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1章辺鄙な領にて
15話無能
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「立派な者にならん奴はどうする気だ? そいつらは、この国に繁栄を齎らすどころか、悪魔のように衰退を齎す。最強魔術師一族がそれでは駄目なのだ。我々は弱者を切り捨て、強くて、優秀な魔術師の血を脈みと後世に受け継なければならん」
「いいえ、どんな出来損ないの子でも、愛情を持って、真剣に向き合って、大切に育てれば、最強ではなくても、立派な大人になります。それで、良いじゃないですか!」
「笑わせるな……甘えた、ただの子供が生まれるだけだ。お前は血に染まった現実に生きていないからそんなことが言えるんだ! 現実は才、財、権力、人の醜い争いで渦巻いている。どうやって、その甘えた、出来損ないの血でどう戦う気だ? 一族が崩壊して良いのか!」
「……私の決意は決して消えることはありません。この子は母として守ります」
「だから、お前は出来損ないの妻と呼ばれるのだ……もういい、結果を言い渡す」
そして、ウルギアは不機嫌な様子で、円卓テーブルを囲い、対面の席に座り、診断結果が書かれた羊皮紙に睨めっこしながら、うーんと唸り、数分後に、ようやく口を開いた。
「単刀直入に言うぞ。ウゼルゲート=シウスは魔術の才能は無い、無能魔術者だ」
【ウゼルゲート=シウス】
魔術才能: G 0無能
対象者の魔術の原能はありません、今後も一生取得できません。
えっ……魔術の才能が無能って、そんなはずは……品質操作スキルはあるじゃないか。
「そして……魔力も皆無だろう。魔力なしで生きてるのが不思議でならん」
【ウゼルゲート=シウス】
魔力指数: G 0~1(無能)
属性 : 無属
魔力は日常生活程度の微々たるものしかなく、魔法現象を発動できません。
ははは……言葉が出ない。
「魔術は無いどころか、一生覚えられんし、魔力も皆無、魔術師どころか一般市民以下と言っていい、いや、それ以下の奴隷民だ! こんな無能な子を、魔術師にする訳にはいかん」
「なぜ、赤ん坊のシウスが将来、魔術師にはなれないと言い切れるのでしょうか? 魔力が皆無というのは疑問です。現に魔力無しで生きていられるはずがありません。きっと何らかの原因で不活性な障害が起きていて、いずれ成長に従って正常に機能していくはずです……」
「魔力量は赤ん坊の時からほとんど変わらん。どんな努力したところで、魔術を覚えられるとは限らん。領主として、幾千者の魔術師の卵を見てきたわしが言うのだから間違いはない。この頃のエリオ、サリバン、ストラノは魔術、魔力共に遥かにシウスを凌駕し、有能子達だった。シウスは魔術師として完全に欠落している」
「……旦那様。よくも、この我が子の前でそんな酷いことを平気で口にすることができるのですか! それでもあなたはシウスの親なのですか?」
「ここで赤ん坊だからと、優しい笑みを浮かべ、お世辞や嘘を言って誤魔化すのは違うだろう? 親の愛情ではないぞ、、それは、シウスのためにはならん、現実を教えるべきだ」
「……」
「シウスは来週、ゲタルガ島へと追放する。何も今生の別れではない、その新しい地で鍛錬し、才能溢れる魔術師に成ったならば、再びこの生まれた故郷に戻してやる。父としても子を外に出すのは胸が痛いがな」
「嘘……それがあなたの本心なのですか……」
「……本心だが?」
「……分かりました」
「これは当主直々の命令だ。誰であっても、命令に背くことはできん」
ユスアは覚悟の顔で、手元からウルゲート言語の赤文字で書かれた羊皮紙を懐から取り出し、テーブルに叩きつけた。
「こ、これは……なんだ」
「シウスがどんなに出来損ないの子供でも、世界中の皆から厭み嫌われても、神から見放されても、私だけはシウスを絶対に見捨てません。だって、私はこの子の母親ですもの」
「ま、まて、早まるでない」
すると、ユスアは緊張の糸が切れたのか、紫眼に涙を滲ませ、手や身体を震わせ、俺をぎゅっと抱き締める。
彼女もきっと、この恐ろしい父を目の前にして怖かったのだろう。
そして、自分の身を賭けてまで、母として子である俺を守ると決めた。
すると、ウルギアはユスアの涙を流す姿を見て、一瞬、悲しそうな表情をした、それを隠すように険しい顔をし、すぐさま立ち上がり、クルッと背を向け、なぜだか水槽に一目散に足を運び、そのままの態勢でこう言った。
「はぁ……ええい、もういい。分かった。処遇はまだ保留だ。こんな……訳の分からん子を放り出して、恥でも晒したらいかんしな。言っておくが、わしはシウスをこの家の人間として認めた訳ではない。我が息子としてもな」
案外この父親は優しいのか。
「……ぐすんっ……はい、分かっています」
「あぁっ! そんなことで泣くなぁぁぁ!」
「申し訳ございません……旦那様の寛大なる処置を感謝致します……」
