高火力に転生したけど、コントロールがダメでした

カズキ響ゼツ

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高火力に転生したけど、コントロールがダメでした 6話

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 僕は完成した黒々とした炭を竈から取り出し、モーセス先生にかかげて見せた。
「うむ、見事だ」
 先生は満足そうにうなづいて僕を褒めてくれた。
 
 その一方で――
「……」
 ルカは口を堅くつぐんだまま竈の中身を取り出して見せた。
 彼女の手の中に炭はなく、燃えかけの木と灰があった。
『火力不足? いや……火の大きさ自体が調整できてない?』
 僕は怪訝に思う。
 だって、僕の腕の魔力の流れを読んでアドバイスできたくらいだから、
彼女なら魔力の調節なんてきっと簡単にできるだろうと思ってたからだ。
『調子、悪かったとかかな?』
 僕はルカの横顔を盗み見ると、彼女は唇をかみしめていて瞳からは今にも涙が流れ落ちそうだった。
「ルカ、長時間の魔力放出をよく頑張ったね。
 君の魔力の少なさは使い方を工夫して補えばいいのだよ」
「……はい」
 ルカはモーセス先生の諭すような言葉にうつむいたままうなづいた。
 絞り出すような返事だった。

「さぁ、今日の授業はここまでだ。
 明日は他の皆といっしょに、授業を受けてもらうよ。
 片付けは儂がやっておくから二人とも、寮に帰りなさい」
「はい、モーセス先生、ありがとうございました!」
「……ありがとうございました」
 僕たちはモーセス先生に礼を言って頭を下げると、竈の部屋を後にした。



「……」
「……あのう」
 僕たちは竈の部屋を出た後、上へ下へ連なる階段を上ったり下りたりした。
 僕はというとおっかなびっくり、ずんずん歩くルカの後に続く。
「……あの~、ルカさん?」
「なんで、ついて来んのよ?」
 ルカは肩越しに僕へと振り返り、ギロリと睨む。
「へっ?! え、えっとですね……寮への帰り道がわからないんだ」
「……ちっ」
 彼女はまた露骨に舌打ちをした。
 好かれる要因も何一つないけれど、完全に嫌われていると思う。
「……こっちよ、ついてきなさい!」
「う、うん!」
 好かれてはいないけど、完全に無視するほど鬼ではないらしく、
不機嫌そうにルカは先導してくれる。
「……」
『うぅ……沈黙が痛い!』
 フツーだったら、中途入学同士「奇遇だね~」とか言ったりして親睦を深めたりするところだが、どうも彼女の態度からしてそんな雰囲気になれない。
『いやいや、人のせいにしてどうする!
 こういう時、自分から行くもんだろう?』
 と僕は、一年発起して彼女へ話しかけてみることにした。
「ねぇ、君も僕と同じで途中から入学だったんだよね?
 やっぱ、ピリポさんにスカウト……じゃない、見つけてもらって学院に誘われたの?」
「そうよ」
 ぶっきらぼうだが、質問に答える気はあるらしい。
 僕はちょっと嬉しくなった。
「そっか。
 僕は王都より西向こうの農村から来たんだ!
 君は?」
「……ずっと北の方。田舎よ」
 僕は会話を膨らませようとするけど、良い言い回しが思いつかない。
 そして、意味なくヘラヘラ笑いながら言葉をつなぐ。
「そっか、僕と同じだね」

「同じじゃないわよ」

 僕はその時、空間にピシリとヒビの入る音を確かに聞いた。
 どうやら僕は彼女の地雷を踏んでしまったらしい。
 ……どうしよう?
「あ、あのねっ、同じってのは、出身が似たようなものっていうか。
 ほら、特別冒険者の家系だとか貴族だとかそういうんじゃないって」

