戦場の女神は剣舞を舞う

少女遊 夏野

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その女神、悦楽

女神の舞踏(1)

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 アッシュは不機嫌だった。不機嫌であるとともに怯えていた。
 舞踏会の前日の夜。彼女は城からの脱出を試みた。監獄棟からそっと抜け出し、闇夜に紛れて、昔よく使っていた隠し通路のある裏庭までやってきた。しかし、そこにはアールネらの同期の戦士がたむろしていた。良く視える目を凝らす。

「ほんとにアッシュはここに来るのか?」
「違いねぇって」
「だって考えてもみろよ。あいつドレス嫌いだろ?」
「人目につくのがまず嫌いだもんな」
「今までだっていろいろやらかしてんだろ?今回だって逃げようとするはずさ」
「クロウも言ってたしな」

 アッシュは気づかれる前にその場を後にした。

「クロウ父さんもかんでるのか」

 クロウは頭のまわる参謀のようなところがある。アッシュの行動もおそらく予想済み。
 ならばと思い、正門の方へと向かうことにした。裏から出られないなら正面から堂々と出ていく。
 気分が高揚してくるのがわかった。どれだけ出るまでに暴れることができるだろうか。そればかりが頭に浮かぶ。
 浮足立って歩いていくと、正門付近に三将軍たちとディラン等が集まっているのが魔法の目で見えた。

「何であいつらまでいるの」

 近くにはディランの同期で同室のエルビスとクリスもいた。全員組み手で使用する各々の武器を持っていた。さらに三将軍に混ざってカーライルの姿もある。

「何で俺はここにいなきゃなんねぇんだ」
「貴方は保険ですよ」
「何の保険だよ」
「てめぇをとっつかまえておきゃあ、あいつも下手なことできねぇだろ?」
 
 ニヤリと笑って見せるトリスタンに、少し鳥肌の立ったディランたち下っ端。

「将軍等も恐ろしいことを考えられるのだな」

 エルビスはクリスに囁いた。

「うん、さすがって感じだね。僕もいつかそこまで考えられるようになりたいよ」
「やめときなよクリス。俺、クリスがあんなに怖くなるのはやだよ」

 ディランは将軍等をちらっと横目に見ながらつぶやいたが、その肩をグイッと引っ張られた。

「あわっ!」
「おい、ディラン。お前、ここでなにしてるの」

 アッシュだった。気配を消して忍び足で近寄ってきていた。

「だ、誰だ?」
「お前たちに用はないんだけど」
「あなたは確か試験の時に……」
「うるさいよ」

 アッシュはクリスをにらんだ。月と松明の灯りに照らされて、アッシュの瞳が怪しくきらきらと輝いた。暗がりでも浮き上がるような瞳に凄みを感じ、クリスは言葉を紡げなくなった。 
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