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1章魔獣になりましょう
107話別れ
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夜が明け、まだ太陽が顔を出すか出さないかの頃合い。
谷底の早朝の気温は異常に寒い。
もくもくとしたアタマカラの皮膚でさえも、この寒さは凌げなかった。
震える体を小さくし、暖かい焚き火へといち早く当たる。
すると、リュックを背負い、闇色の凶悪な龍の防具をした、銀髪の顔の良い男が肉の千切れを食べながら、こちらにやってくる。
左目の眼帯は鎖で押さえつけられていた。
昨日、あのような力を発揮し、その影響が出ているようだ。
当たり前と言えば当たり前だろう。
宇宙級スキルなのだから、それなりの代償あるのだろう。
「何んだじろじろ見て」
「いや……行くのか?」
「そうだな。狩らなければならない魔獣がいる」
ハイデンベルクの右目瞼は三重にも、四重にもなり、黒目は闘志に満ち溢れていた。
アタマカラは出来るだけ、その殺気を無視するように疑問を漏らす。
「なんかさ、やっぱり自然力って釈然としないんだが、」
ハイデンベルクは顔を綻ばせ、腹を抱えて笑う。
顔に似合わず、子供のように笑うものだから、アタマカラも呆れるしかない。
昨日殺そうとした相手に屈託の無い笑顔を向けられるものだ。
「何がおかしい?」
「ああ、悪い。悪い。そもそも、自然力なんてもんは存在しない」
あまりのハイデンベルクの調子の良さにアタマカラはムッと苛立ちを露わにする。
「なんだそれ。じゃあ、あの漲るような光はなんなんだよ」
「さあな。お前は自信を無くしたままだった、立ち上がれない程に、そして、自信を取り戻しパワーを回復しただけさ」
「……」
呆れるアタマカラだったが、何か清々しさを感じた。
確かに、以前の自分は過去を捨てようと、自分を変えようと、必死になっていた。
だが、戦う度に、自らの無力さを感じ、自信を無くしていた。
自分は何も出来ない自分だと。
話を遮るようにハイデンベルクは咳を鳴らし、前へ向き、手を少し上げた。
「この先で、クリムトが待っているから、もう行くわ」
「ああ、さよなら」
「ああ、さよなら」
アタマカラは何か込み上げる思いもあったが、ぐっとこらえ、最後に付け加えた。
「あの……あ……い、いつか会いましょう」
それはハイデンベルクに対する感謝や憧れも込められていた。
あんな格好良い冒険者になりたいと憧れを抱くアタマカラ。
ハイデンベルクは一度立ち止まり、振り向いて、微笑をした。
そして、顔を出す太陽を背景に、流れる銀髪の男は去って行った。
*
谷底の早朝の気温は異常に寒い。
もくもくとしたアタマカラの皮膚でさえも、この寒さは凌げなかった。
震える体を小さくし、暖かい焚き火へといち早く当たる。
すると、リュックを背負い、闇色の凶悪な龍の防具をした、銀髪の顔の良い男が肉の千切れを食べながら、こちらにやってくる。
左目の眼帯は鎖で押さえつけられていた。
昨日、あのような力を発揮し、その影響が出ているようだ。
当たり前と言えば当たり前だろう。
宇宙級スキルなのだから、それなりの代償あるのだろう。
「何んだじろじろ見て」
「いや……行くのか?」
「そうだな。狩らなければならない魔獣がいる」
ハイデンベルクの右目瞼は三重にも、四重にもなり、黒目は闘志に満ち溢れていた。
アタマカラは出来るだけ、その殺気を無視するように疑問を漏らす。
「なんかさ、やっぱり自然力って釈然としないんだが、」
ハイデンベルクは顔を綻ばせ、腹を抱えて笑う。
顔に似合わず、子供のように笑うものだから、アタマカラも呆れるしかない。
昨日殺そうとした相手に屈託の無い笑顔を向けられるものだ。
「何がおかしい?」
「ああ、悪い。悪い。そもそも、自然力なんてもんは存在しない」
あまりのハイデンベルクの調子の良さにアタマカラはムッと苛立ちを露わにする。
「なんだそれ。じゃあ、あの漲るような光はなんなんだよ」
「さあな。お前は自信を無くしたままだった、立ち上がれない程に、そして、自信を取り戻しパワーを回復しただけさ」
「……」
呆れるアタマカラだったが、何か清々しさを感じた。
確かに、以前の自分は過去を捨てようと、自分を変えようと、必死になっていた。
だが、戦う度に、自らの無力さを感じ、自信を無くしていた。
自分は何も出来ない自分だと。
話を遮るようにハイデンベルクは咳を鳴らし、前へ向き、手を少し上げた。
「この先で、クリムトが待っているから、もう行くわ」
「ああ、さよなら」
「ああ、さよなら」
アタマカラは何か込み上げる思いもあったが、ぐっとこらえ、最後に付け加えた。
「あの……あ……い、いつか会いましょう」
それはハイデンベルクに対する感謝や憧れも込められていた。
あんな格好良い冒険者になりたいと憧れを抱くアタマカラ。
ハイデンベルクは一度立ち止まり、振り向いて、微笑をした。
そして、顔を出す太陽を背景に、流れる銀髪の男は去って行った。
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