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1章魔獣になりましょう

106話龍の英雄

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 ハイデンベルクはそう悲しげに告げる。
 アタマカラは目頭に涙を溜め、自身の無力さを痛感する。
 けれど、今まで必死になって、頑張ってきた。
 初めて出来た友達を助けようとしたけど、それが結局出来なくて……。
 だから、せめて友達の願いを果たそうとした。結果は果たせなかった。 
 それだけではない、呪われた運命のシエラさえも助けることも出来なかった。
 何かもが駄目だった。

「じゃ……俺にどうしろって言うんだよ!」

「逃げるな。何度でも立ち向かえ」

「だから、立ち向かったざまが……この結果なんだよ」

 アタマカラはもがき苦しみ、やがて、どうでもいいと告げた。
 ハイデンベルクは左目は無い、右目は眼圧で睨みつけるという恐ろしい怒った龍の形相は変わらない。
 やがて、アタマカラは涙を流し、声を荒げ訴える。

「助けたかった、無理だったんだ」

 ハイデンベルクは少し笑って、小さく頷いた。

「自然は怠惰だが、時に恐ろしい力を発揮する。その奇跡の力は人間、魔獣、神といえども逆らうことは出来ない。まだ、お前はその力を発揮していない。今は辛いだろうが、自身の定められた運命から逃げるな」

 その時、暗黒の空に一筋の光が射し、眩い光をアタマカラの全身が浴びた。
 綺麗な光のかけらがアタマカラのもくもくとした皮膚から舞っている。
 やがて、元の姿に戻ったハイデンベルクは、アタマカラに近寄り、優しく語り掛ける。
 
「自分を否定し、自分を蔑むな、自分をくだらない奴と思うな。お前には秘めたる素晴らしい力あるんだ。それは皆が持っている」


 



 
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