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その女神、悦楽
女神の舞踏(2)
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「アッシュ、もしかして逃げるつもり?」
ディランが聞くと、その口を手で塞いだ。
「しっ!おっきい声出すなよ!父さんたちに聞こえるだろ!」
ディランが口をもごもごさせていると、今度はエルビスが声を発した。
「お前が将軍らの言っていた脱走を計画している者か!」
「声がおっきい!」
アッシュはエルビスの腹めがけて蹴りを入れた。見事に食らった彼は苦しそうな声を出して前かがみになった。
しかし、それでは終わらない。戦士になってから鍛えられたエルビスはすぐ臨戦態勢を取った。
「貴様、よくも!」
「へぇ、僕と遊ぶつもり?お前、強いの?」
くすくすと笑いながら、捕まえていたディランを離す。抑えられていた口を解放され、ディランは叫んだ。
「将軍!アッシュが来ました!」
「わかってらぁ!」
気づけばすぐ後ろにトリスタンが立っていた。いつも通り、余裕そうな笑みを口元に浮かべている。
「いやな気配が漂ってきましたからねぇ。振り返ってみればこの通りですよ」
丸メガネをクイッとあげ、エルビスの前に立つクロウ。さらにそれの前に立つアールネ。
「アッシュ、まさか貴女に限って敵前逃亡なんて無様な真似はしませんよね?」
クロウがニヤッと笑った。それと同じような笑みをアッシュも浮かべる。
「まさか、そんなことはしないよ!ちょっとアルモスの家に忘れ物を取りにね。どうしても明日までに必要なんだ」
「いやいや、何を言っているのでしょうね?アルモスの家にあったものは全て、この城に昨日から今日にかけて運び込んであります。なんならそこまで案内しましょうか?」
アッシュは苦虫を噛んだような顔をした。
「こうなったら……」
アッシュはディランをアールネに向けて突き飛ばした。ディランは軽くよろけたもののアールネの胸に飛び込むことなく、止まった。アッシュはそのまま正門にかかる堀の橋に向かって走った。その後ろをクロウたちが追いかける。その姿を見つめる下っ端三人。
「おいてめぇら!そいつを足止めしろ!」
トリスタンが見張りの戦士に叫ぶ傍ら、アールネが持っていた模擬の大剣をアッシュに向かって投げた。彼女の足元にまっすぐに飛んでいく大剣を見もせずに華麗に飛び避けた。見張りの戦士がアッシュに向かって剣を振り上げると、さっと脇に入り込み腕を捻って剣を奪い腹に膝、背中に肘を打ち込んだ。すかさずその横からもう一人の戦士が槍でついてくるが逆にそれを絡め取ってしまった。槍を華麗に振り回し、足元を攻め続け注意がそこに行った隙に反対の柄で喉元を突いた。
そのまま逃げ切れるかのように思えたが、そうはいかなかった。
ずっと前進はしていたもののやはり速度は落ちていた。
「逃がしませんよ」
クロウが腰に常に携帯していた鞭で彼女の脚を絡め取った。
「あっ」
転んだアッシュはアールネにしっかりと捕まった。
「やだやだ!下ろして!」
「だめ、だ」
「仕方がないですね」
「そうだなぁ」
そうしてアッシュは当日の夜までアールネらの監視のもと、監獄棟の地下牢に新しい足枷を付けた状態で閉じ込められることになったのだった。
ディランが聞くと、その口を手で塞いだ。
「しっ!おっきい声出すなよ!父さんたちに聞こえるだろ!」
ディランが口をもごもごさせていると、今度はエルビスが声を発した。
「お前が将軍らの言っていた脱走を計画している者か!」
「声がおっきい!」
アッシュはエルビスの腹めがけて蹴りを入れた。見事に食らった彼は苦しそうな声を出して前かがみになった。
しかし、それでは終わらない。戦士になってから鍛えられたエルビスはすぐ臨戦態勢を取った。
「貴様、よくも!」
「へぇ、僕と遊ぶつもり?お前、強いの?」
くすくすと笑いながら、捕まえていたディランを離す。抑えられていた口を解放され、ディランは叫んだ。
「将軍!アッシュが来ました!」
「わかってらぁ!」
気づけばすぐ後ろにトリスタンが立っていた。いつも通り、余裕そうな笑みを口元に浮かべている。
「いやな気配が漂ってきましたからねぇ。振り返ってみればこの通りですよ」
丸メガネをクイッとあげ、エルビスの前に立つクロウ。さらにそれの前に立つアールネ。
「アッシュ、まさか貴女に限って敵前逃亡なんて無様な真似はしませんよね?」
クロウがニヤッと笑った。それと同じような笑みをアッシュも浮かべる。
「まさか、そんなことはしないよ!ちょっとアルモスの家に忘れ物を取りにね。どうしても明日までに必要なんだ」
「いやいや、何を言っているのでしょうね?アルモスの家にあったものは全て、この城に昨日から今日にかけて運び込んであります。なんならそこまで案内しましょうか?」
アッシュは苦虫を噛んだような顔をした。
「こうなったら……」
アッシュはディランをアールネに向けて突き飛ばした。ディランは軽くよろけたもののアールネの胸に飛び込むことなく、止まった。アッシュはそのまま正門にかかる堀の橋に向かって走った。その後ろをクロウたちが追いかける。その姿を見つめる下っ端三人。
「おいてめぇら!そいつを足止めしろ!」
トリスタンが見張りの戦士に叫ぶ傍ら、アールネが持っていた模擬の大剣をアッシュに向かって投げた。彼女の足元にまっすぐに飛んでいく大剣を見もせずに華麗に飛び避けた。見張りの戦士がアッシュに向かって剣を振り上げると、さっと脇に入り込み腕を捻って剣を奪い腹に膝、背中に肘を打ち込んだ。すかさずその横からもう一人の戦士が槍でついてくるが逆にそれを絡め取ってしまった。槍を華麗に振り回し、足元を攻め続け注意がそこに行った隙に反対の柄で喉元を突いた。
そのまま逃げ切れるかのように思えたが、そうはいかなかった。
ずっと前進はしていたもののやはり速度は落ちていた。
「逃がしませんよ」
クロウが腰に常に携帯していた鞭で彼女の脚を絡め取った。
「あっ」
転んだアッシュはアールネにしっかりと捕まった。
「やだやだ!下ろして!」
「だめ、だ」
「仕方がないですね」
「そうだなぁ」
そうしてアッシュは当日の夜までアールネらの監視のもと、監獄棟の地下牢に新しい足枷を付けた状態で閉じ込められることになったのだった。
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