自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第389話 ガーグ老 6 地下10階でのダンジョン内警護&予期せぬ出来事

 地下10階の安全地帯に辿たどり着く途中で、人族の姿をした御方が女性冒険者の治療をされておった。
 そのままテントまで連れ込まれてしまったが、お怒りになって出てこられた所をみると冒険者の習慣を知らぬのだろう。

 人族の冒険者は、ダンジョン内での治療のお礼に何やら性的なサービスをするそうだ。
 あの御方はきっと、姿変えの魔道具で変装されているから実際の年齢と種族が違うはず

 アイテムBOXの能力や、浄化する時の魔力量からいってもエルフに違いない。
 純粋なエルフで高名な治癒術師の御方が、どうして人族の国にいらしたのかこれもまた謎な事だ。

 エルフの冒険者には、人族のようなサービスを行う者が居らぬので大層驚いたであろうな。
 一夫一婦制のエルフでは、人族の自由恋愛にはついてゆけぬ。

 浮気なぞしようものなら、即離婚だからな。
 エルフの女子おなごは恐ろしい。
 大抵の男は妻の尻に敷かれる事が普通だ。

 儂の亡くなった妻も普段は穏やかな性格をしておったが、他の女性に目をやるだけでにらまれ怖かったわ。

 テントから出てダンジョンの攻略を開始されると、儂らも後に続く。
 ここからは周囲を警戒するだけで済むので警護は楽なものだ。

 5日後。
 再び地上に帰還される時は影衆全員が御子達を見失わないよう、必死に走り付いていった。

 土曜日は『肉うどん店』で昼食を食べ、日曜日は教会で炊き出しをする際の警護と大体1週間の予定は同じかと思っていたら、炊き出し後に60人くらいの子供達を連れて御子達が歩き出した。

 どうやら路上生活をしている子供達のために家を与えるらしい。
 ミリオネとリースナーの町でも同じ事をしていらした。

 御子は、どんな人生を送ってきたのだろう。
 これほど子供達に惜しみなく支援をする事が出来るとは、良い方に育てられたのだな。

 知る事の出来ない御子の300年間を思い、育ててくれた方に感謝した。
 他人を思いやる優しい性格の御子なら、同じ種族であるエルフの危機には助けてくれるだろう。

 1ヶ月後には、迷宮都市で路上生活をしている子供達は居なくなった。
 御子が全ての子供達が住める家を与えたからだった。

 全力疾走しっそうする必要のある月曜と金曜以外は儂らも落ち着く事が出来た。
 心配していた攻略階層も、翌週地下11階になる事はなくほっと一安心といった所。

 そして更に1ヶ月後を過ぎた頃、問題が起こった。

 ダンジョン内で治療をしている事に目をつけたクランリーダーが、地下10階を攻略しているメンバーの女性冒険者を使って接触を図ってきたのだ。

 御子はその事を深刻にとらえられたようで、その日からダンジョン攻略をしなくなってしまった。

 儂らは移転先が分からぬため、御子の身が安全であるかどうかヤキモキしておった。
 余程その愚かなクランリーダーとやらを粛清しゅくせいしようと思ったが、まだ正式に影衆として挨拶を交わしていないので自重するのが大変だったわ。

 正式に影衆としての任を与えられていたら、王族に不敬を働いた罪で亡き者にしてやれたのにと思うと悔しくてならん。

 御子が迷宮都市から姿を消して更に1ヶ月が経った。

 その間に息子から念話の魔道具でカルドサリ王国がある大陸まで、あと1ヶ月くらいだと連絡がくる。
 この大陸に到着しても、カルドサリ王国まではまだ数ヶ月はかかるだろう。
 
