時空魔術操縦士の冒険記

一色

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1章魔戦操縦士学院

34話決闘

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「Fクラスのトーマス・アルだ。そいつは俺のクラスメートだ、暴行を止めろ!」

「フハハハハハ。このアーサー様がFクラス風情の言う事を聞くと思うか?」

 すると、起き上がろうとするカバーニ。
 声を振り絞るようにして叫ぶ。

「すっこんでろやアル!! これはワイの勝負や!!」

「だが……相手の強さを分かってるのか?」

「お前にばかり助けられる訳には行かねーんや。たとえな相手が強い奴であろうとなかろうと逃げ出す訳には行かねーんや。絶対に情けねぇ男にはなりたくねぇんや。だから男と男の、1対1の勝負を邪魔するな」

「……」

 圧倒的な戦力差をカバーニは気づいていたのだ。
 それにも関わらず強者へ立ち向かっていく。勝てないと分かっていても。
 その勇気を動かしているのはなんだ?
 Fクラスの代表になった責任だろうか?
 俺に対する嫉妬心か?
 カバーニの本能か?
 まあどちらでもいい。
 ただ言える事はカバーニはこれから強くなる。
 きっと。

「フハハハハハハ。下らねーな。潰してやるよグズども!!」 

 瞬間アルファロメオは右拳を大きく振り上げ、カバーニの胴体へ下ろそうとする。右拳の青色の魔力がギラギラと煌めく。
 物凄い圧力で下方にぶち込もうと。
 そして。
 雷のような衝撃が辺りに響き渡る。爆発による黒煙が舞う。
 煙が消えた頃には拳と腕が対峙していた。
 どちらも青き魔力を纏っている。
 どちらも無属性の魔力。
 拳は荒々しい質の魔力。
 一方腕は静音を立てながらの綺麗な魔力。
 モニター越しのアーサーは目を細め、視界には二つの双眸が合った。
 恐ろしい双瞳。鋭いV字型。銀翼の機体。
 銀翼《シルバディウス》。  


 アーサーは今何があったのか覚えていない、というより見えなかった。
 なぜここにこいつがいるのだという驚きが頭を埋め尽くす。
 自身の拳のスピードは決して遅い訳ではない。
 あいつはあの距離からここまで来て、このアーサー様の攻撃を受け止めたのか。
 こんなに早いスピードと魔力の放出を出せる人物など見たことがないと。
 対して俺もアルファロメオの細めた双眸をモニター越しに見つめている。
 俺の態勢は膝を付けながら、どうにかアーサーの攻撃を受け止めた。
 この少し崩れた態勢になったのは予想以上にアーサーの拳のスピードが早かったからだ。
 通常ならば攻撃を受け止め、反撃まで持ち込む事までできるのだが、それができないのはこのアーサーという男がいかに強者で、強敵で、優れた魔術操縦士であるかが分かる。

「何者だ?……」

「さあな」 

「貴様なかなか強い。分かる。対峙していて本能で分かる。貴様が強者か弱者かを」

「ならお前が弱者ってことか?」

「フハハハハハハハ。面白れぇ。なら強者か弱者か決めようぜぇ」

「そうだな。裏魔術戦闘《マジックデュエル》でやろう」

 裏魔術戦闘は主に通常の魔術戦闘と変わらないが。
 両者は何かを要求することができる。
 敗者は勝者の要求を履行しなければならない。
 要求に関しては問わない、ただし他人を巻き込む要求はその他人に了承を得なければならない。
 学校側は何ら責任を持たない。だが、この勝負は双方の合意のみによって成立する。

「面白しれぇ。で要求は?」

「個人戦を棄権しろ」


 確か個人戦次戦でマシュとアーサーは対決するはず。
 もしかしたらCクラス連中は何らかの妨害工作をしてくる可能性がある。
 マシュがカバーニのような末路を辿る事はあってはならない。
 もししなかったとしてもアーサーと対峙するのは危険だ。
 アーサーの今までの個人戦では相手を病院に送りにしたという点からしても、この対決は避けるべきだ。

「いいだろ。こちらの側の要求は……そうだな貴様の退学だ」

「分かった」

 すると。

「アル……やめろ」

 カバーニが声を振り絞り言う。
 アイリスも駆けつけ、必死で言葉を発する。

「こんな勝負やめましょう」

「悪いが俺はやる。勝てばいい。アイリス? カバーニを安全な所に」

「……何を言っても無駄なんですね……分かりました。気つけてくださいね」

「ああ」

 そして、アイリスがカバーニに肩を貸そうとする。しかしそれを振り払い、カバーニは立ち上がった。

「邪魔だ」

「そうですか」

 俺の横を通り過ぎる。

「ほな任せるわ」と目を細めながらカバーニは囁く。
 カバーニの横顔は悔しさが表れている。
 本来ならカバーニがアーサーを倒したかったのだろう。
 だが、今のままの自分ではアーサーには勝てないと分かっている。
 その悔しさを俺にぶつけるようにして離れていく。
 
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