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2章英雄と龍魔王

騎士

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 その入口で待っていたのは一般的な銀色の防具を装備した二人組の騎士。
 肩にはグラード王国の騎士を示す五角形の葉っぱの紋章がしつらえている。
 既に先に到着していたフレッドはその騎士達と何やら交渉をしているようだ。

「凶悪なドラゴンの魔獣がここで発生したため、急遽ここは封鎖をさせております」

「少しでいいんで、通らしてくれよ」

「これは七英雄団が取り決めた規則なのです」

「そんなこと言われても、せっかく冒険者雇って来たんです。なんとかならない? ねぇ騎士さん達? 少しくらいいいでしょ?」

 相変わらず態度は悪いというか、おちゃらけた性格なのか分からないが、自分の主張を通そうとする。
 困惑しながら、要求を拒否する優しい騎士。

「規則ですから」

「はぁ……本当参るね……これだから騎士は……どうせ商人を下に見てるんでしょ?」
 
「いえ、そういう訳では……」

 フレッドは口を尖らし、嫌みを吐き、足で地を鳴らしている。
 エスカレートする前に制止しといた方が良いだろう。

「フレッド、もういいじゃないか?」

「何だよ。せっかくこっちは嫌々来て、汗水垂らしてここまで来たのに、追い返されるだって? 無駄じゃないか」

「仕方ないだろ。強力が魔獣が彷徨っているんだから」

「はぁ。あんたさ……冒険者の癖に魔獣を怖がっているのかい? 情けないね~」

「何だと」

 フレッドのあまりの勝手な発言にアタマカラは苛立ち、白い両眼が目を剥く。

「何だい?」

「いい加減に」

 すると、優しい騎士が仲裁に入る。

「まあまあ、喧嘩なさらずに……あれあの方は……」

 ふと、優しい騎士が視線を向けたのは馬車に寄りかかりながら、悲しい紅の両眼で空を見つめていた美女。
 整った横顔は世の男ならずっと魅とれてしまう。

「七英雄団の第四英雄のサー・イリス様……同行者にイリス様が……?」

「ええ、そうです」

「あいつがいるからいいだろ?」

「なんだその言い方」

 アタマカラは蔑んだような言い方のフレッドに再度怒りが露わになる。
 そんなの無視するようにフレッドは自らの商いができるように押し通そうとする。
 優しい騎士は口に手を抑え、一考した後。

「なら……大丈夫かな」

 だが、突然、聞こえてきた高圧的な声で、進行の望みは経たれる。

「駄目だと言っただろ!」
 
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