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その女神、悦楽
女神の遭遇(4)
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アッシュは俵担ぎにされたままカーライルの背中に頬杖をしていた。
「あーあ。せっかく楽しかったのに」
自身の背中で文句を垂れる主人に向かってため息をついた。
「お前なぁ、試合のルールちゃんとわかってんのか?」
「ルール?なにそれ」
「やっぱり」
カーライルは闘技場から出るとアッシュを地面に下ろした。
アッシュの目線の高さになるように身をかがめ、小さな子供に言い聞かせるように話した。
「いいか?あの試合はな、武器を地面に捨てたらいけねぇんだよ」
アッシュはきょとんとした。
「なんで?実践じゃそんなの日常茶飯事じゃん。カラーライルだってよく、しゃらくせえ!って言って相手をボコスカ殴ってるじゃん」
「だからこれは実践じゃねぇの。わかるか?これは武器を捨てたら降伏したとみなされるんだよ」
「そ、そうなの?」
「そうなんだよ」
アッシュの頬が見る間に紅潮し目が潤んでいった。
カーライルは焦った。これはアッシュが泣くと思った。
「おいおい、泣くなよ?」
「だ、誰が泣くもんか!もう帰る!」
ネイロスを預けていた厩まで走っていき、乱暴にドアをけ破ってネイロスを出した。そのついでに、カーライルの馬を止めていた綱をがんじがらめにしてほどけにくくするとあっという間に走り去ってしまった。
少し遅れてカーライルが厩に来た時にはアッシュの姿は見えず、絡まった綱をほどくのに必死な厩の主人と使いの男が難渋していただけだった。
頭を抱えたカーライルの服の裾を誰かが引っ張った。ちらっと見やると両手いっぱいの食べ物を持った、ぼろぼろの服を着た女の子とその横に同じくぼろの服を着た男の子がいた。
「なんだ?」
カーライルの声に緊張しながら女の子は一枚の紙切れを渡してきた。
震える手から受け取った紙にはアッシュの筆跡で『こいつらに食べ物をくれてやった。金はカーライル持ちだから』という文字とともにベーっと舌を出した人の顔の絵が描かれていた。
「あいつはまったく」
大きなため息をまたひとつつくと、子供たちに向かって屈んだ。
びくついている子供の頭を優しく撫で、聞いた。
「その食いもん、誰に買ってもらったんだ?」
女の子はおどおどしていたが、弟とみられる男の子がしゃべった。
「すっごくきれいなお兄さん!」
すると女の子が違うといった。
「お兄さんじゃないよ。お姉さんだよ!」
「違うよ、絶対お兄さんだよ!」
カーライルは姉弟喧嘩を仲裁した。
「取り合えず、金を払いたいから店まで案内してもらえねぇか?」
「わかりました、旦那様!」
「おいおい、何で俺が旦那様なんだ」
二人は少し困った顔をした。
「だって、きれいな恰好されてますし」
「食べ物だって」
「いいか?俺のことは旦那様なんて呼ぶんじゃねぇ。そんな立派な身分じゃねぇからな」
「じゃあなんて……」
そういわれればと少し考えた彼は、
「俺のことはカーライルって呼べばいい」
にかっと笑って、二人を担ぎ上げ立派な両腕に座らせた。
子供たちはきゃっきゃと楽しそうな声を上げた。
「おい、厩の主人」
「申し訳ございません、馬はもう少々お待ちください」
震える主人に馬をもう少し預けておくからそれまでに何とかしておくように頼んだ。
そして、二人を抱いてアッシュが未払いの店に代金を払いに向かった。
「あーあ。せっかく楽しかったのに」
自身の背中で文句を垂れる主人に向かってため息をついた。
「お前なぁ、試合のルールちゃんとわかってんのか?」
「ルール?なにそれ」
「やっぱり」
カーライルは闘技場から出るとアッシュを地面に下ろした。
アッシュの目線の高さになるように身をかがめ、小さな子供に言い聞かせるように話した。
「いいか?あの試合はな、武器を地面に捨てたらいけねぇんだよ」
アッシュはきょとんとした。
「なんで?実践じゃそんなの日常茶飯事じゃん。カラーライルだってよく、しゃらくせえ!って言って相手をボコスカ殴ってるじゃん」
「だからこれは実践じゃねぇの。わかるか?これは武器を捨てたら降伏したとみなされるんだよ」
「そ、そうなの?」
「そうなんだよ」
アッシュの頬が見る間に紅潮し目が潤んでいった。
カーライルは焦った。これはアッシュが泣くと思った。
「おいおい、泣くなよ?」
「だ、誰が泣くもんか!もう帰る!」
ネイロスを預けていた厩まで走っていき、乱暴にドアをけ破ってネイロスを出した。そのついでに、カーライルの馬を止めていた綱をがんじがらめにしてほどけにくくするとあっという間に走り去ってしまった。
少し遅れてカーライルが厩に来た時にはアッシュの姿は見えず、絡まった綱をほどくのに必死な厩の主人と使いの男が難渋していただけだった。
頭を抱えたカーライルの服の裾を誰かが引っ張った。ちらっと見やると両手いっぱいの食べ物を持った、ぼろぼろの服を着た女の子とその横に同じくぼろの服を着た男の子がいた。
「なんだ?」
カーライルの声に緊張しながら女の子は一枚の紙切れを渡してきた。
震える手から受け取った紙にはアッシュの筆跡で『こいつらに食べ物をくれてやった。金はカーライル持ちだから』という文字とともにベーっと舌を出した人の顔の絵が描かれていた。
「あいつはまったく」
大きなため息をまたひとつつくと、子供たちに向かって屈んだ。
びくついている子供の頭を優しく撫で、聞いた。
「その食いもん、誰に買ってもらったんだ?」
女の子はおどおどしていたが、弟とみられる男の子がしゃべった。
「すっごくきれいなお兄さん!」
すると女の子が違うといった。
「お兄さんじゃないよ。お姉さんだよ!」
「違うよ、絶対お兄さんだよ!」
カーライルは姉弟喧嘩を仲裁した。
「取り合えず、金を払いたいから店まで案内してもらえねぇか?」
「わかりました、旦那様!」
「おいおい、何で俺が旦那様なんだ」
二人は少し困った顔をした。
「だって、きれいな恰好されてますし」
「食べ物だって」
「いいか?俺のことは旦那様なんて呼ぶんじゃねぇ。そんな立派な身分じゃねぇからな」
「じゃあなんて……」
そういわれればと少し考えた彼は、
「俺のことはカーライルって呼べばいい」
にかっと笑って、二人を担ぎ上げ立派な両腕に座らせた。
子供たちはきゃっきゃと楽しそうな声を上げた。
「おい、厩の主人」
「申し訳ございません、馬はもう少々お待ちください」
震える主人に馬をもう少し預けておくからそれまでに何とかしておくように頼んだ。
そして、二人を抱いてアッシュが未払いの店に代金を払いに向かった。
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