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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第314話 迷宮都市 サヨさんと扇舞の衣装・亀の着ぐるみ作り

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 昼食を食べ終えて食器を片付けたら、兄達はシルバーとフォレストと一緒に遊んでくれるらしい。

 私とサヨさんは先週の続きから始める。

 男性の演舞の衣装は出来上がったので、今日は私とリリーさんの扇舞おうぎまいの衣装作り&アマンダさんの亀の着ぐるみ作成だ。

 扇舞の衣装はサヨさんにお任せして、私は着ぐるみの作り方が載った本を購入してこよう。
 ネットが使用出来たら簡単に調べられるんだけどなぁ~。

 サヨさんに本を買いに行く事を伝えて、マッピングで百貨店にある本屋に移動。
 趣味のコーナーに行って本を探したけど、着ぐるみに関する本は無かった。

 某ネズミのランドでアルバイトさんが着ている様な物を作る事をあきらめ、着ぐるみパジャマの方を探す。

 こちらは本が見付かったけど……。
 アマンダさんが着るには少し可愛らしすぎるデザインだ。

 こういうのは子供に着せて、よちよち歩く姿を見て癒されたい。
 
 彼女に似合いそうな物は無いかな?
 背が高いので女騎士とか似合いそうだけど、『浦島太郎』には出てこないので却下だ。

 あれっ?
 亀で何か引っかかりを覚える。

 亀→タートル→ダンジョンの魔物と思い出していき、かなり前にゴレンジャーを彷彿ほうふつとさせる色の名前が付いた亀の魔物を思い出す。

 確か記念に1体ずつアイテムBOXに収納してあった。
 子供達に見せる心算つもりですっかり忘れていたよ。
 
 アマンダさんが亀役なので、どうせ原作の面影すらなくなる話になるだろう。
 きっと浦島太郎も出てこないに違いない。
 主人公が出てこない浦島太郎は詐欺だ!

 亀が主役の時点で、話を『うさぎと亀』に変更した方が良い気がしてきた……。
 一応着ぐるみパジャマの本を購入して自宅に戻る。

 自宅のリビングではサヨさんが、衣装を型紙に合わせて裁断している所だった。
 私と違い、その作業は熟練じゅくれんした手付きの所為せいか正確で速い。

 普段の生活でちバサミを使用する機会なんてないから、あの大きいハサミを器用に使うのは難しいんだよ。
 布を切るのは紙と違ってコツがいるしね。

 アマンダさんが着るかどうか分からないけど、本を見ながら亀の着ぐるみパジャマの型紙見本を使って緑色の布を裁断する。

 うん間違いなく似合わない!

 これならいっそ、グリーンタートルの甲羅を背負った方がましの気が……。
 いや体長3mもある亀の甲羅は背負えないか、大きさ的に。

 着ぐるみパジャマの本を見ていると、子供達にフワフワモコモコの生地でパジャマを作ってあげたくなる。
 異世界では麻の古着が基本なので、こんな見た事も無い生地は渡せないけど……。

 S級冒険者になり向かう所敵無し状態になったら、好きにさせてもらおう!
 その頃には私達も30歳を過ぎているだろうから、若者では無くなっている。

 若者で思い出した。
 今日会った貴族の若者は、何で突然態度を変えたんだろう?

 私はサヨさんに今日教会の炊き出し中に起きた出来事を話して、魔法を使用したら貴族の態度が変わった理由について聞いてみた。

「あぁ、それはサラさん達が高位貴族の出身だと思われたからでしょう。魔法使いになるには、王都の魔法学校に通わないとなれないですから。入学金や授業料は相当高いはずよ。後を継げない貴族の次男や三男や女性が多く通っている学校だから、魔法学校に通っていただけでも伯爵以上の爵位があると分かるの。まぁ大商人の息子なんかも、お金に余裕があれば通っていますけど」

 そう言えば魔法学校の話は聞いた事があったような……。
 じゃあ魔法を使えるアマンダさんは元貴族令嬢だったのか……。

 全然ご令嬢らしくない話し方だけどね。
 しかも迷宮都市の最終攻略組だったクランリーダーだし。

 冒険者の中には、意外と跡が継げない元貴族の人達も大勢いるのかも知れない。
 侯爵家の四男とかも居るかもね~。

 実家が伯爵だと言っていた貴族のボンボンは、私達が魔法を使えると知り貴族出身だと思い態度を変えたのか……。

 あれが身分社会に生きる貴族の一般的な対応なんだと思うと、やはり貴族とは接触しない方が良いだろう。
 
 今日のように理不尽な目にったら、旭はともかくとしても私達兄妹は黙っていられる性格じゃない。
 必ずやり返すのが目に見えているので、やっかいな問題に発展しそうだ。

 貴族のボンボンは本人に爵位が無いので、厳密には貴族出身というだけで貴族籍には入っていない。
 これがどこかの当主だったりしたら、一般人の私達は問答無用で捕まってしまう。

 まぁそうなる前に、全員を昏倒させて何も無かった事にすればいいんだけどね。
 兄が直接手を出す前ならなんとか証拠隠滅も可能だろう。

 その後2時間程集中してアマンダさんの着ぐるみパジャマを作り続けた。
 サヨさんはリリーさんの衣装を縫い上げた所だ。

 少し疲れたので甘い物を食べて休憩しよう。
 サヨさんに飲み物のリクエストを聞いて、それに合ったおやつを選ぶ。

 抹茶が飲みたいそうなので、茶道は完全に無視して私が抹茶を点てる。
 お茶請けには、この季節になると食べたくなる栗きんとんを2個添えた。

 この間、兄が百貨店に行き抹茶と一緒に買ってきてくれた。
 本当は日本に居た時みたいに中津川で購入したかったらしいけど、残念ながら私のホームはまだそこまで行けないのだ。

 サヨさんは出てきた抹茶に目を細め、栗きんとんを見て目を輝かせた。
 おばあちゃん、分かりやすいなぁ。

 本当に甘い物が大好きらしい。
 異世界での甘味は果物がほとんどだから我慢していたんだろうな~。

 これからは私が沢山食べさせてあげよう。
 あっ、でも78歳だからあまり甘い物ばかりは駄目ね。

 先程聞いた異世界の平均寿命は85歳前後だというから、冒険者ではないサヨさんの寿命はあと10年もない。

 2ケ月後に両親を召喚した後で、お母さんと再会しても一緒に過ごせる時間は残り少ないのか……。

 んっ?

 異世界には寿命が延びる反則技があるじゃないか!

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