黄泉がえり陽炎姫は最恐魔王に溺愛される

彪雅にこ

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10.魔王は陽炎姫に酔う〈side ヨアン〉-②

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 最上階には小さな部屋があり、毎夜ヨアンはここで国を守る結界に力を注いでいた。
 正直、国の行く末などヨアンにはどうでもいいことだったが、フェリシアが暮らす国を守ると思えば、俄然やる気が湧く。そうして10年以上もの間、この日課を続けてきた。
 胸に抱くのは、いつでもフェリシアのこと。すべては、フェリシアを守るために。

 窓を開けると、すうっと夜の冷たい風が流れ込んでくる。遠くの空が一部分だけ少し明るい。王都の明りだ。過去の自分が捨てられ、捨てた場所。
 ヨアンは目を閉じて、国全体を覆う結界に意識を集中した。
 ひんやりとした夜の空気が身体を包み込み、魔力を研ぎ澄ましていくのを感じる。結界をより強固なものにするイメージを頭の中で描き、魔力を送り込む。

 魔力を消費すると、体力もかなり消耗する。日々の鍛錬で鍛え上げているため、この日課くらいは何ともないが、それでも疲れが蓄積すれば支障が出ることもある。だが、フェリシアが城に来て以来、そうした心配は皆無だった。フェリシアのお菓子と刺繍のおかげだろう。フェリシアは自分の魔力は微々たるものだと言うが、どうやらヨアンに対してフェリシアの癒やしの力は相当に相性が良いらしい。
(フェリシアはすべてにおいて女神だ。あんなに美しく愛おしく、心を温かく満たしてくれるというのに、そのうえ俺の身体も癒してくれるなんて。フェリシアのために、もっと強くなりたい。今日より明日、明日より明後日。フェリシアに害成すものすべてから守れる力を身につけるのだ)
 ヨアンはぎゅっと眉間に力を込めた。

 フェリシアは、どうやらヨアンが自分に恩義を感じているために自分のことを守ろうとしてくれていると思い込んでいるようだが、ヨアンがフェリシアに抱いている感情は、明らかに恋慕だ。
 フェリシアに救われた当初のそれは、ただ純粋な感謝と恩義だったように思う。まあ、今となればそれも怪しいところではあるが…。もしかしたら、彼女に救われたとわかった瞬間にはすでに、ヨアンは恋に落ちていたのかもしれない。
 ともかく、受けた恩を返したいという強い思いから、使い魔を通してフェリシアの成長を見守るうち、その感情は確固たる恋へ、そして愛へと変わっていった。フェリシアの清らかな心根と、何事に対しても真摯に向き合う姿勢、他者への優しさ。すべてが恋に落ちるには十分過ぎた。もちろん、見た目の完璧なまでの美しさは言葉にするまでもない。

 ヨアンがそんな自分の思いを確信したのは、フェリシアが甥アレクシスの婚約者になった時だ。
 当時フェリシアは8歳、ヨアンは15歳だった。自分より7歳も年下の少女にそんな感情を抱いていると気づいた時には、正直自分に嫌悪感を抱いたが、愛しく思う気持ちはどうにもならなかった。だが、フェリシアとアレクシスの婚約は決定事項。ヨアンは恋心を自覚すると同時に、その思いを封印しなければならなかった。
 それでも、もとよりフェリシアの前に再び姿を現そうとなど考えてもいなかったヨアンが取った行動は、変わらずフェリシアを見守り続けることだった。
 いついかなる時も、何があっても、命を賭してフェリシアを守ると誓い、実行してきた。

 だから一月前、フェリシアが隣国の好色伯爵に嫁がされると知った時は、冷静でなどいられなかった。それがフェリシアの幸せにつながるとは、到底思えなかったからだ。
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