転生したらダンジョン雲になった訳

2章英雄と龍魔王

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　ルークはニヤリとした笑みが漏れる。
　きっと、そのアタマカラの無様な姿を見て、イリスは落胆しているに違いない。
　そして、男として、女にこの姿を見せることは、恥ずかしい屈辱を味わうことになる。
　一方、そんな男のプライドを知らないイリスは剣を抜き、戦闘態勢に移る。

「行く」

「ハハハハ……本当に情けない奴だね。アタマカラってさ期待して損したよ」

「少し黙ってて」

　馬車の上で、鼻をほじりながら、横になったフレッドが心にも無い言葉を走らせる。
　イリスは震えながら、その言動に苛立ちを露わにし、圧力を掛ける。
　だが、フレッドは挑発の笑いをし圧力を打ち消し、話を続ける。

「相手は最上級の称号である王国の英雄……しかも、レベル700で、六英雄。一方、こっちは最下級の称号の駆け出し冒険者、しかも、レベル０。勝てる訳ないよね～」

「……」
　
　イリスは雑音にしか聞こえないので、返すこと無く無視。
　ルークはアタマカラに対してのあまりの言われっぷりに腹を抱えて笑う。

「フハハハハハハハ」

　その瞬間、堪忍袋の緒が切れたのは、アタマカラではなく、イリスだった。
　イリスの体内から発生する見えない高周波の地震が起き、馬車が騒ぎ出し、地面は揺れ、地割れを生じさせる。
　紅の両眼は極限まで、細め、強烈な磁場の干渉が起きる。
　影響はルークが激しい頭痛で頭を抱え、膝を付け、フレッドに至っては気絶した。
　一方、意図的に干渉外の適用を行ったのか、アタマカラは無事。
　ルークは怯えるような顔で、絶句する。
　イリスは次の動作で、ルークを本気で殺す気らしい。
　呼び掛けにも応じないということは、我を忘れているのか。
　透明なカーテンのような地場が微かに流れている気がする。
　磁場は信じられない程、異常をきたし、空飛ぶ鳥が落ちたり、雲が停止をしている。
　このままではイリスが危ないと感じたアタマカラは彼女の名前を呼び、無意識の強烈な殺気を起こす。

「イリス！！！！」