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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略
第611話 王都の現状 1 天幕での治療
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ガーグ老の工房から家へ戻り、雫ちゃんをホームに帰したら王都へ移動する。
Lv50の恩恵でマッピングの移動距離が増え、一度の移転で可能だけど秘密にしているため父の案内に従い移動を繰り返す。
王都へは一度いっただけなのに、父は地図を見る事もなく正確な方角を教えてくれた。
Lvが上がり記憶力もUPしているとはいえ驚く。
方向音痴の私には、到底出来ない芸当だ。
30分程で王都に到着すると、入り口には10人の衛兵が立ち王都に出入りする人を確認している。
ダンジョン内に呪具を設置された報告を受け、警戒を強めているのだろう。
私達は冒険者ギルドカードを衛兵に見せ王都の中に入る。
その際、奏伯父さんがギルドカード以外の物を衛兵へ渡すと優先的に入れてもらえた。
あれは貴族だと分かる身分証なのかな?
衛兵と言葉を交わし奏伯父さんが戻ってくる。
「王都は現在、厳戒態勢を敷いてるそうだ。ダンジョンは入場規制がかかり、中には入れなくなっているらしい」
迷宮都市でも同じ対応をしていたから、二次被害を避けるための対処として当然だ。
王都内は前回と違い、人々の姿が少ない。
ダンジョンから魔物が溢れ出す事態は起こらないと分かっていても、普通の人間は脅威に感じるんだろう。
通りに見える人達は足早に歩いている。
まずは情報収集に冒険者ギルドへ顔を出そう。
王都では従魔登録をしていないから、全員従魔から降り歩き出す。
冒険者ギルド前には沢山の天幕が張られ、それぞれ治癒術師が怪我人の対応に当たっていた。
今も多くの怪我人が待機している。
呪具の所為で魔物が増え、普段より怪我人が多く出たようだ。
その中でも一際豪華な天幕がひとつだけあった。
マッピングで中を覗くと、教会の司祭服を着た人物がいる。
こちらは、他の天幕に比べ怪我人が少ない。
もしかしたら、天幕ごとに治療金額が違うのかも知れないな……。
冒険者ギルドに入ると、受付嬢が大きな声で治癒術師を募集していた。
私達のパーティーには3人の治癒術師がいる。
怪我人が多く人手が足りないと思い、私達は受付嬢へ協力すると申し出た。
すると新しい天幕へ案内され、治療費の一覧を渡される。
どうやら料金は一律で、該当ポーションの値段に設定されているようだ。
次々と運ばれてくる怪我人は3人に任せ、私達は治療が済んだ冒険者からダンジョン内の状況を聞き出していく。
今回設置された呪具の色は、全て黒の可能性が高いらしい。
様子見であった迷宮都市での失敗を受け、アシュカナ帝国も本気の様子が窺える。
ダンジョン内の魔物はいつもの倍以上に増え、深層を攻略している冒険者達が階層を上がり対処しているようだ。
呪具が設置されたのは、地下1階~地下10階。
地下11階以降に呪具は発見されておらず、それだけは幸いだといえる。
2時間後。
雫ちゃんのお母さんが、顔見知りの冒険者の治療に当たった。
「ユカちゃん、久し振りだね~。治療出来る事は内緒にしていたんじゃないのかい?」
「新しくパーティーを組んだので解禁したんですよ。ロッカさん、腕が折れてるじゃないですか! もう、呑気に話している場合じゃないです。尚人、骨折の患者さんよ!」
「了解! 直ぐにいくから待って!」
旭は担当の怪我人を治療後、お母さんの下へ駆けつけた。
女性の腕の状態を確認し、整復を行うとヒールを掛ける。
少し淡く光ったので、同時にホーリーも使用したみたいだ。
治療中、気丈にも女性は一言も声を漏らさず耐えた。
「ありがとう。腕のいい治癒術師だね。良かったら、うちのクランに入らないかい?」
「ロッカさん、む……兄を勧誘している場合じゃないでしょう?」
「おや? 兄妹だったのか。妹のシズクちゃんとも、また似てない3兄妹だね~」
「……親が全員違うんです。それより、呪具の解呪はどうなりました? まだダンジョン内に冒険者はいるんですか?」
「あぁ、うちのクランが最後だよ。全ての呪具は解呪済みだ。事前に薬師ギルドから専用のポーションを配布されていて助かった。パーティーメンバーがギルドマスターへ報告にいってる」
「じゃあ、事態は収拾したんですね」
「あぁ。今頃のこのこやってきた教会の司教は、出番がないだろうさ」
そう言って女性はニヤリと笑った。
2人の会話を傍で聞いていた私は、ひとまず安心する。
王都の冒険者ギルドも、かなり対策を練っていたんだろう。
治療を終えた女性が天幕を出た後で雫ちゃんのお母さんに確認すると、彼女は『百花の舞』のクランリーダーらしい。
王都最大のクランで、クランに所属せず2人パーティーだった雫ちゃん達を気にかけてくれていたそうだ。
王都では姉妹として過ごし、アイテムBOXと光魔法の能力を秘密にするためパーティーを組まなかったみたいだから、私達と似たようなものか……。
ロッカさんが言った通り、その後運ばれてくる怪我人はおらず、私達は天幕を出て再び冒険者ギルドへ向かった。
冒険者ギルド前では、教会の司教とみられる人物が顔を真っ赤にし騒ぎを起こしている。
司教には数人のお供が付いていた。
その内の1人に、「呪具が解呪済みだとは聞いてない」とがなり立てている。
司教の言葉を聞いた従者の表情が、ほんの僅か変化したように見えた。
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お気に入り登録をして下さった方、エールを送って下さった方とても感謝しています。
読んで下さる全ての皆様、ありがとうございます。
応援して下さる皆様がいて大変励みになっています。
これからもよろしくお願い致します。
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Lv50の恩恵でマッピングの移動距離が増え、一度の移転で可能だけど秘密にしているため父の案内に従い移動を繰り返す。
王都へは一度いっただけなのに、父は地図を見る事もなく正確な方角を教えてくれた。
Lvが上がり記憶力もUPしているとはいえ驚く。
方向音痴の私には、到底出来ない芸当だ。
30分程で王都に到着すると、入り口には10人の衛兵が立ち王都に出入りする人を確認している。
ダンジョン内に呪具を設置された報告を受け、警戒を強めているのだろう。
私達は冒険者ギルドカードを衛兵に見せ王都の中に入る。
その際、奏伯父さんがギルドカード以外の物を衛兵へ渡すと優先的に入れてもらえた。
あれは貴族だと分かる身分証なのかな?
