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その女神、悦楽
女神の舞踏(6)
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トリト帝国からの要人の護衛として、セルゲイも会場入りした。護衛の務めとして要人につき従い各国の爵位ある貴族たちに挨拶を行っていると、彼の肩をたたく者がいた。
見るとそこには、見覚えのある大男。
「お前はあの時のトリトの対戦相手だよな?」
「えーっとアンタは……」
「なんとうか、あの金髪の保護者的な奴だ」
それで思い出したセルゲイは、カーライルを指さした。
「あー!あの時の!あのとんでもなく強いあの子供の!」
カーライルは恥ずかしいのか、少し顔を赤らめて小さく「そうだ」と呟いた。
「あの時は、すまなかったな。あいつルールを理解してなくてな」
「いやいや、いいんだよ。気にすんなって!それにしてもあんたデカいなぁ」
「あぁ、まぁ」
「あの子は?あんたがいるってことは会場に来てそうだけど」
セルゲイは近くにアッシュがいないか見渡したが見当たらない。
「おうおう、何してんだカーライル」
「ああ、トリトでアッシュが迷惑かけた戦士がいたから挨拶をな」
トリスタンら三将軍が近づいてきた。
三人はセルゲイを見ると、何かを悟ったような顔をした。
「俺、こいつの顔見覚えあるぜ」
「トリト最強の戦士ですよね。セルゲイ・テオダートでしたかね?」
「さすがクロウ将軍。テオダート家次男、セルゲイ・テオダートでございます。挨拶遅れてしまい、申し訳ございません」
「いいんですよ、気になさらないでください」
「俺、は。こいつと、戦った、ことがある。非常に、見どころが、ある男だった」
「なるほど、アールネと戦ったことがあったのですね」
「だからかぁ。見覚えがあったのは」
「うむ」
三人の間にカーライルが割って入った。
「盛り上がってるとこすまねぇが、俺は自分の団の奴らんとこ行くぞ?あいつらほっとくと飲み食いしかしねぇからな」
「あっ、すまない。ところであの俺の戦ったあの子はどこに?」
「わかんねぇがベランダの屋根あたりでもいるんじゃねぇか?場所から離れるわけにはいかねぇが誰にも見つからない場所に行きたいってかんじだったからな」
「よくあの子のことがわかってるじゃないですか。褒めてあげましょうか?」
「いらねぇよ。いくつの時から俺が面倒見てると思ってんだ」
「それを言ったら親は私たちですので、私の方があの子のことをわかってますよ」
「何言ってんだ、あいつに遊び方教えたのはおれだぞ!」
「むっ!」
だんだんと熱が増してきたため、セルゲイはその場をそっと後にした。なんとなく、その場にいたら巻き込まれそうな気がしたからだ。そんなことより、あの時戦ったアッシュを探すことにした。
そんなアッシュは人の波に流され、流れのままにベランダへとたどり着いた。
夜風に当たり、大きく息を吸い込むとため息をついた。
会場の溢れる光の影になるところへ移動すると、フリルの下に隠していた鞭を取り出し、屋根の飾りの石造にしっかりとかけると、屋根の上へ登り座った。
仮面を顔の横へずらし、再びため息をついた。視線の先は曇った夜空。星はおろか、月さえも見え隠れしている。胸の内がざわついている。何かが起こる予感がする。
「臭い……。とっても臭い……。どいつだ……」
アッシュは良く視える目で意識を凝らした。しかし、どいつもこいつも彼女の気に食わない人種ばかり。
「くそっ」
再び暗い空を見上げた。
誰かがこちらに向かってくる気配がした。それは感じたことのあるものだ。敵意のにおいはしない。
それの手は屋根にかかった。
「よいしょっ!」
上ってきたのはセルゲイだった。
見るとそこには、見覚えのある大男。
「お前はあの時のトリトの対戦相手だよな?」
「えーっとアンタは……」
「なんとうか、あの金髪の保護者的な奴だ」
それで思い出したセルゲイは、カーライルを指さした。
「あー!あの時の!あのとんでもなく強いあの子供の!」
カーライルは恥ずかしいのか、少し顔を赤らめて小さく「そうだ」と呟いた。
「あの時は、すまなかったな。あいつルールを理解してなくてな」
「いやいや、いいんだよ。気にすんなって!それにしてもあんたデカいなぁ」
「あぁ、まぁ」
「あの子は?あんたがいるってことは会場に来てそうだけど」
セルゲイは近くにアッシュがいないか見渡したが見当たらない。
「おうおう、何してんだカーライル」
「ああ、トリトでアッシュが迷惑かけた戦士がいたから挨拶をな」
トリスタンら三将軍が近づいてきた。
三人はセルゲイを見ると、何かを悟ったような顔をした。
「俺、こいつの顔見覚えあるぜ」
「トリト最強の戦士ですよね。セルゲイ・テオダートでしたかね?」
「さすがクロウ将軍。テオダート家次男、セルゲイ・テオダートでございます。挨拶遅れてしまい、申し訳ございません」
「いいんですよ、気になさらないでください」
「俺、は。こいつと、戦った、ことがある。非常に、見どころが、ある男だった」
「なるほど、アールネと戦ったことがあったのですね」
「だからかぁ。見覚えがあったのは」
「うむ」
三人の間にカーライルが割って入った。
「盛り上がってるとこすまねぇが、俺は自分の団の奴らんとこ行くぞ?あいつらほっとくと飲み食いしかしねぇからな」
「あっ、すまない。ところであの俺の戦ったあの子はどこに?」
「わかんねぇがベランダの屋根あたりでもいるんじゃねぇか?場所から離れるわけにはいかねぇが誰にも見つからない場所に行きたいってかんじだったからな」
「よくあの子のことがわかってるじゃないですか。褒めてあげましょうか?」
「いらねぇよ。いくつの時から俺が面倒見てると思ってんだ」
「それを言ったら親は私たちですので、私の方があの子のことをわかってますよ」
「何言ってんだ、あいつに遊び方教えたのはおれだぞ!」
「むっ!」
だんだんと熱が増してきたため、セルゲイはその場をそっと後にした。なんとなく、その場にいたら巻き込まれそうな気がしたからだ。そんなことより、あの時戦ったアッシュを探すことにした。
そんなアッシュは人の波に流され、流れのままにベランダへとたどり着いた。
夜風に当たり、大きく息を吸い込むとため息をついた。
会場の溢れる光の影になるところへ移動すると、フリルの下に隠していた鞭を取り出し、屋根の飾りの石造にしっかりとかけると、屋根の上へ登り座った。
仮面を顔の横へずらし、再びため息をついた。視線の先は曇った夜空。星はおろか、月さえも見え隠れしている。胸の内がざわついている。何かが起こる予感がする。
「臭い……。とっても臭い……。どいつだ……」
アッシュは良く視える目で意識を凝らした。しかし、どいつもこいつも彼女の気に食わない人種ばかり。
「くそっ」
再び暗い空を見上げた。
誰かがこちらに向かってくる気配がした。それは感じたことのあるものだ。敵意のにおいはしない。
それの手は屋根にかかった。
「よいしょっ!」
上ってきたのはセルゲイだった。
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