「あーっ、脳ナシルカが男つれて歩いてるぞー?」

 僕が長文で言い訳をしていると、金髪で巻髪のいかにもイジメっ子です~って感じの女の子が、ニヤニヤと嫌な薄ら笑いと浮かべた取り巻き二人とともに行くてを阻んできた。
「ほら、今日もトクベツ授業受けたんだろー?
 お前、ちゃんと課題できたのかー?
 言ってみろよー?」
 金髪のイジメっ子は、ニヤニヤしながらルンルン気分でルカの周りを跳ねまわる。
 その様は見てるだけでもう不愉快で、つい手をあげてしまいそうだった。
「うるさいわね、ほっといてよ」
 ルカはなるだけ相手にしないようにしているが、イジメっ子の言葉が堪えているのは後ろ姿からも明白だった。
 僕は、何か気の利いた言葉を言ってイジメっ子たちを追い払いたかったが、
何もできず、彼女の後姿を見守るばかり。
「ほっといて! だってよ?」
「性格悪いなー!
 中途入学の後輩を先輩が気にしてやってんだぞー?
 なんか言えよー田舎モン!」
 キャキャっとグレムリンよろしく取り巻き立ちがさえずる。
「い、田舎モンで悪いかよ!」
 僕は我慢できなくなって、つい口をはさんでしまった。
 イジメっ子たちの視線が一斉に僕へと向いて、僕はうろたえる。
「僕も彼女もピリポさんに魔法の力を見込まれてここにきたんだ。
 なんで君たちに馬鹿にされないといけないんだ!」
 僕はイジメっ子たちに隙を与えてはならいと、どうにか思ってることを口に出して言った。
 そしたら、イジメっ子たちは一瞬キョトンとしたが、すぐにいやらしい目つきになってニタリと笑ったのだ。
「バーカ、こいつはピリポの奴に頼み込んで無理くりここに来たんだよ!」
「そうさ! 対して魔力もないのに、ミブンぶそーおーなんだよ!」
「現実をわかってないから、アタシたしが教えてやってんだよ!」

 キャハハハハハ!!

 三人は癇にさわる声でけたたましく嗤う。
 僕は、自分が言われたわけじゃないど、本気で頭にきて、イジメっ子の髪の毛をひっつかんでやろうと手を伸ばす。
 すると、金髪はなんなく僕の手をかわす。
「ハハハハ! ばーか! それっ風よ!」
「うわっ?!」
 僕は突然吹いた強風に吹き飛ばされて尻もちをついた。
「ギャハハハ! ざまーみろ!
 悔しかったらお前もやってみろよ! ほらほら!」
「どーせ、お前も田舎モンだろ?
 できないって! ギャハハハハ!」
 グレムリンたちがけたたましく嗤う。
 僕は怒り心頭だった。
「このっ! 炎よッ!」
「ギャハハ……は?」
 リーダーの金髪は、僕の手から生み出された火球を見て笑いを止めた。
 それから、信じられないとばかりにあとずさる。

「なんだ、コイツ。魔力デケーぞ?!」
「し、私闘で魔法使うのいけないんだぞー?!」
「そーだ! そーだ!」
「お前たちだって、僕に魔法使っただろう?! お相子だッ!」
 僕は金髪たちが怯んだのに強気に出て、火球をずいと奴らに近づけた。
「ふ、ふんっ! 先生に言いつけてやるからなっ!」
 金髪はそう捨て台詞を吐いて逃げ出す。
 取り巻き二人も金髪に続いて逃げて行った。
「……ふぅ」
 僕は完全に金髪たちの足音がしなくなったのを確認して、腕に込めていた魔力を霧散させた。
「よしっ!」
 どうやら火のコントロールは大丈夫そうだ。
 これで、他の魔法も覚えていけばああいたイジメっ子にも対処できるだろう。
 そうやって僕はほっと胸をなでおろしていたが、ルカは黙ったままだった。
「……」
「……えっと、あのさ、ルカ……さん。
 あんなやつらが言ったことは気にしなくていいよ。
 だから、うーんと、その……ルカ?」
 僕はどうにか気の利いた言葉を絞り出そうとしていたが、
ルカの方がぶるぶる震えていることに今更気が付いた。

「……うぅっ」

 ルカは……泣いていた。
「あっ、ルカっ?!」
 ルカは突然そこから走り出してしまった。
 僕はその背中を慌てておいかけ走り出す。
 それはもちろん、帰り道がわからなかったのだってあるけれど、泣いている女の子を一人でほっぽり出すことなんて僕にはできなかったのだ。


 つづく
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