自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
253 / 781
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第379話 カマラ・リビエント 1 ヒルダ様に生き写しの少女

 【カマラ・リビエント】

 私は迷宮都市で、商業ギルドの貴族担当の総括をしております。
 担当部門は多岐に渡り、お客様の要望に応える事が全てと言っても過言ではないでしょう。

 しかし本来の私の業務は商業ギルド職員ではなく、カルドサリ王国内の諜報ちょうほう活動が主でございます。
 情報関係をまとめているマケイラ家当主直轄の下、ハーレイ家には内密に迷宮都市の情報を集める事を任されているのです。

 あの御二方は非常に仲が悪いので、情報が規制されないようにとのおおせでありましたが……。
 冒険者ギルドマスターが娘に代替わりしてからは、特にこの100年近くで問題など起こった事もないのです。

 そもそも数百年前の出来事を、いつまで引きずっていらっしゃるのか……。
 マケイラ家の当主ガリア様はその血筋ゆえ、子供の頃から大変美しい方でありました。
 
 他国の諜報を担う名家では、エルフの中でも一際ひときわ目を容貌ようぼうの者が生まれます。

 本国で武を担う名家であるハーレイ家のカーサ様とは共に学院を卒業してからも仲良くされていましたが、武の出身の者は例外なく面食いであったためここで悲劇が起きてしまいました。

 エルフは外見から性差の判断が難しい種族と言われていますが、同じエルフ同士ならなんとなく相手が男性か女性かは分かるはずなのです。

 だた面食いな武の出身の者は容姿で判断しがちではありました。

 学院を卒業後、数十年。

 ハーレイ家の当主となったカーサ様が、王族より直々にカルドサリ王国行きを命ぜられ諜報活動の責任者としてガリア様を指名なさりました。

 そしてあろうことか、その場で求婚されたのです。
 当時まだエルフにしては若かったガリア様は、大変激怒され衆人観衆の前で求婚をっておしまいに!

 というか……。

「私は男だ!」

 と言って下履きを脱ぎ、男の証を見せられました。

 もう少し上手いやり方があったのではないかと思いますが、親友だと思っていた相手に求婚された事が非常にショックであったのでしょう。

 カーサ様は、その時までガリア様が男性だとは気付いていらっしゃらなかったようで、見せられた証を見て愕然がくぜんとしておられました……。
  
 あれは不幸なすれ違いでございました。
 まま、エルフ同士では度々たびたび起こりうる惨事さんじではありますが……。

 かく言う私にも、過去に似たような経験がございます。
 これはよくあるエルフの笑い話のひとつにすぎません。

 女性もスレンダーな方が多く、身にまとう服も比較的ゆったりとした物を好む種族です。
 学院でも男女の差別なく、全ての授業を受ける事が当たり前でした。

 まぁ態々わざわざ、相手の性別を確認する事はしないでしょう。

 その後、お二方は決別し二度と顔を合わせる事もないと思われました。
 ですが運命は皮肉な事に、同じカルドサリ王国行きをガリア様も命ぜられてしまったのです。

 そこからは、顔を合わす度に皮肉の応酬おうしゅうを交わされ仲違なかたがいは現在も続いたまま。
 正直、もういい加減ガリア様も許して差し上げればよいものを……。
 
 いまだに根に持っていらっしゃるとは、私には理解し難い感情です。
 きっと心の底では、昔のように気兼ねなく付き合いたいのではないかと推測しておりますが……。
 
 内密に私の事を迷宮都市に配置されたのも、友に何かあった時対策を早く立てられるようにとの事だと思っておりますよ。

 本来は大変お優しい方でありますからね。

 そんな二足の草鞋わらじを履きながらの生活をしていたある日の事。
 商業ギルドの受付嬢に、初めて見る貴族出身の方が来られたと呼ばれました。

 商業ギルドでは貴族担当の統括をしているので、初見の貴族は私が担当する事になります。
 迷宮都市は独立採算制を採っているので都市内に貴族街はなく、こられるのはリザルト公爵領に住んでいる貴族の者だけです。

 どこの貴族の者だろうか?
 受付嬢から聞いた話によると、まだ10代の少女1人と少年2人という事でした。

 記憶にある貴族の子女で、魔法学校に行っていない10代の少女は居なかったはずですが……。
 会う前にある程度の爵位を予想しようとしましたが、見当がつきません。

 人間の貴族等、我々エルフにとって無価値の存在ですが、こうして表の顔として商業ギルドで働いている以上は爵位の高い人間を敬う必要があります。
 
 エルフが崇拝するのはハイエルフである王族だけですけどね。

 部屋に入って少女の顔を見た瞬間、心臓が止まるかと思いました。
 そこにはなんと、数百年前この国に嫁がれたヒルダ・エスカレード様そっくりな少女がお見えになったのでございます。

