転生したらダンジョン雲になった訳

1章魔獣になりましょう

Sの領域

　一方、森林の奥地で、悪魔鬼はアタマカラに必殺の攻撃を食らい、丸焦げになり、以前の原型を成してはいない。
　既に息絶えたと思ったが、驚異の生命力で息を吹き返した。
　あの雲人間に対する憎悪が復活を与えた。
　赤い右目と黒い顔と右半身は何とか残すことができ、まだ戦闘の希みはある。
　悪魔鬼は声をうまく出すことは出来ないが、不敵な笑みをし、最後の闇の魔力を発揮し、見る見るうちに全身が復活を遂げ、体長6メートルあろうか巨大な闇の鬼と化した。
　顔には赤い両眼しか無い、異様な怪物。
　明らかに魔獣の一段階を上を行った。

【大獣化《たいじゅうか》】

　魔獣の巨大化に伴い、全てのステータスをMAXまで上げる。
　いわば、1000の領域に達する。
　また、Sの領域とも言われるが、知る者はほとんどいない。
　
　大獣化した悪魔鬼は歓喜のノイズを発揮しようとも思ったが、目の前にいる小さな一人の男に目を奪われた。
　銀髪の、無精髭、まさに西洋人の顔をした、男前な男だ。
　左目の辺りに眼帯、右手には緑色のツルが巻きついた剣を持ち、身体から禍々しい闇を発していた。
　左手で、顔を隠すと、龍の黒い頭部分が形成される。
　黒い、恐怖の龍の頭、騎士の美しさを醸し出す、闇色の防具。
　闇の龍騎士。
　すぐに悪魔鬼は危険だと判断した。
　悪魔鬼は右手から強烈な闇の閃光を龍騎士に放つも、一振りで追い返された。
　悪魔鬼が目を見開き、硬直する。
　次は龍騎士が不敵に嗤う。

「貴様……鬼の子を知ってるか？」

「ギヤァァァァァ」

「フフフ……まあ良い……見せてやるか……Sの領域を」

　次の瞬間、龍騎士は瞬く間に、５メートルあろうか、巨大な龍騎士に変貌を遂げる。

【大防具化《たいか》】

　防具をマックスにさせ、1000の領域に到達させる。
　このS領域に到達させる、人間は世界でも数える程度しかいない。
　この力は世界を滅ぼすことができる、国家は秘匿している。
　
　そして、龍騎士は怪物とは思えない驚異の速度で、悪魔鬼の目の前に立ち、闇の一線を与える。
　悪魔鬼は闇の飛沫と共に、前へと突っ伏した。
　龍騎士は鼻で嗤う。

「Sの領域の魔獣がこの程度とは失望したよ……」