「今日はこの話は終わりだ。あと、この紙を早くしまえ、というか、必要ないなら今すぐに破り捨てろ」
「はい……」
「ああ、いい、わしが捨てておく!」
俺は母さんに救われた。
母さんが身を挺して俺を守ってくれたこの日を一生俺は忘れないだろう。
「いいえ、どんな出来損ないの子でも、愛情を持って、真剣に向き合って、大切に育てれば、最強ではなくても、立派な大人になります。それで、良いじゃないですか!」
「笑わせるな……甘えた、ただの子供が生まれるだけだ。お前は血に染まった現実に生きていないからそんなことが言えるんだ! 現実は才、財、権力、人の醜い争いで渦巻いている。どうやって、その甘えた、出来損ないの血でどう戦う気だ? 一族が崩壊して良いのか!」
「……私の決意は決して消えることはありません。この子は母として守ります」
「だから、お前は出来損ないの妻と呼ばれるのだ……もういい、結果を言い渡す」
そして、ウルギアは不機嫌な様子で、円卓テーブルを囲い、対面の席に座り、診断結果が書かれた羊皮紙に睨めっこしながら、うーんと唸り、数分後に、ようやく口を開いた。
「単刀直入に言うぞ。ウゼルゲート=シウスは魔術の才能は無い、無能魔術者だ」
【ウゼルゲート=シウス】
魔術才能: G 0無能
対象者の魔術の原能はありません、今後も一生取得できません。
えっ……魔術の才能が無能って、そんなはずは……品質操作スキルはあるじゃないか。
「そして……魔力も皆無だろう。魔力なしで生きてるのが不思議でならん」
【ウゼルゲート=シウス】
魔力指数: G 0~1(無能)
属性 : 無属
魔力は日常生活程度の微々たるものしかなく、魔法現象を発動できません。
ははは……言葉が出ない。
「魔術は無いどころか、一生覚えられんし、魔力も皆無、魔術師どころか一般市民以下と言っていい、いや、それ以下の奴隷民だ! こんな無能な子を、魔術師にする訳にはいかん」
「なぜ、赤ん坊のシウスが将来、魔術師にはなれないと言い切れるのでしょうか? 魔力が皆無というのは疑問です。現に魔力無しで生きていられるはずがありません。きっと何らかの原因で不活性な障害が起きていて、いずれ成長に従って正常に機能していくはずです……」
「魔力量は赤ん坊の時からほとんど変わらん。どんな努力したところで、魔術を覚えられるとは限らん。領主として、幾千者の魔術師の卵を見てきたわしが言うのだから間違いはない。この頃のエリオ、サリバン、ストラノは魔術、魔力共に遥かにシウスを凌駕し、有能子達だった。シウスは魔術師として完全に欠落している」
「……旦那様。よくも、この我が子の前でそんな酷いことを平気で口にすることができるのですか! それでもあなたはシウスの親なのですか?」
「ここで赤ん坊だからと、優しい笑みを浮かべ、お世辞や嘘を言って誤魔化すのは違うだろう? 親の愛情ではないぞ、、それは、シウスのためにはならん、現実を教えるべきだ」
「……」
「シウスは来週、ゲタルガ島へと追放する。何も今生の別れではない、その新しい地で鍛錬し、才能溢れる魔術師に成ったならば、再びこの生まれた故郷に戻してやる。父としても子を外に出すのは胸が痛いがな」
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「……本心だが?」
「……分かりました」
「これは当主直々の命令だ。誰であっても、命令に背くことはできん」
ユスアは覚悟の顔で、手元からウルゲート言語の赤文字で書かれた羊皮紙を懐から取り出し、テーブルに叩きつけた。
「こ、これは……なんだ」
「シウスがどんなに出来損ないの子供でも、世界中の皆から厭み嫌われても、神から見放されても、私だけはシウスを絶対に見捨てません。だって、私はこの子の母親ですもの」
「ま、まて、早まるでない」
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彼女もきっと、この恐ろしい父を目の前にして怖かったのだろう。
そして、自分の身を賭けてまで、母として子である俺を守ると決めた。
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「はぁ……ええい、もういい。分かった。処遇はまだ保留だ。こんな……訳の分からん子を放り出して、恥でも晒したらいかんしな。言っておくが、わしはシウスをこの家の人間として認めた訳ではない。我が息子としてもな」
案外この父親は優しいのか。
「……ぐすんっ……はい、分かっています」
「あぁっ! そんなことで泣くなぁぁぁ!」
「申し訳ございません……旦那様の寛大なる処置を感謝致します……」
「今日はこの話は終わりだ。あと、この紙を早くしまえ、というか、必要ないなら今すぐに破り捨てろ」
「はい……」
「ああ、いい、わしが捨てておく!」
俺は母さんに救われた。
母さんが身を挺して俺を守ってくれたこの日を一生俺は忘れないだろう。
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