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1章魔獣になりましょう
23話洞窟の巣穴
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どういうことやと言ってるんや!」
「そうだな……共食いの犯人はわしだ」
黒野獣は眼圧の目尻に皺を寄せ、不気味な笑みをこぼし、玄奘に一歩襲いかかろうとするのを撤回し、右へ方向展開し、後退る怯えたゴブリン姉妹に重量感溢れるスピードで刃を向けた。
抵抗しようと彼女らは斧を振り上げるも、既に幾重にもある血に塗られた銀色の刃が喉元へと入り込み、あっと息も間もなく切り裂かれ、血飛沫と共に、バタッバタッと二体の小動物は放り出された。
あまりの一瞬の出来事に硬直するアタマカラと玄奘。
この刹那、敵だと認識し、玄奘は有らん限り絶叫で、片手の刃を一直線に反撃を仕掛ける。
すかさず、黒野獣は回転をしながら、攻撃を五枚刃で受け止め、押し込み、流れるようにして連続攻撃を繰り出す。
一挙手一投足に、スピードと出鱈目な軌道で玄奘は前へ前へと追い込まれていき、壁を背にし、スペースがなくなった隙に、右斜めの刃の軌道が喉を切り裂き、横へ吹き飛ばされた。
当然の戦闘の結末だった。
黒野獣はおそらくミノルよりも、戦闘経験では劣るものの、攻撃力に関しては上回る。
一撃一撃が速く、重い。
そのような怪物に資源獲得を糧にして生きる河魚族が勝てるはずがない。
まして、反撃する間もなく、早々に決着がつくのは明らか。
そして、痛みで苦しむ獣の絶叫が洞窟内に響き渡る。静寂へと変わり、顔半分が血に染まったその獣は右手を差し出し、アタマカラに逃げろと告げる。
逃げろという言葉は彼にとって、とても重く、辛い過去を思い出すものだ。
それでも彼は何度もその言葉を続ける。
アタマカラはこの現状にどうして良いか分からず立ち尽くす。
しかし、黒野獣の狂気に満ちた両眼が見据え、吐く白い息と共に唸り声を発っし、襲いかかろうとしている。
瀕死なはずなのにどこからそんな声が出るのだと呼ぶべき渾身の逃げろの絶叫がアタマカラの鼓膜を貫く。
アタマカラは我に返り、恐怖の表情と嗚咽する状態でこの場からいち早く立ち去る。
アタマカラは後ろから恐怖の声に怯えながら、逃げた。
泣きながら逃げた。
それしかなかった。
仲間を見捨てて、自分だけ生き残る道を選んだ。
いや、自分が選んだのではない。
初めてできた仲間が救ってくれ、生へと導いてくれた。
ゆえにこの命を投げ出していい訳がないのだ。
だからこそ全力でこの場から仲間を見捨てて逃げ出すんだ。
何ひとつ間違ってはいない。
なのに、どうして罪悪感が生まれる。
どうして過去の人生が走馬灯のように脳内を流れ、自身を苦しめる。
何度も間違っていないと主張してるのに、なぜ黒いざわめきが何度も首を絞めてくるんだ。
では、仮にここで助けに行った所で、自身に何が出来るのか。
こんな無力な自身に仲間を助けるかっこいい英雄になれるはずがない。
今までの人生いつだってそうだろう。
逃げて、逃げて、逃げての人生の連続じゃないか。
ここから新たに変わり、人生をやり直す成り上がりの主人公なんている訳がないんだ。
その時、空を見上げると白い雪の結晶が落ちてきた。
洞窟の天井に穴が空き、濃い闇から雪がぽつりぽつりと落ちてくる。
気がつくと、地面にぼろぼろで、土で汚くなっているが、あの俳優募集のビラ紙がそこにあった。
結局自身は雲になれなかった劇のことを思い出す。
屈辱な思いが再び蘇る。
アタマカラは両拳を握り締め、大声で泣き叫んだ。
「ああああああああ」
そして、決めた。
このダンジョンで雲に絶対になることに決めた。
まだ、あの劇の続きは終わってない。
この雲の出番はまだだ。
だからこれから雲として、本番から逃げる訳にはいかない。
そして、あわよくば雲が主役になってやる。
英雄が主役なんて、ありきたりの設定だ。代役の雲が主人公の英雄を蹴散らして、あの悪役のボス猿を倒す設定面白いじゃないか。
