時空魔術操縦士の冒険記

一色

文字の大きさ
72 / 175
2章ダンジョンへ向かおう

幻神鳳凰

しおりを挟む
 鳥の甲高い声がする。

「ギャァ!! ギャァ!! ギャァ!! ギャァ!!」

 何だろうか。
 それにしても眩しい。
 何だろうか。
 俺は瞼《まぶた》を開ける。
 視界には黒い湿原が広がったまま。
 意識があるということは、まだ俺は死んでいなかったのか。
 覇鬼はどこだ?
 周りを見渡すと、上空に金の鳥が旋回しながら、叫んでいた。
 神々しい光を放っている。光の線が突き刺ったように重なり合う。
 炎のようにゆらゆらと揺れる赤い鶏冠《とさか》。
 細い狐眼。大きく広がった純金の羽。尾びれはくねくねと蠢く。
 金の粉が空中に降り注ぐ。
 幻の鳥。レベル700。伝説の異世界神《イセカイジン》。

「【幻神鳳凰《ホウオウ》】だ」
 
 幻神鳳凰《ホウオウ》は羽から炎を纏い、急降下する。
『炎鳥《ファイヤーバード》』
 鳥神の炎で、敵を全て焼き尽くす。
 その下には覇鬼が咆哮しながら、闇を纏う棍棒を振り回している。
 光炎と闇は激突する。激突する度に広がる凄まじい衝撃波。
 これが神々の戦いなのか。ヒューマンが割って入る戦いではない。
 幻神鳳凰は旋回しながら、空中を制する。
 覇鬼は棍棒を振り回して地震を起こし、地上を制する。
 空と地のオーラが押し合う。

「ギャァ!!!!」

「アアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 苛立ちを覚える覇鬼は跳躍し、幻神鳳凰を全身でがっちりと掴む。
 胴を掴まれた幻神鳳凰は身動きが取れず、苦痛の表情。
 嗤う覇鬼。赤い眼と唾を垂れ流す口がある。
 そして、捕まれたまま金鳥は落下し、黒い湿地で爆発し、それから黒煙と黒水が噴出する。
 やがて、炎が発生する。一柱の炎。
 その炎は覇鬼の顔を掠めた。
 覇鬼は寸前で避けた。
 
「クッ!!!!!!!」

 刹那。
 覇鬼の白髪に火の粉が降った。
「ボワッ!!!!」と炎が舞い上がる。
 目を見開く覇鬼。

「!?」

 炎は拡大する。
 全身を炎で焼き尽くされる覇鬼。
 棍棒を振り回して、必死で痛みを追い払う覇鬼。

「アァ!! アァ!! アァ!! アァ!!」

 炎を纏う金の鳥は即座に上空へ飛ぶ。
 怒り狂う覇鬼は闇のオーラを周り全体に発動する。
 黒い闇へと包まれる。黒い霧が立ち込め、空中、地上を埋め尽くした。


『闇域《サタン》』
 周辺一帯を闇のオーラで破壊する。
 この時、闇を浴びた敵は光属性以外の魔術は使用不可能。
 
 だが、一切金の鳥に効いてなかった。
 光の壁で守ったのだ。
『聖なる守り』
 
 金の鳥は嘴から光の線を発射した。
『金光《フェリシッモ》』
 全ての敵を光で破壊する。
 一定時間、光を浴びた者は目を使用できない。
 闇の怪物は大ダメージ。

 天空から一直線状に流れ出る光の閃光は黒い霧を消滅させていき、覇鬼の頭部へ直撃する。
 崩れ落ちる覇鬼は目を押さえ、悲痛な叫び声を上げる。
 やがて、覇鬼は早走りで去って行った。
 
 すると、幻神鳳凰は空中を飛び回り、金色の粉を振り撒いた。
 俺はただ見つめるしかなかった。
 黒い大地がどんどん息吹をあげるように変化し、周りの山や草木に緑が戻ってくる。
 隣りにいたマシュやアイリスが動き出す。
 驚愕する。
 何が起きているのだと。
 二人は上半身を起こし、「どういう事? 私達は死んだはずだった」

「え? え? 何ですかこれは?」


 目を丸くする二人の表情。
 前方にいるリオラも動き出し、目を擦りながら上半身を起こす。
 これは幻神鳳凰の力。
 マシュは目を細め、俺に問い掛ける。

「アル! 何があったの?」

 俺は幻神鳳凰に指を差す。

「幻神鳳凰が助けてくれたんだ」

 なぜ助けてくれたのかは分からない。
 リオラとアイリスがその神々しく輝く鳥を見る。
 すると、こちらにその鳥はやってくる。
 俺達は少し震える。
 狐目はにっこりと微笑み、俺達は息を整え安堵する。
 俺は声を掛ける「ありがとう」。
 鳥は「ギャァ!!」と返答した。
 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか@12/10書籍刊行
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

処理中です...