高火力に転生したけど、コントロールがダメでした

カズキ響ゼツ

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高火力に転生したけど、コントロールがダメでした 2話

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 魔猪の出没から三日経った晴れの日の昼間。
 僕はトマスおじさんの畑の柵を直していた。
「ふぅ……これでよしっと!」
 魔猪の被害は、家屋が壊された人もいたが、畑の作物が踏みつぶされた人もいた。
 それでも怪我人や死人が出なかった分、まだましな被害だと思う。
 僕が自分で燃やしてしまったらしい両手は、どうやら自分で治療させたらしい。
 らしいというのも、魔法を使った自覚が僕にまるでなかったのだ。
 でも、現場の状況的にやっぱり魔猪を丸焦げにしたのは自分しかいないらしく……
 だからこそ、僕はトマスおじさんの畑を燃やしてしまった賠償として、柵を直しているのだ。
「魔法で畑も元に戻せたら良かったんだけどなぁ……」
 僕はひとりごつ。
 先日のあれは火事場の馬鹿力だったんだろうか?
 父さんや村のみんなも、おおむねそんな感じで納得してるみたいで。
 僕が飛んでもない力を発揮したことより、魔猪の被害が小さかったことの方が重大みたいだった。
「こら! ハレル! サボってないでこっちを手伝え!」
「あ、はいっ、今行きますッ!」
 僕はトマスおじさんに叱咤されつつ、畑仕事の手伝いを続けた。
 ……魔猪を退治したのは僕なんだし、もうちょっと感謝してくれたっていいのに。
 そう思うんだけど、口に出すことはできなかった。



 その夜の事だ。
 トマスおじさんにこき使われ、ヘトヘトになって家に帰ったところ来訪客がいた。
 はじめは魔猪出没に関して調査に来たギルドの人かと思った。
 けれど、魔法師を示す三角帽子をかぶった姿から、ギルドの人ではないと解る。
「ハレル、ちょうど良かった。
 お前にお客さんだ」
「こんばんは、初めまして。
 私は魔法学院のピリポと申します」
 お客人は僕に向かって、その頭を下げる。
 薄い色の金髪を長く伸ばした人で、体形のわかりにくい貫頭衣を来ているので男か女かわからない。
 僕は悪いことをしたわけじゃないのにドキまぎした。
「は、はい。はじめまして、僕がハレルです」
「あなたに質問があります。
 先日、この村に出没した魔猪をあなたが倒したというのは本当ですか?」
「……え、はい、多分そうです」
 僕は自信なく知りつぼみにそう答えた。
「多分? 魔猪を丸焦げにしたと聞いていますが、炎の魔法を使ったのではありませんか?」
 ピリポさんは怪訝そうに眉をしかめながら、訊いていた。
 僕はよくわからない申し訳なさからうつむいて答える。
「状況的に魔法で燃やしたんだと思います。
 けど、その時のことはあんまりはっきり覚えてなくって。
 魔猪に襲われて死んじゃう! って思ってたし……
 だけど、トマスおじさんの畑も黒コゲで僕の両手も炭になっちゃって」
 自分で言っててだんだん自信がなくなってくる。
「炭と化した手も魔法で直したのですか?」
「多分……」
 僕はうつむいたまま答えた。
「ハレル。あなたは今まで魔術を習ったことはあったのですか?」
「いや、こいつは生まれてこの方この村と街を行き来したことぐらいかない。
 街のギルドにも魔法師や魔法使いはいるだろうが、交流を持ったことはないハズだ」
 『多分』ばかりを繰り返す僕では話が進まないと思ったのか、父が変わって答えた。
「そうですか、正直に答えてくれてありがとうございます。ハレル」
「は、はぁ……」
 特に何もしていないのに礼を言われてしまい戸惑う。

「今日、私がこの村に来た目的をお話しします」

 ピリポさんは、キリっとしたまなざしでまっすぐ見つめると、話はじめた。
「私の目的はハレル、あなたを魔法学院に入れるために来ました」
「……は? それってつまり僕に魔法師になれってことですか?」
 ピリポさんの目的に少し僕は飛び上がって驚いた。
「まさか! こいつにそんな才能があるとはとうてい思えない!」
「驚かれるのは当然だと思います。
 ですが、彼が持つ魔力は本物です。
 正しく、力を律するためにも、学院に入っていただきます」
 入っていただく――とピリポさんは言い切った。
 僕の意思は関係なく、それは決定事項らしかった。
「い、いきなりですね?」
 柔和そうな外見のイメージとは逆で、結構強引なところがあるらしい彼(彼女?)に対し、僕はびくついた。
「我々、魔法学院は、魔法師を育てるだけじゃなく、間違った道に進まないよう指導する役目――
 世界に魔法が悪い影響を与えないようにする役目も負っています。
 あなたを学院に入れるのもその一環です。
 よく考えてください。
 あなたは魔猪を倒すという、村にとって益となることをしました。
 が、一方で自分の手を燃やし、他者の畑を燃やす害も行ったのです。
 あなたは自分の力を制御する術を覚えなければいけません」
 ピリポさんは変わらぬまっすぐなまなざしで僕にそう言った。



「今夜はもう遅いので、ひとまず私は帰ります。
 明日の朝、また参りますのでよろしくお願いします」
 そう言ってピリポさんは、家を去ってしまった。
 ……村に泊まれる施設はないけど、どこで寝るんだろう? と僕は心配になった。
 いや、魔法師なんだし、空をびゅーんて飛んで学院まで帰るんだろうか?
 そんなことを考えながら夕食に豆のスープを食べて、その日はさっさと床についた。
 ピリポさんが話すことがいまいち呑み込めなくて、僕たち家族もそのことについて話し合う余裕がなかったのだ。

 干し草を敷き詰めたベッドの上で寝ころびながら考える。
『僕が魔法師……魔法使いになる? そんなことが可能なんだ……』
 改めて考えると、胸がドキドキしてくる。
 これは不安というより……もちろん不安もなんだけど。
 期待による胸の高鳴りだ!

『もしかして、僕、すっごい才能あるんじゃないかな?!』

 だって、遠い王都の向こうにあるという魔法学院からスカウトが来たんだぞ?!
 そう考えると、とてもじゃないが眠っていられなかった。


 つづく 
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