品質操作スキルを貰って、異世界辺境領で慎ましく過ごしています

一色

文字の大きさ
15 / 39
1章辺鄙な領にて

15話無能

しおりを挟む
「立派な者にならん奴はどうする気だ? そいつらは、この国に繁栄を齎らすどころか、悪魔のように衰退を齎す。最強魔術師一族がそれでは駄目なのだ。我々は弱者を切り捨て、強くて、優秀な魔術師の血を脈みと後世に受け継なければならん」

「いいえ、どんな出来損ないの子でも、愛情を持って、真剣に向き合って、大切に育てれば、最強ではなくても、立派な大人になります。それで、良いじゃないですか!」

「笑わせるな……甘えた、ただの子供が生まれるだけだ。お前は血に染まった現実に生きていないからそんなことが言えるんだ! 現実は才、財、権力、人の醜い争いで渦巻いている。どうやって、その甘えた、出来損ないの血でどう戦う気だ? 一族が崩壊して良いのか!」

「……私の決意は決して消えることはありません。この子は母として守ります」

「だから、お前は出来損ないの妻と呼ばれるのだ……もういい、結果を言い渡す」

 そして、ウルギアは不機嫌な様子で、円卓テーブルを囲い、対面の席に座り、診断結果が書かれた羊皮紙に睨めっこしながら、うーんと唸り、数分後に、ようやく口を開いた。

「単刀直入に言うぞ。ウゼルゲート=シウスは魔術の才能は無い、無能魔術者だ」

【ウゼルゲート=シウス】
魔術才能: G 0無能
対象者の魔術の原能はありません、今後も一生取得できません。

 えっ……魔術の才能が無能って、そんなはずは……品質操作スキルはあるじゃないか。

「そして……魔力も皆無だろう。魔力なしで生きてるのが不思議でならん」
  
【ウゼルゲート=シウス】
魔力指数: G 0~1(無能)
属性  : 無属 
魔力は日常生活程度の微々たるものしかなく、魔法現象を発動できません。

 ははは……言葉が出ない。

「魔術は無いどころか、一生覚えられんし、魔力も皆無、魔術師どころか一般市民以下と言っていい、いや、それ以下の奴隷民だ! こんな無能な子を、魔術師にする訳にはいかん」

「なぜ、赤ん坊のシウスが将来、魔術師にはなれないと言い切れるのでしょうか? 魔力が皆無というのは疑問です。現に魔力無しで生きていられるはずがありません。きっと何らかの原因で不活性な障害が起きていて、いずれ成長に従って正常に機能していくはずです……」

「魔力量は赤ん坊の時からほとんど変わらん。どんな努力したところで、魔術を覚えられるとは限らん。領主として、幾千者の魔術師の卵を見てきたわしが言うのだから間違いはない。この頃のエリオ、サリバン、ストラノは魔術、魔力共に遥かにシウスを凌駕し、有能子達だった。シウスは魔術師として完全に欠落している」

「……旦那様。よくも、この我が子の前でそんな酷いことを平気で口にすることができるのですか! それでもあなたはシウスの親なのですか?」

「ここで赤ん坊だからと、優しい笑みを浮かべ、お世辞や嘘を言って誤魔化すのは違うだろう? 親の愛情ではないぞ、、それは、シウスのためにはならん、現実を教えるべきだ」

「……」

「シウスは来週、ゲタルガ島へと追放する。何も今生の別れではない、その新しい地で鍛錬し、才能溢れる魔術師に成ったならば、再びこの生まれた故郷に戻してやる。父としても子を外に出すのは胸が痛いがな」

「嘘……それがあなたの本心なのですか……」

「……本心だが?」

「……分かりました」

「これは当主直々の命令だ。誰であっても、命令に背くことはできん」

 ユスアは覚悟の顔で、手元からウルゲート言語の赤文字で書かれた羊皮紙を懐から取り出し、テーブルに叩きつけた。

「こ、これは……なんだ」

「シウスがどんなに出来損ないの子供でも、世界中の皆から厭み嫌われても、神から見放されても、私だけはシウスを絶対に見捨てません。だって、私はこの子の母親ですもの」

「ま、まて、早まるでない」

 すると、ユスアは緊張の糸が切れたのか、紫眼に涙を滲ませ、手や身体を震わせ、俺をぎゅっと抱き締める。
 彼女もきっと、この恐ろしい父を目の前にして怖かったのだろう。
 そして、自分の身を賭けてまで、母として子である俺を守ると決めた。
 すると、ウルギアはユスアの涙を流す姿を見て、一瞬、悲しそうな表情をした、それを隠すように険しい顔をし、すぐさま立ち上がり、クルッと背を向け、なぜだか水槽に一目散に足を運び、そのままの態勢でこう言った。

「はぁ……ええい、もういい。分かった。処遇はまだ保留だ。こんな……訳の分からん子を放り出して、恥でも晒したらいかんしな。言っておくが、わしはシウスをこの家の人間として認めた訳ではない。我が息子としてもな」

 案外この父親は優しいのか。

「……ぐすんっ……はい、分かっています」

「あぁっ! そんなことで泣くなぁぁぁ!」

「申し訳ございません……旦那様の寛大なる処置を感謝致します……」

「今日はこの話は終わりだ。あと、この紙を早くしまえ、というか、必要ないなら今すぐに破り捨てろ」

「はい……」

「ああ、いい、わしが捨てておく!」
 
 俺は母さんに救われた。
 母さんが身を挺して俺を守ってくれたこの日を一生俺は忘れないだろう。
 









                                   

   
 

 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました

まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。 その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。 理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。 ……笑えない。 人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。 だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!? 気づけば―― 記憶喪失の魔王の娘 迫害された獣人一家 古代魔法を使うエルフの美少女 天然ドジな女神 理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕! ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに…… 魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。 「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」 これは、追放された“地味なおっさん”が、 異種族たちとスローライフしながら、 世界を救ってしまう(予定)のお話である。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...