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第一章:焔に刻まれた予言
第十五話:深淵より伸びる手
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濃密な夜の闇が、森全体を呑み込んでいた。木々は風もなく微動だにせず、吐息すら凍らせる静寂が支配する。
その中を、エルディアとリセルは肩を並べて進んでいた。落ち葉を踏む音だけが、耳に届く。だがそれはすぐに、どこか遠くから響く微かな水音にかき消された。
「……川?」リセルが囁く。
「いや、違う。これは……血の匂いだ。」エルディアの声は鋭く、警戒心を帯びていた。
月明かりが薄く差し込む開けた場所に、彼らは足を踏み入れる。そこには、小さな泉があった。だが水面は紅に染まり、異様な臭気を放っていた。その中心で、黒衣の影が膝をつき、何かを水底から引き上げようとしている。
影が振り返る。兜の奥から覗く瞳は、氷のように冷たく、確かな殺意を宿していた。
「……来たか、エルディア。」
声は低く、しかし確かに聞き覚えがあった。死んだはずの――あの男だ。
「お前は……!」エルディアの言葉が途切れるよりも早く、黒衣の男は動いた。
泉から引き上げられたのは、古びた棺。棺の蓋は半分ほど外れ、中から蒼白な手がゆっくりと伸びる。細く、骨ばったその手は、生者のものではなかった。
「契約は果たされた。あとは……お前たちを捧げるだけだ。」
男の足元から、闇が液体のように広がり、地面を這い、エルディアたちの足首に絡みつく。
リセルが剣を抜き、闇を断とうとするが、刃は空を切り裂くだけで実体を捉えない。
棺の中から、呻き声のような低い唸りが響き渡った。それは人の声でありながら、何層もの音が混じり合い、聞く者の意識を削り取る。
リセルの膝が揺らぎ、地面に片手をつく。
「……くそっ、頭が……!」
エルディアは奥歯を噛み締め、自らの意識が削られていく感覚に抗う。彼は腰の短剣を抜き、棺へと一気に駆けた。
しかし、棺から伸びた手が、信じられぬ速さでエルディアの首を掴む。冷たい。皮膚を通して骨まで凍り付くような感触。
視界が暗転し、最後に見たのは黒衣の男の歪んだ笑みだった。
「ようやく、扉が開く――」
次の瞬間、泉全体が漆黒の渦に飲み込まれ、エルディアとリセルの姿は、森の闇に溶けて消えた。
その中を、エルディアとリセルは肩を並べて進んでいた。落ち葉を踏む音だけが、耳に届く。だがそれはすぐに、どこか遠くから響く微かな水音にかき消された。
「……川?」リセルが囁く。
「いや、違う。これは……血の匂いだ。」エルディアの声は鋭く、警戒心を帯びていた。
月明かりが薄く差し込む開けた場所に、彼らは足を踏み入れる。そこには、小さな泉があった。だが水面は紅に染まり、異様な臭気を放っていた。その中心で、黒衣の影が膝をつき、何かを水底から引き上げようとしている。
影が振り返る。兜の奥から覗く瞳は、氷のように冷たく、確かな殺意を宿していた。
「……来たか、エルディア。」
声は低く、しかし確かに聞き覚えがあった。死んだはずの――あの男だ。
「お前は……!」エルディアの言葉が途切れるよりも早く、黒衣の男は動いた。
泉から引き上げられたのは、古びた棺。棺の蓋は半分ほど外れ、中から蒼白な手がゆっくりと伸びる。細く、骨ばったその手は、生者のものではなかった。
「契約は果たされた。あとは……お前たちを捧げるだけだ。」
男の足元から、闇が液体のように広がり、地面を這い、エルディアたちの足首に絡みつく。
リセルが剣を抜き、闇を断とうとするが、刃は空を切り裂くだけで実体を捉えない。
棺の中から、呻き声のような低い唸りが響き渡った。それは人の声でありながら、何層もの音が混じり合い、聞く者の意識を削り取る。
リセルの膝が揺らぎ、地面に片手をつく。
「……くそっ、頭が……!」
エルディアは奥歯を噛み締め、自らの意識が削られていく感覚に抗う。彼は腰の短剣を抜き、棺へと一気に駆けた。
しかし、棺から伸びた手が、信じられぬ速さでエルディアの首を掴む。冷たい。皮膚を通して骨まで凍り付くような感触。
視界が暗転し、最後に見たのは黒衣の男の歪んだ笑みだった。
「ようやく、扉が開く――」
次の瞬間、泉全体が漆黒の渦に飲み込まれ、エルディアとリセルの姿は、森の闇に溶けて消えた。
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