逃げ足スキルで職業勇者になろう

1章勇者の活動

55話二章

　黄金の砂漠が止め処なく広がり、時折吹き荒れる熱風は死の危険さえ感じる。
　この尋常でない気温が少ない体力を奪っていく。
　背中ですやすやと寝息を立てる、小悪魔なお嬢様はそんな駆の苦労を知る由もない。
　だが、それで良いのだ。
　彼女が下手に動けば、予測不能の出来事が起きかねない。
　沈む砂漠に脚を取られないように、力一杯に上げ下げを繰り返し、スピードを上げていく。
　それにしても、いつまで経っても、同じような光景が続く。
　どこかの惑星に二人取り残されたような、そんな空虚な思いが心を苦しめる。
　震える息、急激な鼓動を感じる。
　再度、激しい熱風が吹き荒れ、必死で両腕で振り払うと、何かが落ちていた。

「宝？」

　銀色の宝箱が砂漠の中に埋まっていた。
　拾い、開けると、赤いキノコが入っていた。
　突如、女の声のアナウンスが鳴る。

「赤いキノコを発見しました。1000ポイントゲットです」

「へ？」

　もしかしたら、ランキングなんとかのポイントってこれのことか……。
　そして、右側にランキングが表示される。

「足軽様2000位到達」
　
「……宝箱を見つければ良いのか」

　そして、黙々と歩きながら、砂漠に埋まる宝箱を見つけては、ポイントをゲットしていく。
　一時間程で、一万ポイントが集まり、順位は百位に到達した。

「はぁ。結構早く集まったな。……はぁ。でも、体力を考えれば、十五位って結構きついかもしれない」

　駆は強烈な暑さで汗が吹き出し、体力と水分を徐々に奪っていく。
　ゲームだというのに、温度も本当にリアルだ。
　そんな折、また、宝箱を発見した。
　だが、明らかに通常とは違い、巨大な宝箱だ。
　しかも、
　
「金色だ」

　駆は一目散に走って行くが、同時に右方向から緑色の小さなコブリンががに股で、宝箱目掛けて、走って行くのだ。

「あっ！　それ、俺が見つけた宝箱だから！」

「あ？　うっせぇな！　見つけたのはわしや……わしのもんや」

「はぁ？　俺のだって言ってんだろ！」