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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第474話 迷宮都市 2人の引っ越し

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 2人はお風呂を堪能したみたいで、満足そうな表情をしている。
 異世界にはない、香りの良いボディーソープやシャンプー等が使用出来て嬉しかったんだろう。

 かなり長く入っていたからね。
 完成したオムライスが冷めてしまいそうだったので、アイテムBOXに収納しましたよ!

 2人が戻ってきた所で昼食を取る事にした。
 お互いの事情説明後、お風呂待ちをしていた所為せいで、かなり遅い時間になってしまったけど……。

「いただきます!」

 オムライスセットを前に、待ちきれない様子の雫ちゃんが真っ先に口を付けて声を出す。

「美味しい~! もうこの世界の何が苦痛かって、食事内容がひど過ぎる事だよ! 毎日代わり映えしないメニューばかりで本当に辛かった……。沙良お姉ちゃんの料理は最高だね!」
 
 そう言うと満面の笑みを浮かべて、ハンバーグを切り分けている。
 調味料が塩のみだと、私でも料理メニューの幅が少なくなるだろうなぁ。

「沙良ちゃん、相変わらず料理が上手ね。もううちに、いつでもお嫁にきていいわよ~」

 いえもう貴方の息子さんは結婚済みなので嫁げませんとは言えず、私は曖昧あいまい微笑ほほえんでおいた。

 私が雫ちゃんと結婚する訳にはいかないし……。
 そうなるとまた子供の問題が起きて、雫ちゃんに兄との子供を産んでもらう事になってしまう。

 それなら素直に兄と雫ちゃん、旭と私が結婚した方が余程いい気がする。
 子供が混乱しそうだよ。
 
 そう上手くはいかないのが人生だ。
 
 兄達の結婚報告は二度手間になるので、両親を召喚した後でする心算つもりにしている。
 両家がそろった状態の方がいいだろう。

 出来れば旭の父親も一緒だと良かったんだけど……。
 雫ちゃんと母親がこの世界にいるなら、もしかしたら父親の方も転生か転移してないかな?

「あの……。おじさんは日本で元気にしているんでしょうか?」
 
 亡くなったか直接聞くのははばかられたため、遠回しな表現で尋ねてみた。

「うちの人は、ピンピンしてたから日本にいると思うわよ~。独りにさせちゃって申し訳ないわ。あっ! 沙良ちゃんの召喚能力で呼び出せたりするのかしら?」
 
「召喚する事は可能ですけど、現在私のLvでは2人までしか無理なんです。次は両親を召喚する予定なので……」

「まぁ、そうよね~。Lv10毎に1人しか呼び出せないんじゃ、家族を優先した方がいいわ。夫には悪いけど、日本で人生を全うしてもらう事にしましょう」

 異世界で8年間を過ごした所為せいか、旭の母親に未練は感じられなかった。
 雫ちゃんの方を見ると、少し寂しそうにしている。

 日本で亡くなったのは18歳。
 現在私と同じ19歳だとしても実際記憶が戻ったのが12歳の時なら、生きてきた年数は25年だ。
 
 しかも12歳からのやり直し人生なので、まだ親が恋しいだろう。
 両親を召喚した後で、旭の父親を召喚してあげたいなぁ。

 それにはLvが40必要になる。
 既にLvは45に上がっているけど、兄には内緒なので直ぐに召喚するのは無理なんだよね。

 旭の母親や雫ちゃんのために、いつか召喚してあげようと思った。
 Lv上げを頑張る理由が増えたから、摩天楼まてんろうのダンジョン攻略も視野に入れておかないと。

 気になっていた、今後について話をする。

「これからどうします? 私達は3人で迷宮都市のダンジョン攻略をしているんですけど、折角せっかく再会出来たので一緒にパーティーを組みませんか? 部屋は沢山あるから、ホーム内で生活する事も出来ますよ?」

勿論もちろん、一緒にパーティーを組むわ! 日本と同じ生活が出来るなんて夢みたい」

「じゃあ、食事が済んだら引っ越しですね。一度、王都で宿泊している宿に荷物を取りに行きましょうか」

「まぁ、いいの? ありがとう! 尚人に会えて本当に良かったわ~」

「それ、俺じゃなくて沙良ちゃんに会えてでしょ?」

「あら? 同じパーティーなんだから一緒の事よ?」 

 旭は母親の言葉に納得いかない顔をしていたけど、口では勝てないと思ったのかそれ以上言葉を重ねたりしなかった。
 
 方針が決まったのなら、善は急げとばかりに皆が無言で食事に集中する。
 その後、再び王都へ移転し彼女達が宿泊している宿から荷物を回収した。

 ちなみに2人が宿泊していた所は、1泊銀貨5枚(5万円)。
 1ケ月を30日で換算すると、家賃が150万円とかなり高額だった。
 2人は、それなりに稼いでいたみたい。 

