自宅アパート一棟と共に異世界へ 蔑まれていた令嬢に転生(?)しましたが、自由に生きることにしました

如月 雪名

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第4章 迷宮都市 ダンジョン攻略

第852話 シュウゲン 35 摩天楼ダンジョン30階 小夜のLv上げ

 石化した竜の卵を見てから、ざわざわと落ち着かない気分でいると、鑑定結果を知った沙良が納得したのかアイテムBOXに収納してしまう。
 儂は何とかして石化を解除する方法はないか、つい考え込んだ。
 部分的な石化なら光魔法のヒールが使える賢也けんや尚人なおと君でも可能だが、完全石化ならハイヒールを唱えなければ解除出来んだろう。
 カルドサリ王国内では、教会の司教に依頼せねばならん。
 金はどうとでもなるが司教と面会するには、この国の貴族に紹介状を書いてもらう必要がある。
 伯爵位のかなでに頼んだところで親の魔力がなければ、あの竜の卵は孵化ふかを望めまい。
 両親の属性が違うため、混ざり竜となってしまった卵が育つ事は難しい。
 それを唯一可能にするのは、巫女姫みこひめと呼ばれる御方だけじゃ。

 しばし思案にふけったあと、我に返った。
 儂は、どこでこんな知識を得たのか? 竜族と関わった事すらないのに……。
 しかも巫女姫の存在など、今迄知らなかったはずだ。
 儂の記憶が何かおかしい……気がする。
 まるで、誰かに記憶を操作されたかのように感じるな。
 竜の卵に触発されて、消された記憶がよみがったのか?
 ふむ、これは一考の余地がありそうだ。
 
 美佐子みさこの家で夕食を食べながら、沙良が石化した竜の卵を見付けた話をする。
 話を聞いた娘は驚いていたようだが、「それなら息子達が石化を解除出来るわよ」と、とんでもない事を言う。

「それはどういう意味じゃ?」

「あら? 話してなかったかしら? 賢也けんや尚人なおと君は、全身が石化された冒険者達の治療をしたのよ。その人達は目覚めたあと冒険者をしているみたいだから、竜の卵も同じように治療可能だと思うわ」
 
 2人のステータスが書かれた紙を見せてもらったが、ハイヒールの記載はなかった。
 ただのヒールで、完全石化を解除しただと!? そんな事が有り得るのか?
 美佐子は、まだ異世界に召喚されたばかりだし、魔法で何が出来るか知らぬのだろう。
 疑問を感じているようには見えない。
 儂は正直に話すかどうか悩み、妊娠中の娘に心配を掛けまいと言わぬ事にした。

 その後、沙良達が金曜日までダンジョンを攻略するのに合わせ、午前中は美佐子と畑仕事をして午後からは摩天楼まてんろうのダンジョン30階で採掘を続けた。
 美佐子の言葉通り、賢也と尚人君が石化した竜の卵の解除を毎日行っているみたいだ。
 賢也は基本Lvが50になってから、ハイヒールを覚えて石化の解除範囲が増えたらしい。
 石化された人間とは違い、竜の卵は魔力が多く必要らしく、部分的な解除を続けるしかないようだ。
 解除された卵の表面は、翡翠ひすい色と黄金色が混ざっている。
 どうやら風竜と光竜の間に出来た子供らしい。
 ひびき君の鑑定結果を聞いた沙良が、かなでに色々と質問をしておったが……。

 母親の属性ではなく父親の属性で生まれた場合、魔力を与えられないと回答する息子は、どこでその知識を覚えたのかの?
 国を守護する火竜がいるドワーフの儂でさえ……と思案を巡らせ、神殿で火竜から鍛冶魔法を授かった時の事を思い出す。
 バールが知らぬ言語で話し、火竜と意志の疎通そつうをしておったな。
 儂とは念話で会話をしていたが、今思えば火竜の態度はどこか不自然だった。
 そこに解決の糸口を見付け考え込むと、急に頭の中に霧が掛かり、思考が散漫さんまんする。
 これは一体……どういう事じゃ?
 竜に関する問題を、考えられんようになっておるのか? 逆に興味深い現象だ。

 土曜日。沙良がLv上げをするために、小夜さよをホームへ連れてきた。
 奏が娘の結花ゆかさんを転生者だと伝え、日本にいた時の夫と息子と娘を会わせる。
 妻と初めて会ういつき君が家族を紹介していたが、儂の時とは違い緊張した様子はなかった。
 小夜は一気に増えた家族に目を白黒させながら、既に会った事のある尚人君が曾孫ひまごだったと知り、「まぁ、縁があったのね」と嬉しそうに笑っていた。

