時空魔術操縦士の冒険記

一色

文字の大きさ
108 / 175
2章ダンジョンへ向かおう

新たな

しおりを挟む
 翌朝、ララナ村は黒い焼け野原となり、半数以上の犬族の人達は死んだ。
 それとエキドナが言っていたエマの父親と妹はどこにもいなかった。
 俺達は丘の上で向こう側に連なる山々を眺めていた。
 すると、向こう側からロペスが険しい表情でやってくる。

「まずい事になったガァ……まさかエキドナとジャックザ・リッパーが手を組んでいるとは……これは国や十強神団《アルカディアス》が介入しなければいけない事案になったガァ……おまんら巻き込んで済まんかったガァ……報酬はちゃんと入金するガァ心配ない」

 マシュやリオラ、アイリスは顔を俯き、疲労困憊《ひろうこんぱい》。
 カバーニは奥歯を噛み締めながら、向こうの山を見ていた。
 そして、ララナ村を後にし、悲しみのままヘルニア王国へと戻った。

             *


 それから数日間、俺達はヘルニア会館をずっと食ったり寝たりしていた。
 宿泊施設もあり食事もあり、困った事があれば受付に行けば良いから何不自由ない。
 いつものように怒号が聞こえてくる。

「なんやおっさん?」

「威勢の良いガキじゃねーか」

「これは買おうとしたワイの肉や!!」

「手に取ったのはワシだぁ!」

「昨日から目を付けてた肉や……今やっと金が入ったから買おうと思ったんや」

「だったら昨日買っとけ」

 マシュは肘をテーブル付けながら、冷たい紫瞳でその様子を見ていた。

「また喧嘩……懲りない人ね」

「もう仕方ないよ……そういうやつなんだ」

 すると、リオラが足をバタバタさせながら、あひる口。

「お腹がすいた! お腹が~! すいたよ~」

 この金髪の少女は冒険していくつれ、どんどんわがままな少女になっていた。
 あのビッチな白ギャルっぽい可愛い少女はどこいったんだ?
 そして、リオラは子供のように俺の背中を叩く。

「ねぇねぇアル君!! お腹がすいたの!!」

「何かそこに売ってるだろ」

「お金ないもん」

「クエストの報酬もらっただろ」

「女の子には色々とお金かかるんだよっ」

 リオラは手を腰に当てて、頬を膨らませながら、そうきっぱりと言った。

「マシュを見習えよ!! あいつは何もお金をかけずにあの美貌を保っているだぞ? 見てみろ!」

 俺は立ち上がり、テーブルを回って、マシュの頬をつんつんとする。

「ほら? 弾力のある肌……この透明感すごいぞ……!!」

「本当だ!! どうしてこんなに綺麗なの!」

 リオラの碧眼が輝く。
 すると、アイリスが人差し指を立てて、説明する。

「それは毎朝、マシュさんはランニングをしているのですよ……身体中に汗をかいて、汚い老廃物を落としているんです」

 マシュが顔を赤らめ、そわそわしている。

「やめてよ!! アイリス!!」

 朝何にやら出掛けているなぁと思ったがそんな事していたのか。
 俺は笑い声を漏らす。

「ぷっ……マシュ……俺らを誘えよ。寂しいじゃないか?」

「ただ……私は一人で走って精神を集中したかっただけよ」 

「そんな張り詰めんなよ」

「うるさいわね……さっきから人の肩とか触らないでよ」

「分かった分かった」

 リオラはテーブルに両手を伸ばし、目をぱっちりさせる。

「何でランニングしようと思ったのっ?」

「それはね……この辺りで新しい通路ができたの……ほらデイトナ王国へ行こうって話してたじゃない? たぶんこの通路から行けるの……みんなが危険にならないように調べるとかじゃないからね……ただ様子を見ただけよ」

「マシュってなんて仲間思いなのっ!!!?」

 突然目を輝かせるリオラ。
 アイリスも興奮したように頷く。

「そうです……本当に」

 マシュは照れているのかそっぽを向き、エルフの尖った両耳が飛び出している。

「だから……そうじゃなくて」

 マシュもどうやら冒険を経るにつれて、心情が変わってきたようだった。
 すると、カバーニが黙って俺達に声も掛けず、出て行った。
 俺は呼び止めたが、反応はない。

「なぁ? カバーニの奴喧嘩はいつものようによくするけど、最近あいつ変じゃないか?」

「確かに最近、食事に来ないし、クエストも不参加だし……どこかに行ってるんじゃないの?」

「なんか心配になってきたな……ちょっと見てくる」

「分かったわ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

転生してもオタクはなおりません。

しゃもん
恋愛
 活字中毒者である山田花子は不幸なことに前世とは違いあまり裕福ではない母子家庭の子供に生まれた。お陰で前世とは違い本は彼女の家庭では贅沢品でありとてもホイホイと買えるようなものではなかった。とは言え、読みたいものは読みたいのだ。なんとか前世の知識を魔法に使って少ないお金を浮かしては本を買っていたがそれでも限界があった。溢れるほどの本に囲まれたい。そんな願望を抱いている時に、信じられないことに彼女の母が死んだと知らせが入り、いきなり自分の前に大金持ちの異母兄と実父が現れた。これ幸いに彼等に本が溢れていそうな学校に入れてもらうことになったのだがそこからが大変だった。モブな花子が自分の願望を叶えて、無事幸せを握り締めるまでの物語です。

異世界のんびり放浪記

立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。 冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。 よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。 小説家になろうにも投稿しています。

異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?! はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?! 火・金・日、投稿予定 投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...