高火力に転生したけど、コントロールがダメでした

カズキ響ゼツ

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高火力転生したけど、コントロールがダメでした 7話

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 彼女の背中を追いかけて走っていると、廊下を通り抜け学園を一望できるテラスらしき場所にたどり着いた。
 ルカはその隅っこ、手すりの傍で体育座りをして顔を伏せていた。

 僕は彼女との距離をどうとったものかわからないまま、おずおずと近づく。

「あ、あの……」
 なんて言おう? 何を言おう?
 こういう時、ラノベの主人公だったらどんな言葉を女の子にかける?
 僕は転生前に読んだラノベの数々を思い出して、何か彼女を笑顔にするようなセリフがないかと探すけど、
現実にそんな都合のいいものはなく、結局なにも言えなかった。

 しかし、かといって割り切って「そっとしておこう」という思い切りもなかったので、
仕方なく彼女から散歩ほど離れた場所に同じように体育座りをした。

 そらはまだ明るいけれど、あとは暗くなるいっぽうの午後の空。
 転生前の世界だったら、「放課後」と呼ばれる時間だった。
 当然のようにいわゆる「陰キャ」だった僕は、女の子と二人っきりですごく機会なんてなかったけれど。
 僕は今になって、転生前の世界でもっと経験を積んでおけば良かったと後悔した。

「私……あんたと同じじゃないわ?」

「えっと、何が?」

 沈黙に耐えかねていた僕を助けるかのように、彼女の方から――口は重々しくあったけど――話はじめてくれた。
「ピリポに魔法の力を見込まれてこの学園に来た。ってことに関してよ」
「……え? じゃあ、ルカはどうやってこの学院にやってこれたの?」
 僕は訊いていいのか迷ったが、彼女に訊ねた。

「さっきの奴らが言った通りよ。
 たまたま偶然、村を通りがかったピリポがいて、私の方が彼に頼み込んで学院につれてきてもらった」
「それは、魔法師になりたかったから……だよね?」
 “頼み込んで”という言い回しから、彼女が多分、必死になって頭を下げたんだろうと思い浮かべた。
 なぜって、なんか彼女の気配から追い詰められてる感じがしたからだ。
「魔法師に……そりゃなりたいわよ。
 それで、あの村から逃げられるならなんでもやるわ」
「き、君の生まれた村……って、そんなに良くないの?」
「悪いわ」
 彼女はきっぱりと答えた。
「あの村にはなにもない。
 あるのは瘦せこけた土地と飢えよ。
 あんたわかる? 産まれたばかりの赤ん坊をなんの躊躇もなく人買いに二束三文で売り払う隣人が当たり前の村なの。
 人買いに運ばれてく赤ん坊の泣き声を聞いたって「ああ、いつものことか」って流して気にも留めないの」
「それは……わからない」

 僕は彼女に責められてる気がして、申し訳なく思った。
 今更再確認だけど、僕の生まれは相当に幸福なものだったのだ。
 飢えもなく、貧しさもなく、十分な仕事と食料があって優しい両親だっていた。
 彼女にはきっとそのどれもがなかったのだろう。
 そんな希望のない日々の中、ピリポさんとの出会いというチャンスに彼女は飛びついたのだ。
 彼女自身に宿る魔力がいくら少なくても、だ。

 それで僕は、彼女の気配がどうにもピリピリしたものであることに納得した。
 僕みたいに呑気に明日を夢想しながら、魔法を学んでいる余裕なんてないんだろう。

「……さぁ、寮塔に戻るわよ。
 じきに見回りの先生がここにも来るわ」
「う、うん。案内お願いするね」
 ルカは泣いた跡を隠せない赤い目のまま、立ち上がって僕に向き合った。
 僕は、どうにもそれを見ないふりをして、頭をかく。
「こっちよ」
「うん……」
 彼女はさっと僕の横を通り抜けてから、躊躇う様に少し立ち止まる。
「あの……あいつらからかばってくれたことには、一応お礼を言っておくわ。
 ありがとう。
 でも、あんた明日にはきっと、学院長先生から呼び出しを受けるわよ? 
 学院内で私闘に魔法は使っちゃいけない決まりだもの」
「あ、やっぱり?」
 僕は彼女の言葉で、明日がほんのちょっぴり憂鬱になった。



 つづく
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