あそこにいる公爵令嬢は、実は脱走してきたゴブリンです

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4章ゴブミの結婚

4章2話ゴブミはランサー家に嫁ぎます

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　私はドアをドンドンと叩いた。

「入りなさい」

「はい」

　目の前には、銀髪、ちょび髭を生やした、紳士のおじさんが座っていた。
　アストレア家当主アーサーである。
　アーサーは私の顔を見て、驚いた顔をし、鋭い目つきに変わった。

「君はいったい誰だ？」

　やはり、バレてしまったか。
　もう、言い逃れはできない。

「私はミアではありません。ミアと偽ってこの屋敷に潜り込みました。そして、私は……」

　言ってしまおう。
　これ以上罪の重さに耐えられない。
　
「もういい。ミアの件は騎士団で処理をする。それで、君はこの家から出て行ってもらう。嫁ぎ先はランサー家だ」

「え」

「不服か？」

「いえ」

　　　　　　　　　・
　そして、私はアストレア家から出され、ランサー家へ嫁ぎ、当主長男シューマンと結婚するのだ。
　てっきり、ミアを殺した罪で、騎士団に引き渡されるのかと思いきや、結婚という幸せが舞い込んで来た。見事な逆転劇だった。
　すると、出迎えにはスルガ一人がやってきた。

「申し訳ないね。急で」

「良いのよ。それよりも、レイカの具合は？」

「まだ、意識が戻らなくてね。でも、きっと戻ってくる。なんて言ったって彼女は強いからね」

「ふふ、そうね」

　そして、私は馬車に乗って、ランサー家へ向かった。
　もう二度とこのアストレア家に戻らないと誓って。
　それから、私がミア殺したことを知るレイカが一生意識が戻らないことを願って。

　　　　　　　　　　・

「コップに毒を盛り、ミアに飲ませたのはあんたか？」

「いいえ。私ではありません」

「嘘をつくな！」

　ロメルダは騎士団鑑別所の地下牢の中で、椅子に座りながら、取り調べを受けていた。
　地味な帽子、地味な装束を纏った、汚い顎髭を生やした、騎士のおじさんは机を叩きつけ、怒る。

「ミアの遺体はどこへやった？」

「知りません」

「嘘をつくな！」

「本当です」
　
「じゃあ！　誰がミアの遺体を運んだんだ？」

「私は何も知りません」

　ロメルダは泣きながら、そう語った。
　すると、部下騎士が地下牢に入ってきて、耳元で囁く。

「何？　ミアと偽った女がいるだと？」

「しかも、どうやら、あの農場焼き討ち事件、レンブラント医院夫婦殺害にも絡んでるかもしれないという情報が入りました」

「何だと？」

「ロメルダはミアを殺してないかもしれません」

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