出来た事が嬉しいのか、皆笑顔で一杯だ。
「お姉ちゃん、ありがとう!! 僕、頑張って家をピカピカにするね~」
「お家に住めるなんて夢みたい! 料理の仕方を教えてくれてありがとう。私、毎日皆のために、ご飯を作ってあげるよ!」
口々に、お礼を言ってくれる。
それでも冒険者になるまで生活手段がない子供達へ、まだ多くの支援が必要だけれど。
こうして、リースナーの町から路上生活をしている子供達はいなくなった。
-------------------------------------
お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
-------------------------------------
アーサーさんのパーティー仲間だ。
どうやらスケルトンが持つボロボロの剣で切られたらしく、左足を酷く損傷している。
かなりの出血量だ――――。
太い血管が切れているのだろう。
怪我をした男性は、真っ青な顔をし歯を食いしばっている。
エクスポーション(銀貨30枚)では治らないのか、アーサーさんの表情は硬い。
このまま帰還して今回の探索を終えると、高額治療費と往復時間の損害が大きいのだろう。
兄は周りの人をかき分け怪我人に近付くと、手早く傷口を確認し太ももをマジックバッグから取り出した紐で固く縛った。
それから「我慢しろ」と言い、ウォーターボールで傷口を洗い流す。
ヒールを掛けた後、元の状態に戻った太ももを見て全員が唖然としていた。
「助かった! 今回の探索は諦め帰還しようと思っていた所だったんだ。皆で礼を言わせてもらおうっ!」
「ありがとうっ!!」
アーサーさんのパーティーメンバー全員にお礼を言われ、深く頭を下げられた兄は淡々と縛っていた紐を解いた。
「いや、治療が間に合って良かった」
怪我をした男性が、お礼がしたいと兄をテントへ連れていく。
あっ指を刺されて侵入者防止結界の魔石に登録された。
後で登録解除って出来るのかしら?
魔道具の謎は深い。
何故か、パーティーメンバーは私を見ながら頷いている。
何をくれるんだろう?
暫くすると怒鳴り声が聞こえ、兄が憤慨した様子でテントから出てきた。
「お兄ちゃん?」
「テントの中で話す」
あれ、この展開前にもなかったっけ?
話を聞くとテントの中に入った瞬間、服を脱ぎ始めたんだそうだ。
まさかの、性接待である!!
「いらんわ、ボケ!」
と怒鳴り出てきたそうな……。
ご愁傷様です。
後でこれは普通なのか聞いてみると、深部を長期間探索している男性冒険者には治療のお礼として珍しくはないらしい……。
まぁ1ヶ月も閉塞されたダンジョンで、ひとつのテントを使用し6人一緒で生活するのだ。
若い男性には我慢するのが難しいのだろう。
そして庶民が就く仕事は冒険者が多い。
異世界は、妙な所に柔軟性があるみたいね。
後は、治療に必要なポーションの値段×(階層階+2)の治療代を支払うのが基本だとか。
今回の場合、エリクサー(金貨1枚・100万円)に該当するので治療費は金貨10枚(1千万円)。
エリクサーは王都にしか売っていないらしい。
しかも、貴族じゃないと購入出来ないんだって。
教会や治療院に金貨1枚支払い、治療するのが普通だそうだ。
いや浅い階層なら問題ないけど、深い階層で怪我をしたら帰還する間に出血多量で死ぬから!
まあ、だから路上生活をしている子供が多くなるんだろうな。
高額だったため、今回はありがたく金貨10枚を受け取っておいた。
これで家が一軒購入出来るしね。
こんな所に身分制度の弊害があるのは、日本との違いを実感させられる。
貴族は、やはり優遇されているんだろう。
今の所、関わる心算はないけど勘違いした面倒くさい人が多そうだ。
正直、身分を笠に着て高圧的な態度を取られたら、私は問答無用で喧嘩を売る自信がある。
身分制度のない日本で育ったから、地位に相応しい人間でもない限り敬う必要性を感じない。
探索の合間に炊き出しをしながら冒険者ギルド所有の中古物件を聞いてみると、一番安い物で金貨5枚(500万円)からあるらしい。
ミリオネの町より少し高いけど、金貨5枚の一軒家(中古)10軒と必要になる生活用品を少しずつ全員分買い揃えていった。
そして1ヶ月後。
路上生活をしている子供達全員が入れる環境が整った。
だって子供布団100枚とか店に置いてないから、不足分を注文し取り寄せたりと時間が掛かったのよ。
「ここが今日から貴方達の住む家です。お姉ちゃんとの【約束事】を守りながら綺麗に使ってね!」
子供達を引き連れ、一軒、一軒、案内していく。
家を見た瞬間に子供達は玄関まで走り出す。
住める家が出来た事が嬉しいのか、皆笑顔で一杯だ。
「お姉ちゃん、ありがとう!! 僕、頑張って家をピカピカにするね~」
「お家に住めるなんて夢みたい! 料理の仕方を教えてくれてありがとう。私、毎日皆のために、ご飯を作ってあげるよ!」
口々に、お礼を言ってくれる。
それでも冒険者になるまで生活手段がない子供達へ、まだ多くの支援が必要だけれど。
こうして、リースナーの町から路上生活をしている子供達はいなくなった。
-------------------------------------
お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
-------------------------------------
応援ありがとうございます!
131
お気に入りに追加
4,498
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる