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2章ダンジョンへ向かおう
国王総選挙
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ナスカ王国評議会の間。
広大なホールの真ん中には巨大な楕円形のテーブルが設置され、それを囲むのはたくさんの椅子。
その椅子は壁際近くまで何列にも並べられ、次第に豪奢な装いの男らが座席へと座る。
仮面を被った者や貴賓のある顔立ちの者が大半、魔獣族の者もちらほら。
真ん中の壁には評議会の文字、テーブルに座る一人の銀髪の老人が手を上げる。
長髪で目尻に皺が伸び、古びた丸眼鏡のレンズにはひび。
それはどこかだらしなさが見える。
顔立ちは普通の老人と比べたら若々しさを感じる。
低音の声を発する。
「デイトナ王国はエキドナ、シリウスらの手によって襲撃され壊滅した。多くの国民の犠牲者を出してしまった。更に国王と十魔王族であるデイトナ王の命までも奪った。絶対にあってはならない出来事だ」
他の仮面の男が問い掛ける。
「そして、その犯罪者達はどうしたのですかな?」
「シャルマンと一部ゴットハンターらによって倒された。そして地獄界へ送り込んだ」
「なら一安心ですな」
すると、赤髪の四角い顔の大柄な男が会話に入る。
低く野太い声。
「待て? その事件はジャックザ・リッパーの仕業ではないか?」
広間はざわめき立つ。
銀髪の老人は焦ったように目を逸らし、言葉を繋ぎ、語気を荒げる。
「何を根拠言う? この事件は終わったのだ!!」
「ジャックが動き始めたら、中層の我々も動かなくてはいけない」
「黙れぇぇぇぇぇ!!!! ジャックはこの世にはいないはずだ!!!! 五年前に殺したはずだ!!」
「シャルマン団長や一部のゴットハンターの証言では一戦交えたらしいが?」
次第に広間のどよめきが大きくなり、椅子から立ち上がる者や恐怖で震える者が続出。
「それは嘘……だ」
「近々のララナ村焼き討ち事件でもジャックの目撃が多数」
「今は下層の安定を取り戻す事が先だ!! 根も葉もない発言は差し控えなさい!!」
「まあ良い」
赤髪の男は小さく笑った後、口を閉じた。
銀髪の老人は咳を鳴らして、騒ぎを沈める。
「ナスカ王国にデイトナ王国の国民や経済や地位を委託する事が決定した。再度確認する。異論はないな?」
皆手を上げ、拍手が沸き起こる。
「だが問題がある。ナスカ王国には王が不在だ。ナスカ王国国王には下層のリーダーとして責任がある。さらに十魔王国として重大な責任がある。慎重に選ばなければならないというのは言うまでもない。よってナスカ王国国王総選挙を実施する」
また仮面の男が問い掛ける。
「候補者は?」
「決まっておる。ヘルニア国王を父に持ち……上位貴族という……華々しい家柄のエドワード伯爵……」
「お待ちください。エドワード伯爵は次期ヘルニア王後継者ではありませんか? もしヘルニア王国とナスカ王国を二カ国所有するのは如何なものかと?」
「もしナスカ国王になればヘルニア国王を放棄すると言っておる。誓約書も書かせた」
「なら良いです」
「次にシャルマンギルド団長のシャルマン。皆も知っている通り下層十強神団で実権を握っていた若き天賦の才能を持つ男だ。この男ならば十強神団と十魔王国の仲介となる事ができる」
広間にどよめきが起きる。
ついに来たか。
あの若さで十魔王族になると言うのか。
まああいつならば任せられるか。
と感嘆の声が聞こえる。
しかし、一部からは。
「あの男が十強神団と十魔王国の権力を持つのは危険過ぎる。何を考えているか分からない男ですぞ!!!!」
「そうだ!!!! そうだ!!!!」
「確かにエキドナやシリウスを倒したとなると、我々中層の脅威となる。辞退させろ!!!!」
そして、銀髪の男は声を荒げる。
「静粛にぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
あまりの迫力とオーラに押し黙る皆、沈静化する。
「ん……続ける。次にグリフォンズギルド団長クリフォンズ……アマゾネスギルド団長ワロタ・イザベラ……スカーレット王の娘スカーレット・リオラ……では次に総選挙方法を説明する」
