107 / 177
1章魔獣になりましょう
107話別れ
しおりを挟む
夜が明け、まだ太陽が顔を出すか出さないかの頃合い。
谷底の早朝の気温は異常に寒い。
もくもくとしたアタマカラの皮膚でさえも、この寒さは凌げなかった。
震える体を小さくし、暖かい焚き火へといち早く当たる。
すると、リュックを背負い、闇色の凶悪な龍の防具をした、銀髪の顔の良い男が肉の千切れを食べながら、こちらにやってくる。
左目の眼帯は鎖で押さえつけられていた。
昨日、あのような力を発揮し、その影響が出ているようだ。
当たり前と言えば当たり前だろう。
宇宙級スキルなのだから、それなりの代償あるのだろう。
「何んだじろじろ見て」
「いや……行くのか?」
「そうだな。狩らなければならない魔獣がいる」
ハイデンベルクの右目瞼は三重にも、四重にもなり、黒目は闘志に満ち溢れていた。
アタマカラは出来るだけ、その殺気を無視するように疑問を漏らす。
「なんかさ、やっぱり自然力って釈然としないんだが、」
ハイデンベルクは顔を綻ばせ、腹を抱えて笑う。
顔に似合わず、子供のように笑うものだから、アタマカラも呆れるしかない。
昨日殺そうとした相手に屈託の無い笑顔を向けられるものだ。
「何がおかしい?」
「ああ、悪い。悪い。そもそも、自然力なんてもんは存在しない」
あまりのハイデンベルクの調子の良さにアタマカラはムッと苛立ちを露わにする。
「なんだそれ。じゃあ、あの漲るような光はなんなんだよ」
「さあな。お前は自信を無くしたままだった、立ち上がれない程に、そして、自信を取り戻しパワーを回復しただけさ」
「……」
呆れるアタマカラだったが、何か清々しさを感じた。
確かに、以前の自分は過去を捨てようと、自分を変えようと、必死になっていた。
だが、戦う度に、自らの無力さを感じ、自信を無くしていた。
自分は何も出来ない自分だと。
話を遮るようにハイデンベルクは咳を鳴らし、前へ向き、手を少し上げた。
「この先で、クリムトが待っているから、もう行くわ」
「ああ、さよなら」
「ああ、さよなら」
アタマカラは何か込み上げる思いもあったが、ぐっとこらえ、最後に付け加えた。
「あの……あ……い、いつか会いましょう」
それはハイデンベルクに対する感謝や憧れも込められていた。
あんな格好良い冒険者になりたいと憧れを抱くアタマカラ。
ハイデンベルクは一度立ち止まり、振り向いて、微笑をした。
そして、顔を出す太陽を背景に、流れる銀髪の男は去って行った。
*
谷底の早朝の気温は異常に寒い。
もくもくとしたアタマカラの皮膚でさえも、この寒さは凌げなかった。
震える体を小さくし、暖かい焚き火へといち早く当たる。
すると、リュックを背負い、闇色の凶悪な龍の防具をした、銀髪の顔の良い男が肉の千切れを食べながら、こちらにやってくる。
左目の眼帯は鎖で押さえつけられていた。
昨日、あのような力を発揮し、その影響が出ているようだ。
当たり前と言えば当たり前だろう。
宇宙級スキルなのだから、それなりの代償あるのだろう。
「何んだじろじろ見て」
「いや……行くのか?」
「そうだな。狩らなければならない魔獣がいる」
ハイデンベルクの右目瞼は三重にも、四重にもなり、黒目は闘志に満ち溢れていた。
アタマカラは出来るだけ、その殺気を無視するように疑問を漏らす。
「なんかさ、やっぱり自然力って釈然としないんだが、」
ハイデンベルクは顔を綻ばせ、腹を抱えて笑う。
顔に似合わず、子供のように笑うものだから、アタマカラも呆れるしかない。
昨日殺そうとした相手に屈託の無い笑顔を向けられるものだ。
「何がおかしい?」
「ああ、悪い。悪い。そもそも、自然力なんてもんは存在しない」
あまりのハイデンベルクの調子の良さにアタマカラはムッと苛立ちを露わにする。
「なんだそれ。じゃあ、あの漲るような光はなんなんだよ」
「さあな。お前は自信を無くしたままだった、立ち上がれない程に、そして、自信を取り戻しパワーを回復しただけさ」
「……」
呆れるアタマカラだったが、何か清々しさを感じた。
確かに、以前の自分は過去を捨てようと、自分を変えようと、必死になっていた。
だが、戦う度に、自らの無力さを感じ、自信を無くしていた。
自分は何も出来ない自分だと。
話を遮るようにハイデンベルクは咳を鳴らし、前へ向き、手を少し上げた。
「この先で、クリムトが待っているから、もう行くわ」
「ああ、さよなら」
「ああ、さよなら」
アタマカラは何か込み上げる思いもあったが、ぐっとこらえ、最後に付け加えた。
「あの……あ……い、いつか会いましょう」
それはハイデンベルクに対する感謝や憧れも込められていた。
あんな格好良い冒険者になりたいと憧れを抱くアタマカラ。
ハイデンベルクは一度立ち止まり、振り向いて、微笑をした。
そして、顔を出す太陽を背景に、流れる銀髪の男は去って行った。
*
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生者は冒険者となって教会と国に復讐する!
克全
ファンタジー
東洋医学従事者でアマチュア作家でもあった男が異世界に転生した。リアムと名付けられた赤子は、生まれて直ぐに極貧の両親に捨てられてしまう。捨てられたのはメタトロン教の孤児院だったが、この世界の教会孤児院は神官達が劣情のはけ口にしていた。神官達に襲われるのを嫌ったリアムは、3歳にして孤児院を脱走して大魔境に逃げ込んだ。前世の知識と創造力を駆使したリアムは、スライムを従魔とした。スライムを知識と創造力、魔力を総動員して最強魔獣に育てたリアムは、前世での唯一の後悔、子供を作ろうと10歳にして魔境を出て冒険者ギルドを訪ねた。
アルファポリスオンリー
戦国転生・内政英雄譚 ― 豊臣秀長の息子として天下を創る
丸三(まるぞう)
ファンタジー
戦国時代に転生した先は、豊臣秀吉の弟にして名宰相――豊臣秀長の息子だった。
現代では中世近世史を研究する大学講師。
史実では、秀長は早逝し、豊臣政権は崩壊、徳川の時代と鎖国が訪れる。
ならば変える。
剣でも戦でもない。
政治と制度、国家設計によって。
秀長を生かし、秀吉を支え、徳川の台頭を防ぎ、
戦国の終わりを「戦勝」ではなく「国家の完成」にする。
これは、武将ではなく制度設計者として天下を取る男の物語。
戦国転生×内政改革×豊臣政権完成譚。
(2月15日記)
連載をより良い形で続けるため、更新頻度を週5回とさせていただきます。
一話ごとの完成度を高めてお届けしますので、今後ともよろしくお願いいたします。
(当面、月、水、金、土、日の更新)
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる