自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
80 / 781
<外伝> 椎名 賢也

椎名 賢也 16 ダンジョン 地下1階 思い出の寿司屋

 冒険者ギルド前から馬車に乗り1時間。
 ダンジョンに到着する。

 もう一度、入場料の銀貨1枚(1万円)を払いダンジョン内に入っていく。
 沙良は2人分の入場料銀貨2枚(2万円)を払うのに、嫌そうな顔をしていたけどな。

 なんならダンジョン前~冒険者ギルド間の乗合馬車1人銅貨2枚(2,000円)×4の8,000円も勿体もったい無いとか思っていそうだ。

 だが簡易トイレでしたくないからとダンジョン攻略を中止したのは自分なので、何も言わないみたいだ。

 魔物を狩りながら安全地帯まで1時間。
 空いてる場所を見付けてマジックテントを設置する。

 マジックテントの中は思ったよりも広く6人用にして正解だった。
 
 大体6畳くらいあるだろうか?
 床は断熱材のような物で出来ていてクッション性がある。

 ダンジョン内は気温が低い(15度くらい)ので、床からの冷気を防ぐ仕様になっているのだろう。
 日本製の寝袋を使用すれば、テントの中で寝るのは意外と快適かも知れない。

 いやこれだけ広いんだから普通に布団と毛布が入るな。
 侵入者防止の結界があるから、テント内には何を置いてもバレないし。

 沙良がアイテムBOXから、ホットコーヒーを出してくれたので一息吐く。
 すると、テントのそばで誰かが舌打ちする音が聞こえた。

 沙良の肩がビクッとねる。
 どうやら既に目を付けられているらしい。

「マジックテントにしておいて良かったね~」

「なんだか、ここの冒険者はタチが悪い」

「外に出る時、気を付けないと。マッピングを使用して人が近くにいない時に出よう!」

「ああ、用心するに越したことはない」
 
 しばらくの間、テントのそばでウロウロしている気配が続いたが、30分程するとあきらめたのかいなくなった様だ。

 攻略に行く前に、もう一度自宅に戻ってトイレを済ませる。

 この日は結局、リザードマンもファングボアも狩る事が出来なかった。
 見付けたと思っても、直ぐに男性冒険者が駆けつけて先に交戦を始めてしまうからだ。

 ダンジョン初日の収入は、銀貨65枚(65万円)と銅貨3枚(3千円)。  
 う~ん、このままじゃ余り稼げそうにない。

 4つの属性魔法を覚えた分、良しとするか。

 ホーム内に戻ってから、沙良とダンジョン攻略の初祝いだとして外食に行く事にした。

 ちょうど沙良の自宅から半径10kmの間にある寿司の旨い店があったので、食べたい物を聞かれた時にリクエストしたのだ。

 自動車を運転して店に着くと、明らかに回転寿司じゃない店構えを見て沙良は目が点になっていた。
 
 1人暮らしの派遣の給料じゃ、縁のない店だったか。

 店内に入るとカウンターしかない。
 ここは旭とよく来たお店だ。

 目の前で少しいかつい顔をした大将が、その日仕入れた新鮮な魚介類で握ってくれる比較的良心的な値段の店だった。

 頭を角刈りにした大将は無愛想ぶあいそうで、およそ客商売に向いているとは言えない。 
 体の何処どこかに、入れ墨でもあるんじゃないかと思うくらい迫力がある人だ。

 旭が亡くなってからは、自然と足が遠のいてしまった店でもあった。
 思い出すのがつらかったんだろうな。

 あれから9年以上経っていたが、店は変わらず営業していたらしい。

 2人でカウンターに座り、電子メニューを見ながら何を食べるか相談する。
 
「沙良、言っておくがこの握り寿司の値段は1貫分だから間違えないようにな」

「えっ!? じゃあ、2貫だと倍になるって事だよね」

「ああ、そうだ。この大将の本日のお任せ10貫3,000円のコースは、握り寿司の他に刺身・天ぷら盛り合わせ・茶碗蒸し・味噌汁が付いているから、10貫でいいならこのコースにした方がお得だぞ」

「じゃあそうする。値段が最初から決まっている方が、ドキドキしなくて済むから」

「俺も同じコースにするが、10貫だと足りないから安いのを何貫か頼む事にするよ」

「そうして下さい、お願いします」

 電子メニューで注文すると、直ぐにカウンターの上に全ての料理が現れる。
 目の前で握って出してもらえない分、少し味気ないが無人なので仕方がない。

 本日のお任せの握りは、だし巻き卵・イカ・甘エビ・ホタテ・たいあじまぐろの中トロ・ぶり・ウニの軍艦巻き・イクラの軍艦巻きと実に美味しそうだ。

 刺身は、まぐろ・サーモン・イカの3種類。

 天ぷら盛り合わせは、大きな海老が1本とキス・穴子・蓮根れんこん南瓜かぼちゃだった。
  
 沙良には充分な量だ。
 これで3,000円なら結構お得だと思う。

 こぢんまりとした店で、席はカウンターのみとなっていたのでタイミングが悪いと1時間程待つことになる。
 ホーム内のこの店は、利用客が俺達しかいないので待たなくて済むのが良い。

 沙良は、揚げたての天ぷらから食べる事にしたようだ。

 何故なぜ蓮根れんこんから食べているが、妹は昔から好きな物を最後に食べる派だったので好物の海老は最後にするんだろう。

 いつもフライは俺の好きな豚カツに付け合わせのナポリタンを作ってくれるが、沙良は海老フライが好きだ。
 タルタルソースをたっぷり付けて、美味しそうに食べる様子は子供みたいだった。

 まぁ、実際まだ20歳前の少女なんだが……。
 今日は冷凍の海老じゃないから、ぷりぷりで旨いだろう。

 俺は逆に好物を最初に食べる派だ。
 お腹が一杯になった状態で食べたら、美味しさが半減するじゃないか。
  
 まずは刺身から頂こう。
 うん、今日も魚の鮮度は抜群ばつぐんだ。

 出来れば一緒に日本酒を飲みたいが、非常に残念な事に酒が飲めない沙良は運転免許を持っていない。
 俺が車を運転する事になるので、酒は飲めないんだよなぁ~。
 
 美味しい寿司を食べながら、沙良と2人で旭の思い出話をする。

 初めてこの店に入った時、大将にビビッて旭が店を出ようとした笑い話なんかも披露ひろうしながら……。  

 旭、お前の墓参りに行けなくてごめんな。
 俺は異世界で元気にやってるよ。

 天国がどんな所か知らないが、俺達2人の事を見守ってくれよな。
 特に沙良は、美少女・・・になってしまったから悪い虫がつかないか心配なんだ。

 お前の初恋は叶わなかったが、沙良は旭を大切な幼馴染として今でも覚えているぞ。
 こうやって、一緒に思い出話に花を咲かせるくらいにな。 
 
 ダンジョン初日の夜は、美味しい食事と楽しい話で盛り上がったのだった。

 --------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 --------------------------------------
感想 2,669

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

家ごと異世界ライフ

もちもちほっぺ
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。 七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!! 初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。 2024年5月 書籍一巻発売 2025年7月 書籍二巻発売 2025年10月 コミカライズ連載開始

転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~

結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』 『小さいな』 『…やっと…逢えた』 『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』 『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』 地球とは別の世界、異世界“パレス”。 ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。 しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。 神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。 その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。 しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。 原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。 その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。 生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。 初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。 阿鼻叫喚のパレスの神界。 次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。 これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。 家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待! *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈ 小説家になろう様でも連載中です。 第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます! よろしくお願い致します( . .)" *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろうでも同時連載中です◇