 旭の母親はアイテムBOXの能力を持っているので、効率的に換金していたんだろう。
 光魔法で怪我をしたら治療出来るし、ライトボールで遠距離から攻撃出来るなら、2人パーティーでも冒険者として優秀だったはず

 雫ちゃんは魔法学校に通っていないので、魔法は使用出来ないのかな?
 一緒にパーティーを組むなら、後でステータスも聞いておいた方が良いか……。

 兄のマンションに戻り、旭の部屋だった場所へ2人で住む事に決定する。
 本当は住み慣れた自宅の方がいいとは思う。

 でもホームに設定出来るのはLv10毎に1ケ所なため、マンションで我慢してもらう事にした。
 それでも異世界の宿屋より、はるかに良い生活環境だろう。

 ここなら、家賃・水道光熱費は無料だしTVも見る事が出来る。
 ホーム内で買い物する事も、飲食店で外食する事も可能だ。

 しばらく冒険者活動は休む予定でいるので、ホーム内でリフレッシュしてほしい。

 あっ、日本円!
 2人は持っていないから、ある程度のお金を先に渡しておこう。

 部屋に必要な物を設置していると、旭が自分の家だった部屋をながめながら恨めし気に呟いた。

「聞きたいんだけど……。俺の遺産は、どうなったのかな?」
 
「貴方は独身だったから、私とお父さんで分けたわよ? マンションは自宅があるから必要ないし、売却したわね。車はお父さんが乗ってたわ。預金が意外に多くてビックリしたのよ? 尚人はお金持ちだったのね~」
 
 そうあっけらかんと言われた旭は、ショックで声も出ないようだ。

「俺、マンション買って半年も住んでないのに! 何で売っちゃったの!?」

「そんな事言われても、誰も住まないのにそのままにしておく訳にはいかないじゃない」

「じゃあ、家にあった物は?」

「家具や電化製品は、全部処分しました。もしかして、尚人が収集してたお宝・・が気になるの? それ、雫と沙良ちゃんの前で言ってもいいのかしら?」

「いや、それは……内緒にして下さい」

 おや?
 旭は一体、何を集めていたのかしら?

 私と雫ちゃんの前で言えない品なら……、って答え言っちゃってますよ!

 案の定、旭は顔を真っ赤にしうつむいてしまった。
 遺品整理をする時に、家族に見られたくない物もあるわよね~。
 
 まぁ、もう結婚した2人にはきっと不要な物だろう……多分。
 女性と違いアノ日もないし、でもYes・No枕は必要かな?

 大体必要な物を部屋に設置すると、結構な時間が過ぎていた。
 夕食は旭の母親からお寿司を食べたいと希望されたので、兄達行きつけのお寿司屋さんへ外食にいく事に……。

 これには2人が大喜びして、1人だけズルいと旭が責められている。
 いやいや、その旭だって11年間ダンジョンマスターをしていたから、ホーム内で生活出来たのはここ数年の事ですよ?

 しかも独りきりで、ダンジョンから出る事も不可能だったんだけど……。
 言われた旭は、2人にダンジョンマスター生活を語っていた。

 日本酒を飲み饒舌じょうぜつになっている所為せいか、いらない事まで話している。
 話の途中で、兄があわてて口を塞いだ。

 話を聞いた雫ちゃんが、「尚人兄、独りで大変だったんだね! 可哀想かわいそう……」と言って旭を慰めてあげている。

 そうか……、不能になっちゃったんだね。
 男性には、かなりショックな出来事だろうなぁ。

 お寿司に刺身、天麩羅に茶碗蒸しと和食を楽しんだ後、マンションに戻ってくる。
 今夜は3人一緒に同じ部屋で眠るそうだ。

 家族水入らずの時間を、ゆっくり過ごして下さい。
 お互い積もる話もあるだろう。

 旭が雫ちゃんとお母さんに会えて本当に良かった。
 出来れば、結婚も祝福してもらえるといいね。

 そう思いながら、私も眠りに就いた。

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