自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第493話 迷宮都市 両親の召喚 9 両親のLv上げ 2&魔法の習得

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 父に剣術の心得があるとは思わなかったけど、これは冒険者活動をする上で非常に役立つ。
 4人追加して7人パーティーとなっても、私と兄は単独行動をするので実際は5人での活動になるからだ。

 旭が雫ちゃんとお母さん、両親と一緒に行動を共にする事になるのでお荷物は少ない方がいい。
 雫ちゃんとお母さんは、既に王都のダンジョンを攻略しているから問題ないだろう。
 
 両親が心配だったけど、父がある程度魔物を倒す事が可能なら旭の負担が減る。

 それから2時間程、母はスライム、父には角ウサギを倒してもらった。
 2人にLvを確認すると母はLv2、父はLv3。

 基礎値が78と高いので、MPとHPは234と312。
 この数字は、10歳でLvを上げる異世界ではLv23~31相当となる。

 本当に基礎値は重要だ。
 こんな所で身分制度の闇をみた気がした。

 でも貴族にとっては、こういったアドバンテージが必要なんだろう。

 そろそろ大丈夫かと思い、私はLv上げのため事前にアイテムBOXへ収納しておいた4匹の属性スライムを出す。

 突然現れた属性スライムに、父が驚愕きょうがくしていた。

「さっ……沙良、もしかしてアイテムBOXには生き物も収納出来るのか?」

「うん、そうだよ。2人はまだダンジョンに入れないから、色んな魔物を収納してきたの」

「それは……ちょっと不味いな」

 そう言うと父は押し黙り、眉間にしわを寄せ額に手をやり考え込んでしまった。
 その隣で母は不思議そうな顔をしている。

 そんな中、当然魔物は待ってくれないので私達を見付け魔法を撃ってきた。
 両親には魔法の習得の仕方を教えてあるので、母には避けないよう言い、体で受けてもらう事にする。

 兄がスライムの魔法を受けた母の状態を確認し、素早く治療をしていた。
 スライムは一度魔法を撃った後、しばらく魔法を使用してこないので、その間に母が槍で突き倒してしまう。

 父がまだ、魔法を習得していないんだけど……。
 直ぐに倒されるとは思っていなかったので、属性スライムは1匹ずつしか収納していないのにどうしよう?

 母はスライムを槍で突く作業が気に入ったらしい。
 地面の魔石を楽しそうに取っていた。
 
 しばらくして考え込んでいた父が、急に私の両肩をつかみ真剣な表情で視線を合わせてきた。

「沙良。理解していると思うが、お前の能力は規格外過ぎる。それは、ともすれば戦況を一変させる事が可能だ。知られれば、利用したいと思う人間が多くいるだろう。いいか、絶対に秘密にするんだ!」

 私の能力を知り、父は戦場での戦略として有効的な事に気付いたらしい。
 発想が兄と全く同じなので、親子だなぁと思う。

 そしてその事は、私も痛いくらい承知している。
 数年後に訪れるアシュカナ帝国との戦争を回避するために、現在兄達には内緒でLv上げをしている身だからね。

「うん、お兄ちゃんからも言われて注意しているから大丈夫だよ! それにアイテムBOX持ちは、旭とお母さんも一緒だし」

「この国に、3人もアイテムBOX持ちがそろうとは……。何かあるのか? いつきを早く召喚した方が良さそうだな……」

 父は独り言のように呟くと、再び口を閉ざしてしまった。
 聞いていた母が不安そうな表情を見せる。

 娘の能力が、ある者にとって狙われる価値があると知り心配なのだろう。
 大丈夫だよ、ちゃんと人前で使用しないように充分気を付けているから。

 兄が私達の遣り取りを聞き、安心させるように母の背中を優しくでた。

「賢也、沙良は大丈夫なの?」

「あぁ、心配は要らない。妹の事は俺と旭が絶対に守るから」

「そう……お願いね。あの子は迂闊うかつな所があるから、よく注意して見てあげて」

 何気に失礼な事を母から言われたような気がする……。

 そんな事より、両親が明日のスキップ制度に受かるか心配だ。
 時間がないので、まだLv上げをしないと!

