魔女と欲に溺れる魔術師

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PM: 0:00 イギリス ロンドン

「以上が、報告書ほうこくしょになります」

 私は帰国して早々、議長室ぎちょうしつに来ていた。もちろん、例の事件の報告に。
 彼女が介入かいにゅうした出来事は、議長室にてこのお子様もとい現議長である彼女に報告しないといけない決まりとなっている。
 元老院げんろういん因縁いんねんがあるアルが絡むと知れば、元老院にとっては不都合でしかないのだから。

「なるほどね~。それじゃ、彼が死んだ事でこの口座は、僕のものになったってわけだね。
 人間っていうのは、本当にバカな生き物だよ。こんなものを取り上げられてる如きで、こんな一大事を起こすんだから」

「あら? あなたにしては、まともなことを言いますねぇ。何か、いいことでも?」

「別に、何もないよ、セシリア。僕はただ、あれが動くだろうと思ったから、あえて執行者の業務を取り上げただけさ。
 主任である君も、そのほうが動きやすいでしょ?」

「わかってますね。では、報告は以上ですので、これで」

 私は議長室を離れると、彼女は再び話を続ける。

「ねぇ? ここに載ってないことがあるんだけど?」

「さぁ? なんのことだか? それでは失礼」

 私は、今度こそ議長室を後にした。
 中庭のベンチに座り、その場で一服をする。すると、議長室のある通路から、1人の少女が現れた。

「魔術院内は、全館禁煙きんえんになってますが?」

「あら? これは失礼。気が抜いちゃって、煙草吸ってたわ」

「別に、構いませんよ。今は2人だけだし」

 紫色の長い髪をした少女は、私の隣に座る。しばらく座ってると、彼女は話し始めた。

「今回の件、結構大変だったそうですね。流石に、リリィの強行きょうこうには少し呆れましたが」

「あのお子様なら、やろうと思えばやる人間よ。まぁ、彼女の存在を知ってるのは、私たちくらいだけど」

「キサラギさんの存在自体は、元老院にとっては厄介極まりないですからね。あの人と親しい私達は目の上のたんこぶでしょうし」

「まぁ、それもあって今に至るわけだし、いいんじゃないんかしら?」

 彼女は、頷きながら答える。私は吸い切った煙草を携帯灰皿に入れる。
 しばらくして、彼女は立ちベンチを後にする。

「それじゃ、私は業務に戻りますね。セシリアさんもそろそろ戻ってはどうです?」

「そのうちね。それと、付き合ってありがとう、美羽」

 彼女は、一礼をして、議長室に戻る。私はもう一本煙草を吸う。
 これから先は、今回よりも厄介な出来事は起きるだろうが、それも安泰かも知れない。
 それにしばらく私は、あの街に行くことは無さそうだ

 ――――――――――――――――――――――だって、あの街には『魔女』が住んでいるんですもの。

                   魔女と欲に溺れる魔術師 完 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――













『お疲れ様。今回も相当面倒だったわね』

『あぁ。でも、しばらくは安泰だろう』

『それは残念。私は、結構退屈になるわ。あなたの戦う姿が見れないんですもの』

『はいはい。んで? あれは見つかったの?』

『残念ながら、彼の工房からは見つからなかったわ。
 私がついた頃には、誰かに荒らされて持ってかれたみたい』

『そうか。まぁ、次があるさ』

『そうね。そのうち見つかればいいわけだし』

『あぁ、そうだ。私が持ってるのは3冊。君が持ってた2冊と、師匠せんせいが持っていた1冊だ』

『えぇ。それはともかく、始めましょうか』

『わかった。それじゃ、何かあったら起こして』

『はい。それじゃおやすみなさい。アル』
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