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1章魔戦操縦士学院
19話集中砲火
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この大会で活躍すれば、評価や就職に有利に働くのは確実だろう。決して無駄ではないのだ。
だが、それでも代表になりたくはない。
「そうね。あなたを推薦しようと思うのだけれど」
「いや、俺のことはいい」
声を上げる奴もだんだんいなくなる、前の方で数人が何やら話し合っている。
話し合いも終盤にさしかかっているようだ。
「俺は個人戦に出るわけだし……」
「あなたはそれでいいの?……あなたは才能があるのに評価されないなんておかしいわ」
「才能ねぇ、俺にはないさ」
「それに、私、リオラさんもあなたには感謝しているの。あの時必死で助けてくれたことに……だから何かお返しがしたいのよ」
あの時とは白騎士事件で、カバーニではなく実際は俺がマシュとリオラを助けたことだろう。
再三礼はいらないと言ったのだ。
ただ俺は自分に危害が加わる可能性があったから、白騎士を倒しただけという場当たり的な思いで助けたのだ。
だから感謝する必要はない。
そして、タイター先生が両手をパンパンと叩く。
「さてFクラス代表は決まった。まずジョージ・カバーニ。次、ユークリウス・マシュ。ノベライズ・グレン」
三名か。
すると、金髪の少女が勢い良く立ち上がる。
「あの先生! 補欠は決めないんですか?」
「Fクラスにはいらない。もし代表の一人が病欠ならそこでFクラスは棄権だ」
残酷な言い草だな。
すると、茶髪の眼鏡を掛けたグレンが泣きながら、立ち上がった。
「僕にはやはり荷が重すぎて……えんっ……えんっ」
どうした?
誰かに何かやられたのか、それとも言われたのか。
涙をこぼし、目をこすりながら、グレンは続ける。
「えんっ……えんっ……トーマス・アル君がいいと思います……えんっ」
俺を一斉に見るFクラス諸君。
なぜそうなる?
一切俺の名前を口にする奴なんていなかったではないか。
グレンは鼻水を垂れ流す程、泣き、椅子に着席し、机に突っ伏す。
「えんっ……えんっ……えんっ」
なぜグレンは泣いている、なぜ代表の座を俺に譲るのか。
「アルが脅したのか?」
「マジか」
「グレンがあんなに泣くとは」
「ひでぇ奴だ」
「アル最悪」
「クズアル」
「あいつ嫌い」
いや、何もしてないんですけど。
ふと、俺は教卓にいるリオラと目が合う。
右人差し指を頬に指し、首を傾げるポーズ。
さも、知らぬ振りと云った表情。
あいつは何かしたのか。
俺はすぐさまグレンの元へ、泣きじゃくるグレンを無理矢理立たせ、廊下へ引っ張り出す。
「クラス代表はお前でいいからさ」
「馬鹿にするな!!」
突然、グレンは怒り出す。
どうやら感情が高ぶっている。いや、違う俺に対して鋭い視線を向けている。
憎まれてる? 何かしたのか?