「2人とも、次の魔物を倒しに行くよ!」

 父の魔法習得については、後日改めてしよう。
 剣術がそれなりに使用出来るなら、魔物を倒して剣術Lvを上げた方が早い。

 ミリオネの森にいるウルフをマッピングで探し、移動を開始する。
 母に槍で倒す事は難しいので、覚えたばかりの魔法を使用してもらった。

 遠距離から眉間を狙いアースボールを撃つよう伝えると、母は直ぐに魔法を唱えて実践する。
 MP値が高いので威力も充分にあり、1発で倒す事が出来たようだ。

 父は剣で簡単に討伐完了。
 一体、どうしてそんなに動じないのか不思議でならない。
 
 次は必須の魔石取り。
 ウルフを換金する際には本体ごと提出するので必要ないけど、迷宮都市では何の魔物が対象になるか分からないので出来るようになった方がいい。

 兄が心臓近くの魔石を取り出して、両親にお手本を見せる。
 相変わらず出血は最小限に抑えながらの、見事な手際てぎわだった。

 母は嫌そうにしながらも、試験に必要だと言うと渋々しぶしぶ真似て取り出していた。

 父は嫌な顔を見せる事もなく、普通に魔石を取り出す。
 普段全く料理をしないのに、解体ナイフを使用出来るのは何故なぜなのか……。

 次はボアとベアの大型魔物。
 ミリオネの町では、確かボアが昇格試験の対象だった。
 迷宮都市にはいないけど……。

 初めて目にする、大きな魔物に母が固まってしまう。
 私は母の能力である光合成を使用して、魔物を拘束する事を思いついた。
 丁度小豆が大量にあるから、母に渡し能力を使用するようお願いする。

 母が小豆を突進してくるボアに向けて投げ、「光合成」と唱えた瞬間に小豆が急成長しつるが伸びボアが拘束され地面に倒れた。

 殺傷能力はないけど、それなりに有効な能力だろう。
 ただ、人前で使用するのは避けた方がいいかも知れない。
 父も母も『手紙の人』から与えられた能力が特殊すぎる!

 身動き出来なくなったボアの首に、母が槍を突き刺し絶命させていた。
 すると小豆から急成長した蔓がみるみるうちに枯れ、ほろりと崩れたと思ったら消えてなくなってしまう。

 いや~、かなりファンタジーな能力で……。

 まぁ小豆の種1個で魔物を拘束出来る、大変コスパが良い能力だという事は分かった。
 攻撃にも使用可能と書いてあったから、蔓で窒息させたり出来るのかも知れない。

 母は自分の能力が非常に有効的な事が分かり、満足そうに笑っていた。
 
 異世界定番のゴブリンを見せるのは刺激が強そうなので、今日は止めておく。
 最後に父がベアを鮮やかに討伐し、午前中のLv上げは終了。

 ホームに戻り、昼食は外食をする事にした。
 母が肉系はちょっと……、と言うのでメニューはパスタに決定。

 アパートの住人さんが持っていたSUVを兄が運転し、お薦めのパスタ屋さんに連れて行ってくれた。
 電子メニューからそれぞれ注文した物がテーブルの上に置かれると、母が「便利な世の中になったわね~」と少しズレた感想をらす。

 いやいや、便利なのはホーム内だけだよ?

 食事の最中、突然母が「あっ!」と声を上げた。
 どうしたのか聞いてみると、借りている畑が心配だと言う。

 私が召喚してから3日間。
 畑の世話をしていない事に気付き、どうなっているか見に行きたいみたいだ。

 ただ、畑はホームに設定していないから入れないかも知れない。

 食事を終えた後、母の畑に行ってみる。
 到着後、一番に車から降りた母が畑に入ろうとした所、なんとそのまま進んで行ってしまった!?

 『手紙の人』は、畑も「出来うる限りの保障」としてくれたらしい。
 実家をホームに設定した際、付属で付けてくれたのかな?

 母が畑の様子を見て少し水をきたいと言うので、私がウォーターボールを雨状に降らせてあげる。

「何それ、私にも教えて!」

 どうやら母にとって一番嬉しいのは、水遣りが出来る魔法のようだった。

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