時空魔術操縦士の冒険記

一色

文字の大きさ
144 / 175
2章ダンジョンへ向かおう

再来の覇鬼

しおりを挟む
 その衝撃的な場面に銀翼の装甲、紅の装甲、蒼い魔術の装甲が現れた。三機だった。
 ギロリと見る覇鬼ら。

「何これ……」

「と……とにかく他の人達を避難させろ」

「なんやこれは……」

 そして灰色の銃撃装甲と白銀の女神装甲は会館の宿泊者やルーキーゴットハンターらを地下へと誘導する。
 更に灰色の量産型魔戦が数機、青い色の量産型魔戦が数機、白騎士が二機も出現し、奥からは数十機の砲弾戦車《バルハラ》が待機。
 その間にもドラゴンが空中から火を噴き、家々を破壊していく。
 一部機体は大規模なシールドを展開し、攻撃を受け止める。
 だが、これで何度目か分からない。
 いずれはこのシールドも限界くるとは皆は認識していた。
 だが、しかしそれよりも非常に厄介な敵が前方にはいる。


 上層の異世界神。
 600階層以上に生息するレベル600。
 SSSクラスの異世界神。
 マスタークラスのゴットハンターでも倒す事は難しい。
 最強の魔神。
 出会えば死を意味する覇の鬼がいるのだ。
 皆恐怖と絶望を感じていた。
 勝てるはずがない。
 一体ならまだしも数体。

「放てぇぇぇぇ!!!!」

 若い騎士が高い声で叫ぶ。
 数十機の砲弾戦車《バルハラ》の銃口から弾丸が勢い良く発射され、長い孤を描き、空中を突き破る。
 どんどん伸びる弾丸の行き先は覇鬼《バーサーカー》、巨人の頭部に命中し、爆発して、黒煙が発生する。

「放てぇぇぇぇぇ!!!!」

 次々に放たれる弾丸は空中を斬り、巨人の頭部に命中し、同様に黒煙が舞い、よろける覇鬼。
 やったか。
 皆に歓声が上がる。
 しかし。

「アアアアアアアアアアア!!!!!!」

 地獄のような叫び声で皆の表情は奈落の底へ突き落とされた。
 黒煙は消え去り、微かに首を動かす覇鬼。
 ギョロギョロとどれを食おうか品定めしている赤い両眼。
 続々と数機の魔戦は地面に尻餅をつき、崩れ落ち、恐怖で身体が震え、何も出来なくなった。
 悲痛な叫び声を上げて逃げ出す魔戦もいた。
 デイトナ王国最強と言われる白騎士でも歯をガタガタ震わせ、手足も止まっていた。
 戦う事の拒絶だ。拒絶。拒否。
 小さい頃から覇鬼《バーサーカー》とは戦ってはならないという教えが脳や身体に染み付いているのだ。
 戦うのを止めろ。拒絶しろ。即座に逃げろと。
 覇鬼は高い跳躍力で砲弾戦車《バルハラ》の元へ、金棒を振り回して、粉々に破壊する。一掃した。
 破壊とはこういうものだと俺達に見せつけるかのように、次々に覇鬼は跳躍して、数機の灰色の魔戦や青の魔戦を潰していく。一掃した。
 ただ、固まって、殺されるのを待つ魔戦。
 一瞬だった。血飛沫が飛びその都度悲鳴が響く。

「アァ!! アァ!! アァ!! アァ!!」

「やめ……」

「えっ……」

「死……っ」

「あああ……げぇっばばなっ」

 狂ったように金棒を魔戦にぶち込み、両足でズドズドズドズドと潰していき、更に真上へ勢い良く跳ぶ、両足で着地し、魔戦を潰す。
 ボコボコになった魔戦はガシャガシャと粉々に、操縦士と共に。
 それを何回も繰り返し、まさに楽しむかのように。
 鼻息で音を取りながら、潰し、次第にぐちゃぐちゃと気持ち悪い音に変わっていく。
 それが永遠に続くような気がした。
 俺達は黙って見てるしかなかった。

 ズドン。

 ズドン。
 
 ズドン。

 ズドン。
 
 すると一人の男の子が鼻水を垂らしながら、巨人の前に来てしまい、慌てて元来た道に戻るが。
 巨人は嗤う。
 刹那。
 金棒を横に一振りし、子供は消え、血になった。
 呻き声すらない、ただの血が残った。
 何だこれは。
 何だ。
 何だ。
 何だ。
 すると、紅の装甲が横を通り過ぎる。

「アル……お前が行かんのなら……ワイが行くで」

「やめろ……」

 お前じゃあいつには勝てない。やめろ。やめろ。
 レッドアルバローザは大剣を突き出して、急接近し、覇鬼の頭部に横一閃に振る。
 覇鬼は金棒で受け止め、弾く。
 レッドアルバローザは隙を窺い、急接近し、懐へ、心臓に突き刺す。
 覇鬼の心臓をぐにゃと刺し、貫通する。
 覇鬼はレッドアルバローザの快速に驚きの表情。
 カバーニは歓喜する。

「どやぁぁぁぁ!!!」

 その覇鬼は刺されて、固まる、死んだ。
 しかし、レッドアルバローザの真上から金棒が落ちてきた。
 もう一体の覇鬼だった。
 一気にレッドアルバローザは地面にねじ込まれ、砂塵が舞い散る。
 再度覇鬼は跳躍して、着地し、潰す。

「うぁ!!」

 さらに跳躍して、着地し、潰す。

「おぇっ!! ぅぅ!!!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ
ファンタジー
 主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?  管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…  不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。   曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!  ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。  初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)  ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル 異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった 孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。 5レベルになったら世界が変わりました

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身、動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物や魔法、獣人等が当たり前に存在する異世界に転移させられる。 彼が送るのは、時に命がけの戦いもあり、時に仲間との穏やかな日常もある、そんな『冒険者』ならではのスローライフ。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練とは如何なるものか。 ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

処理中です...