 日曜日、御子が教会の炊き出しに姿をお見せになった。
 母親達から心配している問題は片付いた事を聞いて、来週からダンジョン攻略に戻られるそうだ。

 久し振りに元気な御子の姿を見て、思わず目に涙が浮かぶ。
 あぁ、ご無事で良かった。

 あの傍若無人ぼうじゃくぶじんなクランリーダーのクランは崩壊したそうだ。
 ふんっ、いい気味だわ。

 ダンジョン内でメンバーに治療を許し、子供達の支援をしている御子は迷宮都市では大人気だからな。
 更に『肉うどん店』を経営して、安くて美味しい料理も提供している。
 
 これで御子に、不要な接触をする者は居なくなるだろう。
 そう思っていたが……。

 そして再びダンジョン内の警護が始まった。
 御子よ、もう少しだけゆっくり走ってほしいと思うのは無理な相談だろうか……。
 
 いつも通り攻略中の警護をして安全地帯に戻ると、大量の怪我人が続出していて驚く。
 ダンジョン内で一体何があったのか……。

 治癒術師の御二方おふたかたは、急いで怪我人の治療に当たる。
 御子は怪我人の1人の下にいき、胸を両手で何度も押しておった。

 怪我人は息をしていないようだが、何をしておられるのだろう?
 しばらくすると、ハーフエルフの御方に手を止められていた。

 御子に首を振って助からぬ事を伝えている。
 知り合いが亡くなった事を信じたくないのか……。

 御子は悲しそうな表情を見せた後で、亡くなった冒険者に向かって魔法を撃つ。
 すると、生存は絶望的だと思われた冒険者が息を吹き返したではないか!

 これは、なんとする事だ!
 
 このような奇跡が起きるとは、目の前で見ている事が信じられん。
 やはり御子は、世界樹の精霊王の加護を強く受けているのだな。

 しかし、この大量の怪我人が出た原因が不明だ。
 話を聞くと、シルバーウルフが突然5体現れたそうだ。

 ダンジョンに出現する大型魔物は1匹が普通であるのに、それはおかしい。
 儂は一番に魔物寄せのトレインを疑った。

 あれは人族の国では禁制品であろう。
 使い方を間違えれば他の者に被害が及ぶものだ。

 影衆は一度に多くの敵から王族を守るための修行で、魔物に使用する事がある。
 魔物に魔物寄せを振り掛けると、同種を呼び寄せる効果があるのだ。

 そんな物をダンジョンで使用する等、愚かな真似をする。
 しかも使用した魔物が素早く狂暴なシルバーウルフとは……。
 犯人は迷宮都市の冒険者ではなさそうだな。

 御子は大丈夫だろうか?

 ひとつ問題が解決したばかりだというに、なんだかきな臭い事になっておるようだ。 
 その日、御子達はダンジョンの攻略を中止したようでテントから出てくる事はなかった。
 
 翌日からは特に問題もなく、金曜日には地上に帰還された。

 土曜日、いつものように御子の経営する店に行き売上の貢献をしたら体を休める。 
 日曜日、炊き出しをされる御子達の警護をしたら1週間は終了。

 月曜から、またダンジョン内の警護に就く。
 この1週間も何事もなく終わった。

 翌週、地下10階の安全地帯に到着するとテントの数が1つ増えておる。
 魔物寄せを使用したのは、この者達か?

 ハーフエルフの御方が警戒を強めていた。
 そして1つ増えたテントの方を見て、けわしい表情をする。

 御子の事を大切に思っているのだろう。
 安全に気を配る様子を見ると、姿を現して警護出来ない儂らにとっても安心だ。

 もしや御子の事が好きなのではないかと勘繰ってしまうが、ハーフエルフと王族では立場が違い過ぎて結婚する事は叶わぬ。

 まぁ、御子は兄としたっているし兄妹として育った仲であるのなら間違いは起きるまい。
 それより、人族の姿をしている御方の方が心配だ。

 どうも見ていると、恋心のようなものを感じる事があるのだが……。
 エルフで高名な治癒術師であれば、王も許される可能性があるやも知れん。

 ただ肝心かんじんな御子が、姫様のように恋愛に鈍感な方である気がする。
 若者の恋というのは、見ていて甘酸っぱいものだな。

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