自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
359 / 757
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第498話 迷宮都市 両親の召喚 14 アシュカナ帝国の忍び寄る影

しおりを挟む
 いつもならカルドサリ王国の諜報員ちょうほういん? の人達が、怪しい人物を片付けてくれるんだけど……。
 今日は偶々たまたまいないみたいで、物陰に潜んでいる男性2人は健在だった。

 迷宮都市で何度も後を付けられているから、理由を知りたい。
 これからは両親と雫ちゃんにお母さんも一緒にパーティーを組むから、危険はなるべく排除しておきたいのだ。

 一番簡単な方法は、男性2人をアイテムBOX内に収納してそのまま出さない事だけど……。
 今までの状況からして、連絡が途絶えても次の人間を送ってくるだけだろうなぁ。

 もし一番HP/MPが低い雫ちゃんに害が及んだらと思うと、ぞっとする。
 私だけを狙う分には、移転で逃げる事が出来るからさして問題はない。

 まぁ、狙われるのは嫌な気分だし相手が不明な点も気になるんだけどね。

 捕まえて、私に尋問する事は可能だろうか?
 少し考えて、そういった訓練を受けている人間から素人の私が聞き出す事は難しいとあきらめた。

 でも相手から行動を起こされてからでは、後の処理が厄介やっかいだ。

 2人にどう対処しようか考えていると、白ふくろうの『ポチ』・と『タマ』が凄い速さで飛んできた。

 絶対、梟が出せるスピードじゃないよ!
 ガーグ老のLvはどれだけ高いの!?

 2匹の白梟は私にぶつかる寸前で減速し、ふわりと両肩に止まった。
 そしてシルバー同様、前方に視線を固定し「ホー」と一鳴きする。 

 どうやら上空から私の姿を見付け、助けにきてくれたようだ。
 私の周囲に、テイムされた従魔が3匹いるからか2人の男性は動かない。

 移動をしようとした所、ガーグ老とその長男であるゼンさんが走ってこちらにやってきた。

 きっと従魔である2匹が、ガーグ老に念話で連絡を入れたんだろう。
 状況を知り、心配で駆け付けてくれたのか……。

「サラ……ちゃん。無事かの? 『ポチ』から、怪しい男性に見張られていると連絡があったんだが……」

「ガーグ老、態々わざわざきて頂きありがとうございます。ここから右前方へ20mくらい離れた場所に不審人物がいるんです。シルバーが警戒しているから分かったんですけど……。最近、誰かに見張られているようで……。少し気になり理由を知りたいと思っていた所なんです」

「何と! それはいかん。ゼンよ、今直ぐ2人を拘束して連れて参れ!」

「はっ!」

 返事をした瞬間、ゼンさんが一直線に2人に向かって走り出す。
 よく居場所が分かったな……。

 そしてものの数分もしない内に、2人は逃げる事も出来ずに縄を掛けられた状態で連れてこられた。
 その鮮やか過ぎる手腕に感心してしまう。

 流石さすが、王族を警護している騎士だ。
 現役なのは伊達だてじゃない。

 あれ?
 今日は仕事が非番だったのかな?
 稽古日の日曜が休日だと思ってたんだけど……。

 2人の男性は浅黒い肌をした長身痩躯そうくで、庶民に扮しているのか古着を着ていた。
 ただカルドサリ王国の人間ではないと思われる特徴がある。

 瞳の色は赤く耳の形が少しとがっていたのだ。
 これは異世界定番のダークエルフと言われる人種だろうか?

「こやつらは、アシュカナ帝国の人間だな。帝国人の匂いがぷんぷんするわ」

 ガーグ老は南大陸にあるアシュカナ帝国の人間を知っているようで、顔をしかめながら2人の事をにらみつけている。 
  
「サラ……ちゃん。後は、儂の方で情報を聞き出す。若い女子おなごが見るには少々刺激が強かろう。明日結果を報告するで、それまで待ってもらえんかの?」

「あっ、はい。どうして私の事を見張っていたのか分かると助かります」
 
 ここは本職であるガーグ老にお願いしよう。
 下手に尋問の場に立ち会い邪魔をしてはいけない。

「任せよ。安心して帰るがよい」

「よろしくお願いします」

 私は2人に頭を下げ、シルバーに乗って新居に帰った。

 はぁ~。
 何度もこんな事があると不安だなぁ。

 兄達には内緒にしているけど、両親には言った方がいいんだろうか?
 でも父は、そんな事を知ったら異世界で冒険者をする事を許してくれないかも知れない。

 やっぱり、もう少しだけ黙っておこう。
 明日、ガーグ老から理由を聞いてから考えればいいか。

 新居の庭からホームの自宅に戻る。
 時間は夕方の17時だった。

 兄の部屋をのぞいてみると、2人はまだ帰っていない。
 実家にいるかなと確認すると、父と兄と旭がリビングでTVを見ていた。

 バイクの練習後に、そのまま実家に寄ったのだろう。
 母が台所で料理をしているので、一緒に食べるのかな?

 私はマッピングで皆の居場所が分かるけど、人数が増えた事で連絡が取れない事が困る。
 通信の魔道具は、外に出した状態じゃないと文章を確認出来ないからね。

 携帯がつながるように、なんとかならないものか……。
 一応、『手紙の人』にお願いしておこう。

 兄が心配しているだろうと思い、私もマッピングで実家に移動する。
 料理の途中だった母を手伝い、その日の夕食は家族で食べる事にした。

 食事中、兄と旭にバイクは乗れるようになったのか聞いたら「完璧!」と答えが返ってくる。
 運転の仕方さえ分かれば、運動神経の良い2人は1日で乗れるようになったみたいだ。

 ちらりと見た限りでは、兄と父のバイクには後ろに座席のような物が付いていた気がする。
 2人乗りを想定して購入したんだろう。

 兄は、私を後ろに乗せてくれる心算つもりなのかも知れないなぁ。
 父の方は、母を乗せてあげたいのかも?

 でも、もう少し後にしてね。
 初心者の後ろに乗るのは少し怖い。

 父が日本酒を飲み出したので、おつまみに迷宮ウナギの肝焼きを出しておいた。
 なんとなく身の方より、肝の方が効果が高そうな気がするし……。

 明日は7時に異世界に移動し新居で子供達に炊き出し後、稽古に行く予定を伝え実家を出た。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,585

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。