自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第776話 迷宮都市 ガーグ老達との昼食『ビーフシチュー』&茜の家をホームに設定

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 結婚式で現れた妖精さんの人数を考えると、多目に作った方がいい。
 槍のLv上げで倒したミノタウロスの肉を消費するため、メニューは『ビーフシチュー』にした。
 茜には人数分の『ナン』を焼いてもらう。
 お代わり出来るよう、業務用寸動鍋を出し大量の具材を赤ワインで煮込む。
 時々、灰汁あくをすくいながら1時間後。
 ルーを加え、とろみが付くまでかき混ぜれば完成。

 工房内にいる父達に食事の用意が出来た事を伝え、私は木の下へお供えに向かった。
 『ビーフシチュー』を器に入れた後、冷めないよう順番に取って下さいねと声を掛ける。
 すると器が次々消えていく。
 妖精さんの生態は謎だな……。
 50枚の『ナン』を置いて戻ると、三男のキースさんがテーブルと椅子を庭に設置しているところだった。
 配膳を任せ席に着く。
 待っている間に、工房からガーグ老達が出てきた。

「サラ……ちゃん、食事を作ってもらい悪いの」

「お代わりもありますから、沢山食べて下さい。それでは頂きましょう」

「頂きます!」

 父といつきおじさんの表情が思わしくない。
 ガーグ老と相談した内容が解決しなかったんだろうか?
 家具職人のお爺さん達が早々にお代わりをする中、ガーグ老と長男のゼンさんは考え込んでいる様子だった。
 食事を済ませ、木の下へ器を回収にいく。
 お礼が書かれた羊皮紙には人数分の署名? があった。
 妖精さん達の名前かな?

「沙良。少し時間が掛かりそうだから、夕方迎えに来てほしい」

 父にそう言われ、私は茜と工房を後にした。
 魔法陣の件で忘れていた奏屋かなでやへ果物を卸し、一度ホームに戻る。
 通信の魔道具を起動させ、兄と連絡を取った。

『お兄ちゃん、何処どこにいる?』

『病院で旭と勉強中だ』

『お昼は済ませた?』

『あぁ、もう食べた。何かあったか?』

『薬師ギルドに行くのを忘れてたよ』

『……今から戻る』

 父達の騒動があり、兄も忘れていたようだ。
 病院からは10分もあればマンションへ着く。
 その間に、雫ちゃんのお母さんを呼んでこよう。
 幸い、お母さんは家にいた。
 薬師ギルドへ向かうと伝え、兄達と異世界に移転する。

 遅い時間になったけど、薬師ギルドの受付嬢は嫌な顔も見せず応接室へ案内してくれた。
 テーブルの上に準備されたポーションへ、3人が浄化とヒールを掛けていく。
 浄化で淡く光るポーション瓶をながめながら、召喚するあかねの旦那さんの事を考える。
 早崎さんは異世界に驚くだろうな。
 一緒に冒険者をすると言ってくれるだろうか?
 ゼリアさんが部屋にきて、浄化とヒール代を3人へ渡す。
 私もハニー達が採取した薬草を換金してもらい、代金を受け取った。

 薬師ギルドを出てホームに戻ると、茜が住んでいたマンションへ向かう。
 早崎さんを召喚するなら、家をホームに設定する必要がある。
 兄のマンションから、50km離れた場所にあるマンションは10階建て。
 こちらは賃貸で、ごく普通のマンション。
 茜は私達の住んでいる空き部屋に住めばいいと言っていたけど、自宅がなくなったら不便だろう。
 預金も使えるようになるし、お気に入りの物もあるはずだ。

「じゃあ、ホームに設定するね!」

 設定した瞬間、目の前のマンションが劇的に変わる。
 原状回復で外壁が新築の状態になった。
 妹が住んでいた5階の部屋へ入ると、茜は早速さっそく財布を仕舞っていた。
 それから幾つかの日用品に洋服や下着を、アイテムBOXへ入れている。
 うん?

「茜、そんなに家から持ち出してどうするの?」

「私は姉さんと一緒に住むから、必要な物を回収しただけだよ」 

「えっ!? 早崎さんと暮らさないの?」

「家は寝に帰るだけだったし、別にあいつと一緒じゃなきゃいけない理由がない」

 偽装結婚なら2人共、割り切った共同生活をしていたのかなぁ。
 本人達がそれでいいなら、私は別に口出ししないけど……。
 茜の部屋を用意した方がいいか。
 ベッドや家具はどうするか聞くと、アイテムBOXがあるから必要ないらしい。
 ずっと客用布団で寝るのはどうかと思ったけど、張り込みをして車の中で寝るのが多い妹は、横になり眠れるだけましだと笑っていた。
 
 茜の家以外のマンションの部屋から劣化を防ぐため、ある物をアイテムBOXに回収する。
 全部で49部屋分。
 駐車場の車も全てアイテムBOXに入れた。 
 兄のマンションで回収した物も、まだ忙しく調べてない。
 生活に不便を感じないから、詳しく調べるのは当分先だろうな。

 用事を済ませた私達は自宅に戻り、商業ギルドで貰った世界地図と魔法陣の移転先を見比べてみた。
 獣人が住む中央大陸を中心に、ドワーフの国がある北大陸、アシュカナ帝国がある南大陸、カルドサリ王国がある西大陸、まだ行った事のない東大陸がある。
 大きな大陸は5つあり、他に大小様々な島も記載されている。
 国名が書かれていない場所は、商業ギルドも把握していない国かしら?
 交易を行っていない国もありそうだ。
 玄武げんぶがいた北大陸の上にある島はなかったから、地図に追加しておこう。

「132階からは、この南大陸がある国の可能性が高いな」

 茜が地図を見ながら南大陸を指す。
 アシュカナ帝国以外に、30は国名が書かれていた。
 その中でも国名の後に(属国)とあるのは、既に侵略されたと思っていい。
 属国となっている国が20か……。
 帝国は、かなり軍事力があるんだな。
 カルドサリ王国へ戦争を仕掛けるなら、属国になっている国の兵も戦力と考えないと駄目だろう。
 移転先が属国の場合は、帝国人がいるかも知れない。
 国名を把握したら長居は無用だ。

「茜。結婚式に襲撃してきた帝国人は、どの程度の強さか分かる?」

「冒険者でいえば、Lv50くらいじゃないかな?」

「Lv50か……」

 ステータス的には500前後なのか。
 私達ならLv10の値だ。
 
「ケスラーの民は、どうだった?」

「あれは、相当強い種族だな。Lvは150を超えてると思う」

 帝国人の3倍!?
 
「茜が見て一番強い人は誰?」

「多分、セイさんだ。あの人は、ガーグ老より強い」

「えっ、そうなの?」

 私は意外な答えに驚いた。
 一番強いのはガーグ老だと思っていたのに……。

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