あそこにいる公爵令嬢は、実は脱走してきたゴブリンです

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4章ゴブミの結婚

4章3話没落貴族一家

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 馬車で5時間程揺られて、到着した場所は黒いお化け屋敷だった。
 昔、巨大な綺麗なお屋敷で、広大な立派な庭だったことが伺える。
 これが成れの果ての家だと感じさせた。
 壁に苔やツル、屋根に破損が多く見られ、庭には雑草が鬱蒼と生い茂る。
 迎えたのは、赤いリボンを付けた、陰気な黒髪のショートカットの女だった。

「お待ちしておりました。ささやかですが、婚礼の宴を用意しました」
 
 婚礼の式という割には私が乗ってきた馬車一台しかない。
 如何に、祝福されていないのが分かる。
 屋敷内へ入ると、予想通りの暗黒色の廊下で、不気味な絵画が壁に張られている。

「こちらです」

 舞踏会が行われそうな金色の広間だった。
 高級な円卓テーブルが何個も並び、シャンデリアがきらきら煌めいている。
 だが、人が全くいない。
 新郎新婦席には、白いタキシードを纏い、頭を抱えた金髪の男性がいた。
 私は近づき、おそるおそる、その男性の肩を叩いた。

「あっ!」

「すいません。お休み中でしたか?」

 男性の顔を良く見ると、泣いていた。
 私は少し強張った表情をした。
 男性はすぐさま、涙を拭い、笑顔で、立ち上がり、手を差し伸べた。
 彼の金眼は笑っていなかった。 

「ランサー家の長男シューマンです。ミアさんでよろしいですよね?」

「はい。あの……この度は」

「まあまあ、堅い話は置いといて、何か食べましょう。長旅でお疲れでしょうし」

「はい。あっ、でも、宴の席で、このような格好は……」

「構いません。どうせ、親戚来ません。うちの者も今外出中なので」

「え……そうなんですか」

「さあ、座って、座って」
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