転生したらダンジョン雲になった訳

一色

文字の大きさ
149 / 177
2章英雄と龍魔王

騎士

しおりを挟む
 その入口で待っていたのは一般的な銀色の防具を装備した二人組の騎士。
 肩にはグラード王国の騎士を示す五角形の葉っぱの紋章がしつらえている。
 既に先に到着していたフレッドはその騎士達と何やら交渉をしているようだ。

「凶悪なドラゴンの魔獣がここで発生したため、急遽ここは封鎖をさせております」

「少しでいいんで、通らしてくれよ」

「これは七英雄団が取り決めた規則なのです」

「そんなこと言われても、せっかく冒険者雇って来たんです。なんとかならない? ねぇ騎士さん達? 少しくらいいいでしょ?」

 相変わらず態度は悪いというか、おちゃらけた性格なのか分からないが、自分の主張を通そうとする。
 困惑しながら、要求を拒否する優しい騎士。

「規則ですから」

「はぁ……本当参るね……これだから騎士は……どうせ商人を下に見てるんでしょ?」
 
「いえ、そういう訳では……」

 フレッドは口を尖らし、嫌みを吐き、足で地を鳴らしている。
 エスカレートする前に制止しといた方が良いだろう。

「フレッド、もういいじゃないか?」

「何だよ。せっかくこっちは嫌々来て、汗水垂らしてここまで来たのに、追い返されるだって? 無駄じゃないか」

「仕方ないだろ。強力が魔獣が彷徨っているんだから」

「はぁ。あんたさ……冒険者の癖に魔獣を怖がっているのかい? 情けないね~」

「何だと」

 フレッドのあまりの勝手な発言にアタマカラは苛立ち、白い両眼が目を剥く。

「何だい?」

「いい加減に」

 すると、優しい騎士が仲裁に入る。

「まあまあ、喧嘩なさらずに……あれあの方は……」

 ふと、優しい騎士が視線を向けたのは馬車に寄りかかりながら、悲しい紅の両眼で空を見つめていた美女。
 整った横顔は世の男ならずっと魅とれてしまう。

「七英雄団の第四英雄のサー・イリス様……同行者にイリス様が……?」

「ええ、そうです」

「あいつがいるからいいだろ?」

「なんだその言い方」

 アタマカラは蔑んだような言い方のフレッドに再度怒りが露わになる。
 そんなの無視するようにフレッドは自らの商いができるように押し通そうとする。
 優しい騎士は口に手を抑え、一考した後。

「なら……大丈夫かな」

 だが、突然、聞こえてきた高圧的な声で、進行の望みは経たれる。

「駄目だと言っただろ!」
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

いいえ、望んでいません

わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」 結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。 だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。 なぜなら彼女は―――

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

《完結》当て馬悪役令息のツッコミ属性が強すぎて、物語の仕事を全くしないんですが?!

犬丸大福
ファンタジー
ユーディリア・エアトルは母親からの折檻を受け、そのまま意識を失った。 そして夢をみた。 日本で暮らし、平々凡々な日々の中、友人が命を捧げるんじゃないかと思うほどハマっている漫画の推しの顔。 その顔を見て目が覚めた。 なんと自分はこのまま行けば破滅まっしぐらな友人の最推し、当て馬悪役令息であるエミリオ・エアトルの双子の妹ユーディリア・エアトルである事に気がついたのだった。 数ある作品の中から、読んでいただきありがとうございます。 幼少期、最初はツラい状況が続きます。 作者都合のゆるふわご都合設定です。 日曜日以外、1日1話更新目指してます。 エール、お気に入り登録、いいね、コメント、しおり、とても励みになります。 お楽しみ頂けたら幸いです。 *************** 2024年6月25日 お気に入り登録100人達成 ありがとうございます! 100人になるまで見捨てずに居て下さった99人の皆様にも感謝を!! 2024年9月9日  お気に入り登録200人達成 感謝感謝でございます! 200人になるまで見捨てずに居て下さった皆様にもこれからも見守っていただける物語を!! 2025年1月6日  お気に入り登録300人達成 感涙に咽び泣いております! ここまで見捨てずに読んで下さった皆様、頑張って書ききる所存でございます!これからもどうぞよろしくお願いいたします! 2025年3月17日 お気に入り登録400人達成 驚愕し若干焦っております! こんなにも多くの方に呼んでいただけるとか、本当に感謝感謝でございます。こんなにも長くなった物語でも、ここまで見捨てずに居てくださる皆様、ありがとうございます!! 2025年6月10日 お気に入り登録500人達成 ひょえぇぇ?! なんですと?!完結してからも登録してくださる方が?!ありがとうございます、ありがとうございます!! こんなに多くの方にお読み頂けて幸せでございます。 どうしよう、欲が出て来た? …ショートショートとか書いてみようかな? 2025年7月8日 お気に入り登録600人達成?! うそぉん?! 欲が…欲が…ック!……うん。減った…皆様ごめんなさい、欲は出しちゃいけないらしい… 2025年9月21日 お気に入り登録700人達成?! どうしよう、どうしよう、何をどう感謝してお返ししたら良いのだろう…

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

処理中です...