 ヒルダ様は当時のカルドサリ国王の第2王妃として、エルフの国から嫁いでいかれました。
 本国では人族の王に嫁ぐなどと大揉おおもめにめた訳ですが、昔から子に親は勝てないといわれる通り最後には王様も許されたといいます。

 幾つかの冒険者ギルドと商業ギルドのギルドマスターをエルフに交代させる事を嫁ぐ条件とし、私のようにカルドサリ王国内で諜報活動をする者を紛れ込ませました。
 
 幸い国王との仲も良好で、ヒルダ様は幸せに暮らしておられたそうですが……。
 御子を身籠みごもった後、嫉妬深い第1王妃に命を狙われたショックで森に引きこもられたと聞きます。

 それから御子を1人産み、体を壊してそのままお亡くなりになったと伺っておりました。 
 
 その後、産み落とされた御子は消息不明となっています。
 ヒルダ様付きの10名の影衆が、どれだけ森中を探しても見付からなかったとか。

 王命を受け他国に嫁がれるヒルダ様をお守りしていた当時の影衆の当主は、責任を取り当主の座を降りました。
 そして今なお、このカルドサリ王国でヒルダ様の産んだ御子を9名の影衆と共に探していらっしゃるのです。

 前影衆当主のガーグ老。
 現当主の父親でもありますが、その実力は当代一でございました。

 子供の頃からヒルダ様の身辺を警護され、じいじと親しく呼ばれていたと聞いた事があります。
 ガーグ老が生涯を懸けて探していた御子に、こんな場所でお会いする事になるなんて……。

 ハーレイ家のカーサ様もマケイラ家のガリア様も、カルドサリ王国に来られる前の話なので知らないでしょう。

 ヒルダ様が人族の王に嫁がれた話は、エルフ国内では箝口令かんこうれいが敷かれていましたからエルフでも500歳以上の者しか知らない事でございます。

 私は思わずその場にひざまずきそうになるのをなんとかこらえ、商業ギルドの担当者として挨拶をする事に致しました。

 本来王族と相対する時は片膝を突き頭を垂れるため、そのご尊顔そんがんを見る事は叶いません。

 私達エルフは必ず王族の系譜が描かれた肖像画を持っておりますから、ヒルダ様の顔を私も知っていたに過ぎないのです。

 あぁ、ガーグ老。
 貴方が必死になって探していたヒルダ様の御子が、ようやく見付かりましたよ!

 ただ今まで何処どこにいらっしゃったのか、私ごときが尋ねる事は出来ませんが……。

 でも、生きていて下さった。
 
 世界樹の精霊王に感謝の気持ちを捧げます。

 --------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 --------------------------------------
感想 2,669

あなたにおすすめの小説

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!

akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。 そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。 ※コメディ寄りです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

家ごと異世界ライフ

もちもちほっぺ
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

夢のテンプレ幼女転生、はじめました。 憧れののんびり冒険者生活を送ります

ういの
ファンタジー
旧題:テンプレ展開で幼女転生しました。憧れの冒険者になったので仲間たちとともにのんびり冒険したいとおもいます。 七瀬千那(ななせ ちな)28歳。トラックに轢かれ、気がついたら異世界の森の中でした。そこで出会った冒険者とともに森を抜け、最初の街で冒険者登録しました。新米冒険者(5歳)爆誕です!神様がくれた(と思われる)チート魔法を使ってお気楽冒険者生活のはじまりです!……ちょっと!神獣様!精霊王様!竜王様!私はのんびり冒険したいだけなので、目立つ行動はお控えください!! 初めての投稿で、完全に見切り発車です。自分が読みたい作品は読み切っちゃった!でももっと読みたい!じゃあ自分で書いちゃおう!っていうノリで書き始めました。 2024年5月 書籍一巻発売 2025年7月 書籍二巻発売 2025年10月 コミカライズ連載開始

転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~

結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』 『小さいな』 『…やっと…逢えた』 『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』 『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』 地球とは別の世界、異世界“パレス”。 ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。 しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。 神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。 その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。 しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。 原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。 その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。 生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。 初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。 阿鼻叫喚のパレスの神界。 次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。 これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。 家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待! *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈ 小説家になろう様でも連載中です。 第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます! よろしくお願い致します( . .)" *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろうでも同時連載中です◇