 日本円は沢山あるから、ここは儂がおごろうと昼食は家族全員で寿司屋に入る。
 この寿司屋は賢也のお気に入りの店で、大将の本日のお任せ10貫3,000円のコースは、握り寿司の他に刺身・天ぷら盛り合わせ・茶碗蒸し・味噌汁が付いている。
 生魚を避ける必要がある美佐子の事をすっかり失念しておったが、本人はあまり気にせず焼き穴子を追加し、美味しそうに食べておった。
 娘が食べられない握り寿司は、ひびき君のお腹に収まったようじゃ。
 10貫では足らない数人が追加で好きなネタを頼み、儂も大トロを2貫追加した。
 いや~、初めて食べるが本当にとろけるような味わいだな。  

「回転寿司じゃない、お店のお寿司は美味しいね~」

 曾孫ひまごしずくちゃんが、そう言って雲丹うにの軍艦巻きを口に入れる。
 回転寿司とは何だ? 寿司がクルクル回っておるのか? 
 聞き慣れぬ言葉に首をかしげておると、奏が皿に載った寿司がレーンで客の前に運ばれてくる店だと教えてくれた。
 はて? それは、カウンターで注文する寿司屋と何が違うのかの?
 流しそうめんのように、勢いよく流れてくるなら取るのにコツが要りそうだが……。
 そんな寿司屋が今は流行はやっておるそうじゃ。
 年寄りの儂には、ちと理解出来ん。
 食後に支払おうとする響君を止め、儂が会計を済ませ店を出た。

 ホームから異世界の沙良の家に全員が移動する。
 Lv上げをすると言うが、家から出てダンジョンへ向かう様子もない。
 魔物を倒す以外に、Lvを上げる方法でもあるのかと考えていたら、突如とつじょ庭に魔物が出現した。
 魔物の生息範囲じゃない都市内に、何故なぜ現れるんじゃ!?
 咄嗟とっさに警戒態勢を取る儂へ、響君は沙良がアイテムBOXから出した魔物だと言う。
 なんだとっ!! それは魔物を生きたまま、アイテムBOXに収納可能だという意味か??
 聞いた儂はあごが外れそうなくらい大きく口を開け、出現した魔物を美佐子が倒す姿を茫然ぼうぜんと見つめた。
 
 皆が驚いた素振りもないのは、いつもこのLv上げ方法をしているからだろう。
 生きている魔物が収納出来るなら、当然生きた人間もアイテムBOXに入れられるのでは?
 この危険性に、沙良以外のアイテムBOXの能力を持った家族は気付いているのか?
 確か、結花ゆかさんと尚人なおと君もアイテムBOXが使える筈だ。
 マジックバッグと違い、容量無制限で時間停止機能も付いておる。
 それだけでも狙われるというのに……。しかも、3人共まだ若い。
 実際の年齢は、見た目では判断つかんからな。
 儂は思った以上に、家族を守るのは難しいかも知れんと頭を痛めた。
 沙良だけでも、ガーグ老達が護衛してくれるのは正に天の采配さいはいか……。

 そんな事を思っている間にも、沙良が次々と魔物を庭に出していく。
 儂はあわてて小夜の方へ行き、何かあれば手助けできる位置に付いた。
 小夜は出現した魔物に動揺もせず、冷静に薙刀なぎなたで首をねている。
 儂の作製した武器の切れ味もさることながら、本人の腕が鈍っておらん証拠じゃな。
 そのきりりと研ぎ澄まされた姿を懐かしく思った。
 これなら、怪我の心配をせんでもいいだろう。

 美佐子の面倒は響君が見ているから、任せておけばいい。
 小夜が魔物を倒す合間に少しだけ視線を向ければ、魔法を使用し行動不能にしていた。
 ありゃ、何の魔法だ? 魔物は地面に倒れたまま動かない。
 その後、ライトボールを眉間に撃ち絶命させておる。
 美佐子の言った通り、安全に魔物を倒しているようだ。

 3時間後。
 Lv上げをしていた小夜、美佐子、結花さん、樹君、雫ちゃんが、Lvが上がったと喜んでいた。
 小夜はLvが30になったおかげで、若返りの効果が表れたのか見た目の変化がいちじるしい。
 しわの数が減り、70代から60代に見えるようになった。
 沙良が出した姿見で自分の顔を確認すると、嬉しそうに顔をほころばせておる。
 しかし急激に若返った姿に、小夜を知る人間は驚くのではないかの?
 多少化粧で誤魔化したところで、これ以上Lvを上げればいずれ限界がくる。
 それは沙良も分かっていたのか、小夜のLvを上げるのは今回で最後にすると言った。
 初めてLvを上げた年齢が78歳と遅かったから、基礎値が78ある小夜はHP・MPが子供の頃に冒険者登録した者より高い。
 Lvが30でも、HP・MPが2,418なら充分だろう。

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