自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

文字の大きさ
383 / 757
第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第522話 冒険者ギルドマスター オリビア・ハーレイの災難 9 ご両親のスキップ申請&4匹の従魔登録

しおりを挟む
 気が動転しつつも、なんとか御二方の冒険者登録を済ませる。
 私は辞職届を書こうとして、はたと気付き真っ青になった。

 まさか王族の方がサラ様の母親役をされるとは思わず、先程ステータスを確認してしまった!
 サラ様は許して下さったが、本来王族のステータスを調べる事は不敬罪で殺処分の対象になる。

 あの場では、特に怒っているような素振りは感じられなかったが……。
 お優しいサラ様が、なだめて下さるだろうか?

 再び影衆の粛清しゅくせい対象になってしまった事で、辞職届を書く所じゃない!
 明日をも知れぬ身となったからには、父の秘蔵酒を最後に飲んでおこう。

 勤務時間など知った事かと、私は冒険者ギルドを出て屋敷に戻った。
 早い帰宅に執事長があわてて出迎えにくる。

「オリビア様。また何かありましたか?」

 私の顔色が悪い事を察し、執事長が心配そうに尋ねてきた。

「少し確認したい事があり戻っただけだ」

 安心させるためにそう言って、父の書斎へ向かう。
 一つだけどうしても確認したい事があった。
 以前ヒルダ様の容姿を確認した時以来、開かなかった王族の系譜を引っ張り出す。
 
 現在、女性の王族の方は何人いらしただろうか?
 現国王には、3人の王子様しか子供はいらっしゃらない。
 そう思いながら年代をさかのぼり見ていく。

 女性の王族は、どれだけ調べてみても王妃・・様しか見付からなかった。
 まさか、孫のサラ様を心配されて冒険者の真似事を?

 王妃は武の一族出身で王族の警護をしていた時、王に見初められた御方だと聞く。
 女性の近衛とは、また珍しいと思ったが……。

 ならば普通の女性より、行動力がおありなのかも知れない。
 王妃はエルフで、ハイエルフではないから王族と言っても影衆の護衛対象にはならないはずだ。

 私は首の皮一枚で助かった事になるのだろうか?
 
 気を落ち着かせるため書斎に隠してある父の秘蔵酒とガラス製の器を取り出し、なみなみと注ぐと一気に飲み干した。

 その後、旨い酒についつい杯を重ね気付いたら中身が半分以下になっている。
 これ以上は流石さすがに怒られるだろう。
 後ろ髪を引かれつつ、秘蔵酒を元の場所に戻し書斎から出た。

 サラ様のご両親? が冒険者登録をした2日後。
 今度はスキップ申請をされた。

 F級からC級冒険者へのスキップ制度の合格判定は、ギルドマスターがする事になっているため必要ないだろうと思いつつ、サラ様達に貴族仕様の馬車へ乗って頂きダンジョンまで向かう。

 この馬車は、サラ様が迷宮都市にこられて直ぐに購入した物だ。
 その時も財務統括に本当に必要なのかと散々言われたが、押し通した甲斐かいがあった。
 王族の方を職員の馬車にお乗せする訳にはいかないからな。

 今回お役に立てたのなら幸いだ。
 内装は華美にならないよう注意して、その分衝撃を減らす魔道具を通常より多く使用した特注の馬車になる。

 お忍びだとバレないよう、かなり気を使った。
 これならサラ様も王妃様も満足して下さるだろう。

 ダンジョンに到着すると、サラ様が入場料を払おうとされるので試験時は不要だとお伝えする。
 本来なら試験を受ける者以外の冒険者には払ってもらう必要があるが、そんな事は言えない。

 迷宮ダンジョンでスキップ制度の対象となる魔物は幾つかあったが、今回はファングボアとリザードマンにした。

 まずは父親役の方が、ファングボアを一閃いっせんして倒す。
 流石さすが、現役の影衆!
 それはもう鮮やか過ぎる業で、つい見惚れてしまった。

 しかも持っている剣は相当な業物わざものらしく、ドワーフの名匠めいしょうが鍛えた物で間違いない。
 これでC級冒険者を名乗られるとランク詐欺になりそうだから、早々にB級へ昇格して頂きたいが……。

 次は王妃様だ。
 武の出身であるから当然、剣か槍を使用されると思っていたら、意外な事に魔法を使用し倒された。
 それも加護を受けておられる光の精霊王の魔法ではなく、土魔法を撃っていらっしゃる。
 
 何故なぜだろう?
 とても疑問に感じたが、合格に間違いはないためその場で判定を出す。

 サラ様達は、まだ魔物を狩られるそうなので私は先にダンジョンを後にした。

 一先ひとまず、これでもう何もないだろうと安心した矢先。
 特大の爆弾が落とされる事になる。

 確かに、冒険者をしている追加メンバーが2人お見えになるとは聞いていましたが……。
 どうしてテイム魔法を使用出来るメンバーが増えるんでしょうか?
 
 しかも1日に4匹も登録にこられるなんてどうしたらいいの!?

 サラ様、3匹目は不味いです!
 あぁ、また書類の改ざんが必要な案件が……。
 
 王妃様がテイムされたシルバーウルフは、父親役の影衆に変更だ。
 新しく増えた治癒術師の妹さんがテイムされた2匹分は、それぞれ1匹ずつに変更すればいい。
 それにしても、騎獣に向かないフォレストウサギにした理由が謎過ぎる……。

 サラ様の分は……。
 あぁ、眩暈めまいがしてきた。

 ポーション、今直ぐポーションを飲まないと倒れそう。
 だが、最後に確認だけはしておこう。

「サラさん。従魔登録は、これで最後ですか?」

「はい、私がテイムした迷宮タイガーが最後です」
 
 その言葉が聞けただけでも安心だ。

 私はサラ様に登録用紙と首輪を渡し、記入された用紙を受け取る。
 7人パーティーで従魔6匹……。
 一体、何を目指してるんですか?

 もう本当にギルドマスターを辞めたいと、肩を落とし窓の外をぼうっとながめたのだった。

 -------------------------------------
 お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
 読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
 応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
 これからもよろしくお願い致します。
 -------------------------------------
しおりを挟む
感想 2,585

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界へ誤召喚されちゃいました 女神の加護でほのぼのスローライフ送ります

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

異世界に行った、そのあとで。

神宮寺 あおい
恋愛
新海なつめ三十五歳。 ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。 当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。 おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。 いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。 『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』 そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。 そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。