衛兵と言葉を交わし奏伯父さんが戻ってくる。
「王都は現在、厳戒態勢を敷いてるそうだ。ダンジョンは入場規制がかかり、中には入れなくなっているらしい」
迷宮都市でも同じ対応をしていたから、二次被害を避けるための対処として当然だ。
王都内は前回と違い、人々の姿が少ない。
ダンジョンから魔物が溢れ出す事態は起こらないと分かっていても、普通の人間は脅威に感じるんだろう。
通りに見える人達は足早に歩いている。
まずは情報収集に冒険者ギルドへ顔を出そう。
王都では従魔登録をしていないから、全員従魔から降り歩き出す。
冒険者ギルド前には沢山の天幕が張られ、それぞれ治癒術師が怪我人の対応に当たっていた。
今も多くの怪我人が待機している。
呪具の所為で魔物が増え、普段より怪我人が多く出たようだ。
その中でも一際豪華な天幕がひとつだけあった。
マッピングで中を覗くと、教会の司祭服を着た人物がいる。
こちらは、他の天幕に比べ怪我人が少ない。
もしかしたら、天幕ごとに治療金額が違うのかも知れないな……。
冒険者ギルドに入ると、受付嬢が大きな声で治癒術師を募集していた。
私達のパーティーには3人の治癒術師がいる。
怪我人が多く人手が足りないと思い、私達は受付嬢へ協力すると申し出た。
すると新しい天幕へ案内され、治療費の一覧を渡される。
どうやら料金は一律で、該当ポーションの値段に設定されているようだ。
次々と運ばれてくる怪我人は3人に任せ、私達は治療が済んだ冒険者からダンジョン内の状況を聞き出していく。
今回設置された呪具の色は、全て黒の可能性が高いらしい。
様子見であった迷宮都市での失敗を受け、アシュカナ帝国も本気の様子が窺える。
ダンジョン内の魔物はいつもの倍以上に増え、深層を攻略している冒険者達が階層を上がり対処しているようだ。
呪具が設置されたのは、地下1階~地下10階。
地下11階以降に呪具は発見されておらず、それだけは幸いだといえる。
2時間後。
雫ちゃんのお母さんが、顔見知りの冒険者の治療に当たった。
「ユカちゃん、久し振りだね~。治療出来る事は内緒にしていたんじゃないのかい?」
「新しくパーティーを組んだので解禁したんですよ。ロッカさん、腕が折れてるじゃないですか! もう、呑気に話している場合じゃないです。尚人、骨折の患者さんよ!」
「了解! 直ぐにいくから待って!」
旭は担当の怪我人を治療後、お母さんの下へ駆けつけた。
女性の腕の状態を確認し、整復を行うとヒールを掛ける。
少し淡く光ったので、同時にホーリーも使用したみたいだ。
治療中、気丈にも女性は一言も声を漏らさず耐えた。
「ありがとう。腕のいい治癒術師だね。良かったら、うちのクランに入らないかい?」
「ロッカさん、む……兄を勧誘している場合じゃないでしょう?」
「おや? 兄妹だったのか。妹のシズクちゃんとも、また似てない3兄妹だね~」
「……親が全員違うんです。それより、呪具の解呪はどうなりました? まだダンジョン内に冒険者はいるんですか?」
「あぁ、うちのクランが最後だよ。全ての呪具は解呪済みだ。事前に薬師ギルドから専用のポーションを配布されていて助かった。パーティーメンバーがギルドマスターへ報告にいってる」
「じゃあ、事態は収拾したんですね」
「あぁ。今頃のこのこやってきた教会の司教は、出番がないだろうさ」
そう言って女性はニヤリと笑った。
2人の会話を傍で聞いていた私は、ひとまず安心する。
王都の冒険者ギルドも、かなり対策を練っていたんだろう。
治療を終えた女性が天幕を出た後で雫ちゃんのお母さんに確認すると、彼女は『百花の舞』のクランリーダーらしい。
王都最大のクランで、クランに所属せず2人パーティーだった雫ちゃん達を気にかけてくれていたそうだ。
王都では姉妹として過ごし、アイテムBOXと光魔法の能力を秘密にするためパーティーを組まなかったみたいだから、私達と似たようなものか……。
ロッカさんが言った通り、その後運ばれてくる怪我人はおらず、私達は天幕を出て再び冒険者ギルドへ向かった。
冒険者ギルド前では、教会の司教とみられる人物が顔を真っ赤にし騒ぎを起こしている。
司教には数人のお供が付いていた。
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