広大なホールの真ん中には巨大な楕円形のテーブルが設置され、それを囲むのはたくさんの椅子。
その椅子は壁際近くまで何列にも並べられ、次第に豪奢な装いの男らが座席へと座る。
仮面を被った者や貴賓のある顔立ちの者が大半、魔獣族の者もちらほら。
真ん中の壁には評議会の文字、テーブルに座る一人の銀髪の老人が手を上げる。
長髪で目尻に皺が伸び、古びた丸眼鏡のレンズにはひび。
それはどこかだらしなさが見える。
顔立ちは普通の老人と比べたら若々しさを感じる。
低音の声を発する。
「デイトナ王国はエキドナ、シリウスらの手によって襲撃され壊滅した。多くの国民の犠牲者を出してしまった。更に国王と十魔王族であるデイトナ王の命までも奪った。絶対にあってはならない出来事だ」
他の仮面の男が問い掛ける。
「そして、その犯罪者達はどうしたのですかな?」
「シャルマンと一部ゴットハンターらによって倒された。そして地獄界へ送り込んだ」
「なら一安心ですな」
すると、赤髪の四角い顔の大柄な男が会話に入る。
低く野太い声。
「待て? その事件はジャックザ・リッパーの仕業ではないか?」
広間はざわめき立つ。
銀髪の老人は焦ったように目を逸らし、言葉を繋ぎ、語気を荒げる。
「何を根拠言う? この事件は終わったのだ!!」
「ジャックが動き始めたら、中層の我々も動かなくてはいけない」
「黙れぇぇぇぇぇ!!!! ジャックはこの世にはいないはずだ!!!! 五年前に殺したはずだ!!」
「シャルマン団長や一部のゴットハンターの証言では一戦交えたらしいが?」
次第に広間のどよめきが大きくなり、椅子から立ち上がる者や恐怖で震える者が続出。
「それは嘘……だ」
「近々のララナ村焼き討ち事件でもジャックの目撃が多数」
「今は下層の安定を取り戻す事が先だ!! 根も葉もない発言は差し控えなさい!!」
「まあ良い」
赤髪の男は小さく笑った後、口を閉じた。
銀髪の老人は咳を鳴らして、騒ぎを沈める。
「ナスカ王国にデイトナ王国の国民や経済や地位を委託する事が決定した。再度確認する。異論はないな?」
皆手を上げ、拍手が沸き起こる。
「だが問題がある。ナスカ王国には王が不在だ。ナスカ王国国王には下層のリーダーとして責任がある。さらに十魔王国として重大な責任がある。慎重に選ばなければならないというのは言うまでもない。よってナスカ王国国王総選挙を実施する」
また仮面の男が問い掛ける。
「候補者は?」
「決まっておる。ヘルニア国王を父に持ち……上位貴族という……華々しい家柄のエドワード伯爵……」
「お待ちください。エドワード伯爵は次期ヘルニア王後継者ではありませんか? もしヘルニア王国とナスカ王国を二カ国所有するのは如何なものかと?」
「もしナスカ国王になればヘルニア国王を放棄すると言っておる。誓約書も書かせた」
「なら良いです」
「次にシャルマンギルド団長のシャルマン。皆も知っている通り下層十強神団で実権を握っていた若き天賦の才能を持つ男だ。この男ならば十強神団と十魔王国の仲介となる事ができる」
広間にどよめきが起きる。
ついに来たか。
あの若さで十魔王族になると言うのか。
まああいつならば任せられるか。
と感嘆の声が聞こえる。
しかし、一部からは。
「あの男が十強神団と十魔王国の権力を持つのは危険過ぎる。何を考えているか分からない男ですぞ!!!!」
「そうだ!!!! そうだ!!!!」
「確かにエキドナやシリウスを倒したとなると、我々中層の脅威となる。辞退させろ!!!!」
そして、銀髪の男は声を荒げる。
「静粛にぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」
あまりの迫力とオーラに押し黙る皆、沈静化する。
「ん……続ける。次にグリフォンズギルド団長クリフォンズ……アマゾネスギルド団長ワロタ・イザベラ……スカーレット王の娘スカーレット・リオラ……では次に総選挙方法を説明する」
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