自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第549話 椎名 響 27 ドワーフの名匠シュウゲンの鍛えた剣&消えた娘

「この剣は知り合いから譲り受けた物だ」

 俺は彼の質問をかわすために、無難ぶなんな回答をする。
 実際、ガーグ老から渡された剣だしな。

「その剣のさやには古いドワーフ語で【可愛いヒルダちゃんへ 親友への剣は『飛翔ひしょう』と命名した またいつでも注文を待っておる シュウゲンより】と書いてある。親父が、注文した本人以外に剣を鍛える事は滅多にないんだが……。それがどうしてお主の手に渡ったか謎だな。親父の鍛えた剣だ、大切に使ってくれ」

 俺は鞘に描かれているのは文様だと思っていた。
 これはドワーフの古語であったのか……。
 国王をしていた俺でも、流石さすがに他種族の言語は覚えていない。
 しかし、書いてある内容が軽いな!

「それは知らなかった。大切に扱うと約束しよう」

「そうしてくれ。ここ数百年、親父は剣を打ってない。そこに書かれたヒルダちゃんとやらを、待っているのかもな……」

 鍛冶職人が剣を打たないのは問題じゃないか?
 バール氏は、父親を心配しているんだろう。

 店を出ると、男の子が沙良に声を掛けてきた。
 王都では、冒険者登録が出来ない9歳以下の子供が観光案内をする事が多い。
 予算に合わせた宿や飲食店を紹介し、手数料を受け取る仕組みだ。
 俺は王都に入ってから、路上生活者の姿を見かけずほっとしていた。

 少なくとも王領である王都は、現国王が充分な支援をしているらしい。
 この男の子は、紹介手数料を貰うため声を掛けてきたようだ。
 残念だが既に用件を済ませた後なので、俺達に案内は必要ない。
 そろそろ帰ろうと沙良へ伝えようとした所、隣にいた娘の姿が忽然こつぜんと消えていた……。
 
 目を離したのはわずか数秒。
 その間に娘は何処どこへいった?
 沙良はホームやマッピングの能力を使用し一瞬で別の場所へ移動出来るが、親の俺に内緒で行動する子ではない。

 やられた!
 娘を誘拐出来る者などいないと思っていた俺のミスだ。
 俺は直ぐに通信の魔道具を握り締め、ガーグ老へと連絡を取った。

『緊急事態発生だ! 娘の姿が王都で消えた。時間が惜しい、ポチとタマを一番早い魔物に変態させ至急王都へきてほしい。場所は王都にある俺の隠れ家で1時間後に集合。王都にいるエルフの諜報ちょうほう員達を総動員してくれ!』

『なんと、御子が連れ去られたのか!? 待っていなされ、直ぐに王都へ向かいましょうぞ』

 これでガーグ老達は、1時間後に王都へくるだろう。
 いつきが2匹を譲渡してくれたお陰だ。
 ポチとタマは20種類の鳥系魔物に変態出来る。
 確か樹が風太を登録していたから、風竜に変態すればその背に10人以上は乗れるだろう。

 ドラゴンが鳥系魔物かどうかはさておき、登録出来たと言っていたから問題ないはず
 俺はガーグ老へ伝えた集合場所へ足早に向かった。
 樹と結婚後、第二王妃の予算で王都に家を購入してある。
 あいつは衣装にも宝飾品にも興味がなかったから、計上した予算がそのまま残っていたのだ。
 王城からお忍びで外出するのが好きだった樹のために、家を購入して正解だった。

 にぎわう表通りから少し外れた場所にある隠れ家は、高級なトレント資材をふんだんに使用し建ててある。
 魔物素材だから150年経っていても、経年劣化は極小で済むだろう。
 10分後、隠れ家に到着。
 門の扉には使用者登録が付いている。
 
 これは多分、個人の魔力を識別しているんじゃないか?
 2匹の白ふくろうが俺の魔力に気付いたのなら、人に依って違いがあるんだろう。
 扉に手を掛けると、すんなり外側へ開いた。
 どうやら予想が当たったらしい。

 4mの塀に囲まれた隠れ家は、中に入ると外からは見えない作りになっている。
 こんな事態でもなければ、くるのをすっかり忘れていた。
 家の扉にも同じ使用者登録が付けられているため、例え塀を乗り越え中に入った所で家の中には入れない。
 150年振りに家の中へ入ると、真新しい木材の香りがする。
 ここには冒険者時代に換金したお金や、お忍び用の衣装等が保管してあった。 
  
 ガーグ老達が到着するまで、出来るだけの準備をしておこう。
 沙良が消えたのは、本人の意志ではないと仮定して動いた方がいいな。
 怪しいのは、あの子供か……。

 沙良の調査をすれば、子供へ甘い情報は簡単に入手可能だ。
 そこを突かれたのかも知れん。
 もし誘拐されたとしても自力で逃げる能力はあるが、本人の意識がない状態ではそれも難しい。
 沙良、どうか無事でいてくれ……。

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