「何があったんだ?」
「リオラさんにクラス代表を辞退しろって言われたんだ!!」
グレンが言うには、リオラに教室外に連れられ、「あなたが代表を辞退して、アル君を推薦して欲しいの」とにこやかに言われたそうだ。
さぞ、絶望と屈辱を味わったことだろう。
グレンはFクラスの中では魔戦操縦士としてはそれなりに実力はある方だ。
マシュの少し下ぐらいだろうか。
自らの力に自信があり、普通ならそんなこと言われたら男なら怒り出すであろう。
俺の実力はクラス代表に相応しくないと言うのかと。
だが彼の場合は違う。
も彼はリオラが好きなのだ。
クラスの大半の男子はリオラが好きなのだが。
入学式当日に一目惚れし、それから毎日朝昼と声を掛け、猛烈にリオラにアタックしていた。
グレンを慰めようと、肩を叩くも。
「触るな!! うぇーん」
グレンに手を振り払われ、泣いて去って行った。
教室に戻ると、タイターは不気味に笑う。
「ならアルも代表に決定だ!」
俺は春の魔戦実技大会団体戦のFクラスの代表に決定した。
これこそ絶望だ。
だが、それでも代表になりたくはない。
「そうね。あなたを推薦しようと思うのだけれど」
「いや、俺のことはいい」
声を上げる奴もだんだんいなくなる、前の方で数人が何やら話し合っている。
話し合いも終盤にさしかかっているようだ。
「俺は個人戦に出るわけだし……」
「あなたはそれでいいの?……あなたは才能があるのに評価されないなんておかしいわ」
「才能ねぇ、俺にはないさ」
「それに、私、リオラさんもあなたには感謝しているの。あの時必死で助けてくれたことに……だから何かお返しがしたいのよ」
あの時とは白騎士事件で、カバーニではなく実際は俺がマシュとリオラを助けたことだろう。
再三礼はいらないと言ったのだ。
ただ俺は自分に危害が加わる可能性があったから、白騎士を倒しただけという場当たり的な思いで助けたのだ。
だから感謝する必要はない。
そして、タイター先生が両手をパンパンと叩く。
「さてFクラス代表は決まった。まずジョージ・カバーニ。次、ユークリウス・マシュ。ノベライズ・グレン」
三名か。
すると、金髪の少女が勢い良く立ち上がる。
「あの先生! 補欠は決めないんですか?」
「Fクラスにはいらない。もし代表の一人が病欠ならそこでFクラスは棄権だ」
残酷な言い草だな。
すると、茶髪の眼鏡を掛けたグレンが泣きながら、立ち上がった。
「僕にはやはり荷が重すぎて……えんっ……えんっ」
どうした?
誰かに何かやられたのか、それとも言われたのか。
涙をこぼし、目をこすりながら、グレンは続ける。
「えんっ……えんっ……トーマス・アル君がいいと思います……えんっ」
俺を一斉に見るFクラス諸君。
なぜそうなる?
一切俺の名前を口にする奴なんていなかったではないか。
グレンは鼻水を垂れ流す程、泣き、椅子に着席し、机に突っ伏す。
「えんっ……えんっ……えんっ」
なぜグレンは泣いている、なぜ代表の座を俺に譲るのか。
「アルが脅したのか?」
「マジか」
「グレンがあんなに泣くとは」
「ひでぇ奴だ」
「アル最悪」
「クズアル」
「あいつ嫌い」
いや、何もしてないんですけど。
ふと、俺は教卓にいるリオラと目が合う。
右人差し指を頬に指し、首を傾げるポーズ。
さも、知らぬ振りと云った表情。
あいつは何かしたのか。
俺はすぐさまグレンの元へ、泣きじゃくるグレンを無理矢理立たせ、廊下へ引っ張り出す。
「クラス代表はお前でいいからさ」
「馬鹿にするな!!」
突然、グレンは怒り出す。
どうやら感情が高ぶっている。いや、違う俺に対して鋭い視線を向けている。
憎まれてる? 何かしたのか?
「何があったんだ?」
「リオラさんにクラス代表を辞退しろって言われたんだ!!」
グレンが言うには、リオラに教室外に連れられ、「あなたが代表を辞退して、アル君を推薦して欲しいの」とにこやかに言われたそうだ。
さぞ、絶望と屈辱を味わったことだろう。
グレンはFクラスの中では魔戦操縦士としてはそれなりに実力はある方だ。
マシュの少し下ぐらいだろうか。
自らの力に自信があり、普通ならそんなこと言われたら男なら怒り出すであろう。
俺の実力はクラス代表に相応しくないと言うのかと。
だが彼の場合は違う。
も彼はリオラが好きなのだ。
クラスの大半の男子はリオラが好きなのだが。
入学式当日に一目惚れし、それから毎日朝昼と声を掛け、猛烈にリオラにアタックしていた。
グレンを慰めようと、肩を叩くも。
「触るな!! うぇーん」
グレンに手を振り払われ、泣いて去って行った。
教室に戻ると、タイターは不気味に笑う。
「ならアルも代表に決定だ!」
俺は春の魔戦実技大会団体戦のFクラスの代表に決定した。
これこそ絶望だ。
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