時空魔術操縦士の冒険記

一色

文字の大きさ
143 / 175
2章ダンジョンへ向かおう

戦火の王都

しおりを挟む
 その頃、王城内では混乱の嵐だった。
 即座に騎士らが外へ出たり入ったりし、鎧を身に付けた金髪の初老の男が後ろに騎士を率いて、外へ出ようとしている所だった。
 彫りの深い顔立ちと茶色の伸びた顎髭、睫毛や目や口が大きい。
 金眼で前方を睨むのが第十八代デイトナ王国皇帝デイトナ王。
 十魔王族の一人。

「即座にシャルマン……グリフォンズ……ウルフマン……ウルボロスの十強神団《アルカディアス》を召集するのだ」

「はっ!!」

「被害状況は……」

 密林付近の門番小屋は壊滅。
 一番街の建築物や神社や寺の全て壊滅。
 四番街ではデイトナ会館、民家も壊滅。
 二番街、三番街にも迫る勢いです。

「会館にはゴットハンターがいるはずだ……」

「数名は何とか戦ってますが……相手が覇鬼《バーサーカー》ですから……犠牲者は多数です」

「覇鬼《バーサーカー》だと!! 下層のゴットハンターの連中では勝てる訳がなかろう」

「はい……」

「至急中層に増援を派遣しろ……」

「はいっ!!」

「まずい……」

 デイトナの眼下に見えてくるのは炎の海、まさに真っ赤に燃え広がる地獄だ。
 空中では無数のドラゴンが飛び交い、火を噴き出し、家々を破壊していく。
 それに対抗する百機程の白騎士が槍や盾を軽快に動かしながら、攻撃を最小限に止めようとする。
 炎が次々に矢のように降り注ぎ、地上からの巨大な赤ゴブリンが目玉をギョロギョロさせ、棒を振り回して、絶叫する国民を殴り倒していく。
 なんと醜き怪物だろうか。
 バタッバタッバタッと一瞬で倒れていく人々。
 その巨大な怪物の軍団は雪崩のように街中に流れ込み、やがて、地面には突き刺さった剣や血に染まった亡骸や、白騎士がボコボコにされて地面にねじ込まれた光景を目にする。
 更に奥の黒焦げになった大地には数体の生首や手足が埋められ、見るに耐えない状況である。
 そして、王城はあっという間にドラゴンの火によって一瞬で消された。
 デイトナは目を剥き出しにして固まり、あまりの一瞬に声すら上げられない。
 力の無きものは我々だ痛感せざる負えない。
 絶句。
 あまりの光景に思考も停止した。
 そして、デイトナは騎士に促されて安全な地下へと移る。


            *


 一方、デイドナ会館は建物の原形は留めておらず、瓦礫《がれき》だらけ、その周辺の民家も粉々に潰されていた。
 黒煙が霧状に広がる中に数体の覇鬼《バーサーカー》は赤い目玉を光らせ、嗤い、金棒を一振りさせ、黒煙を追いやる。
 土色をしたヒューマンのような巨人と逃げ惑う人々。
 その中、逃げ遅れた子供がいた。
 兄弟は眠そうに目を擦り、今何が起きているのか気づいていない。
 しかし、一瞬で悟った。
 恐ろしい怪物を見て。
 兄弟の顔が歪む、泣き喚めく妹。
 兄は目を見開いて、頭を抱え、気づくと兄妹は数体の覇鬼に囲まれた。

 兄は「え……え……え……え……え……え……」と何回も繰り返す。

 覇鬼は泣き喚く妹に苛立ちを覚えたのが、妹の頭部を右手で掴み、潰した。
 巨大な手は小さな子供の頭を潰した。
 ぐしゃぐしゃと何回も手の中で練り潰し、数体の覇鬼は握り潰す音が面白かったのか大嗤い。

「アッアッアッアッアッアッアッ」

 とても恐ろしい光景。
 巨大な手にはピチャピチャと血が垂れる。
 兄は一点に視線を留めたまま固まった。
 もう逃げる気は無かった。
 だって逃げても無駄だから。
 本能で殺される事が分かったから。
 兄はなぜだか大嗤い。
 覇鬼は兄の嗤い声に苛立ちを覚え、次の瞬間、兄は金棒で撲殺され、何度も何度も金棒で殴られた。
 相当嗤い声がうるさかったのだろう。


             *
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

異世界のんびり放浪記

立花アルト
ファンタジー
異世界に転移した少女リノは森でサバイバルしながら素材を集め、商人オルソンと出会って街アイゼルトヘ到着。 冒険者ギルドで登録と新人訓練を受け、採取や戦闘、魔法の基礎を学びながら生活準備を整え、街で道具を買い揃えつつ、次の冒険へ向けて動き始めた--。 よくある異世界転移?です。のんびり進む予定です。 小説家になろうにも投稿しています。

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

転生してもオタクはなおりません。

しゃもん
恋愛
 活字中毒者である山田花子は不幸なことに前世とは違いあまり裕福ではない母子家庭の子供に生まれた。お陰で前世とは違い本は彼女の家庭では贅沢品でありとてもホイホイと買えるようなものではなかった。とは言え、読みたいものは読みたいのだ。なんとか前世の知識を魔法に使って少ないお金を浮かしては本を買っていたがそれでも限界があった。溢れるほどの本に囲まれたい。そんな願望を抱いている時に、信じられないことに彼女の母が死んだと知らせが入り、いきなり自分の前に大金持ちの異母兄と実父が現れた。これ幸いに彼等に本が溢れていそうな学校に入れてもらうことになったのだがそこからが大変だった。モブな花子が自分の願望を叶えて、無事幸せを握り締めるまでの物語です。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?! はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?! 火・金・日、投稿予定 投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...