我ながら劇作家のセンスもあるらしい、将来は……いや、それは置いておくとして……。
「行くしかないだろ」
「そうだな……共食いの犯人はわしだ」
黒野獣は眼圧の目尻に皺を寄せ、不気味な笑みをこぼし、玄奘に一歩襲いかかろうとするのを撤回し、右へ方向展開し、後退る怯えたゴブリン姉妹に重量感溢れるスピードで刃を向けた。
抵抗しようと彼女らは斧を振り上げるも、既に幾重にもある血に塗られた銀色の刃が喉元へと入り込み、あっと息も間もなく切り裂かれ、血飛沫と共に、バタッバタッと二体の小動物は放り出された。
あまりの一瞬の出来事に硬直するアタマカラと玄奘。
この刹那、敵だと認識し、玄奘は有らん限り絶叫で、片手の刃を一直線に反撃を仕掛ける。
すかさず、黒野獣は回転をしながら、攻撃を五枚刃で受け止め、押し込み、流れるようにして連続攻撃を繰り出す。
一挙手一投足に、スピードと出鱈目な軌道で玄奘は前へ前へと追い込まれていき、壁を背にし、スペースがなくなった隙に、右斜めの刃の軌道が喉を切り裂き、横へ吹き飛ばされた。
当然の戦闘の結末だった。
黒野獣はおそらくミノルよりも、戦闘経験では劣るものの、攻撃力に関しては上回る。
一撃一撃が速く、重い。
そのような怪物に資源獲得を糧にして生きる河魚族が勝てるはずがない。
まして、反撃する間もなく、早々に決着がつくのは明らか。
そして、痛みで苦しむ獣の絶叫が洞窟内に響き渡る。静寂へと変わり、顔半分が血に染まったその獣は右手を差し出し、アタマカラに逃げろと告げる。
逃げろという言葉は彼にとって、とても重く、辛い過去を思い出すものだ。
それでも彼は何度もその言葉を続ける。
アタマカラはこの現状にどうして良いか分からず立ち尽くす。
しかし、黒野獣の狂気に満ちた両眼が見据え、吐く白い息と共に唸り声を発っし、襲いかかろうとしている。
瀕死なはずなのにどこからそんな声が出るのだと呼ぶべき渾身の逃げろの絶叫がアタマカラの鼓膜を貫く。
アタマカラは我に返り、恐怖の表情と嗚咽する状態でこの場からいち早く立ち去る。
アタマカラは後ろから恐怖の声に怯えながら、逃げた。
泣きながら逃げた。
それしかなかった。
仲間を見捨てて、自分だけ生き残る道を選んだ。
いや、自分が選んだのではない。
初めてできた仲間が救ってくれ、生へと導いてくれた。
ゆえにこの命を投げ出していい訳がないのだ。
だからこそ全力でこの場から仲間を見捨てて逃げ出すんだ。
何ひとつ間違ってはいない。
なのに、どうして罪悪感が生まれる。
どうして過去の人生が走馬灯のように脳内を流れ、自身を苦しめる。
何度も間違っていないと主張してるのに、なぜ黒いざわめきが何度も首を絞めてくるんだ。
では、仮にここで助けに行った所で、自身に何が出来るのか。
こんな無力な自身に仲間を助けるかっこいい英雄になれるはずがない。
今までの人生いつだってそうだろう。
逃げて、逃げて、逃げての人生の連続じゃないか。
ここから新たに変わり、人生をやり直す成り上がりの主人公なんている訳がないんだ。
その時、空を見上げると白い雪の結晶が落ちてきた。
洞窟の天井に穴が空き、濃い闇から雪がぽつりぽつりと落ちてくる。
気がつくと、地面にぼろぼろで、土で汚くなっているが、あの俳優募集のビラ紙がそこにあった。
結局自身は雲になれなかった劇のことを思い出す。
屈辱な思いが再び蘇る。
アタマカラは両拳を握り締め、大声で泣き叫んだ。
「ああああああああ」
そして、決めた。
このダンジョンで雲に絶対になることに決めた。
まだ、あの劇の続きは終わってない。
この雲の出番はまだだ。
だからこれから雲として、本番から逃げる訳にはいかない。
そして、あわよくば雲が主役になってやる。
英雄が主役なんて、ありきたりの設定だ。代役の雲が主人公の英雄を蹴散らして、あの悪役のボス猿を倒す設定面白いじゃないか。
我ながら劇作家のセンスもあるらしい、将来は……いや、それは置いておくとして……。
「行くしかないだろ」
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