戦場の女神は剣舞を舞う

少女遊 夏野

文字の大きさ
33 / 38
その女神、悦楽

女神の舞踏(6)

しおりを挟む
 トリト帝国からの要人の護衛として、セルゲイも会場入りした。護衛の務めとして要人につき従い各国の爵位ある貴族たちに挨拶を行っていると、彼の肩をたたく者がいた。
 見るとそこには、見覚えのある大男。

「お前はあの時のトリトの対戦相手だよな?」
「えーっとアンタは……」
「なんとうか、あの金髪の保護者的な奴だ」

 それで思い出したセルゲイは、カーライルを指さした。

「あー!あの時の!あのとんでもなく強いあの子供の!」

 カーライルは恥ずかしいのか、少し顔を赤らめて小さく「そうだ」と呟いた。

「あの時は、すまなかったな。あいつルールを理解してなくてな」
「いやいや、いいんだよ。気にすんなって!それにしてもあんたデカいなぁ」
「あぁ、まぁ」
「あの子は?あんたがいるってことは会場に来てそうだけど」

 セルゲイは近くにアッシュがいないか見渡したが見当たらない。

「おうおう、何してんだカーライル」
「ああ、トリトでアッシュが迷惑かけた戦士がいたから挨拶をな」

 トリスタンら三将軍が近づいてきた。
 三人はセルゲイを見ると、何かを悟ったような顔をした。

「俺、こいつの顔見覚えあるぜ」
「トリト最強の戦士ですよね。セルゲイ・テオダートでしたかね?」
「さすがクロウ将軍。テオダート家次男、セルゲイ・テオダートでございます。挨拶遅れてしまい、申し訳ございません」
「いいんですよ、気になさらないでください」
「俺、は。こいつと、戦った、ことがある。非常に、見どころが、ある男だった」
「なるほど、アールネと戦ったことがあったのですね」
「だからかぁ。見覚えがあったのは」
「うむ」

 三人の間にカーライルが割って入った。

「盛り上がってるとこすまねぇが、俺は自分の団の奴らんとこ行くぞ?あいつらほっとくと飲み食いしかしねぇからな」
「あっ、すまない。ところであの俺の戦ったあの子はどこに?」
「わかんねぇがベランダの屋根あたりでもいるんじゃねぇか?場所から離れるわけにはいかねぇが誰にも見つからない場所に行きたいってかんじだったからな」
「よくあの子のことがわかってるじゃないですか。褒めてあげましょうか?」
「いらねぇよ。いくつの時から俺が面倒見てると思ってんだ」
「それを言ったら親は私たちですので、私の方があの子のことをわかってますよ」
「何言ってんだ、あいつに遊び方教えたのはおれだぞ!」
「むっ!」

 だんだんと熱が増してきたため、セルゲイはその場をそっと後にした。なんとなく、その場にいたら巻き込まれそうな気がしたからだ。そんなことより、あの時戦ったアッシュを探すことにした。
 そんなアッシュは人の波に流され、流れのままにベランダへとたどり着いた。
 夜風に当たり、大きく息を吸い込むとため息をついた。
 会場の溢れる光の影になるところへ移動すると、フリルの下に隠していた鞭を取り出し、屋根の飾りの石造にしっかりとかけると、屋根の上へ登り座った。
 仮面を顔の横へずらし、再びため息をついた。視線の先は曇った夜空。星はおろか、月さえも見え隠れしている。胸の内がざわついている。何かが起こる予感がする。

「臭い……。とっても臭い……。どいつだ……」

 アッシュは良く視える目で意識を凝らした。しかし、どいつもこいつも彼女の気に食わない人種ばかり。

「くそっ」

 再び暗い空を見上げた。
 誰かがこちらに向かってくる気配がした。それは感じたことのあるものだ。敵意のにおいはしない。
 それの手は屋根にかかった。

「よいしょっ!」

 上ってきたのはセルゲイだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

どうぞお好きになさってください

みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。 婚約者の第一王子殿下は言った。 「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」 公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。 「好きになさればよろしいわ」

冴えない建築家いずれ巨匠へと至る

木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」 かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。 安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。 現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。 異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

処理中です...