カフェと古書店

315 サイコ

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 時刻は、夜8時を過ぎた。
 ◯◯◯書店古書店の閉店時間後、上星は他の書店員とバックヤードと売り場を、行ったり来たりと明日発売予定の新刊を平積みに並べ終えた所だった。
 
 駅前で少し裏路地に差し掛かる通り手前で駅を利用する学生や多くの文房具を取り扱っているからか、近くを通り道として使う小学生から高校生が、多く立ち寄ってくれている。
 古書店の方も、マニアックな本を目当てに訪れている。
 たまにこう言う本を取り扱ってないかと訪れる人もいるので、祖父の仕入れ知識を、もう少し勉強しないと…と思いつつ…
 上星の祖父は、古書店の蔵書を仕入れるために奮闘している。

 『後を継がないか?』と、祖父や叔父達に言われているが、こんな自分に務まるかと、疑問ばかりが積み重なり。
 まだ返事をしていない。

 はぁ……っと、上星は溜息を吐いた。
 
 「上星さん。どうしたんです? なんか元気ないような…具合でも、悪いんですか?」
 「えっ?」
 「確かに…ずっと、溜息吐いているね…」
 
 上星が、慌てて振り向くと同じ書店員の田辺と佐々口だった。
 田辺とは、略同期で3年前に少し年上の女性と籍だけ入れて2年前に生まれた愛娘が可愛くて仕方がないと、喜んでくれそうな絵本を手に取っては、プレゼントに良さそうと題名をメモしたり共働きの奥さんに毎日お弁当を作ったりとマメ人だ。
 子供好きで、土日の午前中におこなっている絵本の読み聞かせは、男性店員の中では田辺の人気が断トツだ。
 
 「今日は、娘さんのお迎え良いんですか?」
 「遅番の時はね。それに奥さんの勤め先は、ホワイトだから。基本的に定時上がりだし。それでも残務処理的な事をしてると、定時を過ぎちゃうらしい。だからお迎えは、2人の状況をみて半々かな?」
 「奥さん。バリキャリって感じですか?」

 普段からにっこり顔の田辺は、棚の本を並べ直しながらにっこりと笑った。

 「そんな感じの人です。疲れてるから。ゆっくりさせてあげたいし。娘ちゃんとの時間も持って欲しい」

 平積みの料理本を、手に取り自分で書いたポップをその隣に置いた。

 「お弁当は、手作りって聞いてましたけど…家事とかも?」
 「ご飯は、元々作るのが好きだったし掃除も嫌いじゃない。ただ…洗濯ものが、綺麗に干せなくて…そこは奥さんにしてもらってます…」
 「家事分担。今時は、そう言う感じなんですか?」
 「どうだろう? ボク達の場合は、それで成立しているけど…たまに奥さんの方が、稼いでいると男としてのプライドが…とかよく嫌味を言われるよ…」
 「モラってやつですね!」
 「でも、うちの場合は、ボクが家事をしてくれるから私は、外で働けるんだって、言ってもらえますから」
 「おぉ~~なんか、良い感じの関係!」 
 と、頷く佐々口は、女子大学生だ。
 バイトとして主に、講義を終えた午後を中心に働いているらしい。  
 上星に負けないぐらい読書好きで、卒論も人の読書についてやそれに費やす時間と、それに対して有意義だと思う人の心理? を題材に資料の作成中だとか、休憩が一緒になる時にパソコンで何かを書き上げているのを良く見掛ける。
 感じとしては、今時な女子で明るく接客向きな性格をしていると、他の書店員や常連さん達からの評判が良い。
 それもあり上星の祖父達が、正社員として別な店舗で雇用したいと何度か、詰めの話の場を設けているらしい。
 重労働ではあるが、本好きならこの話は、願ったり叶ったりだろう。
 
 「じゃなくて! 上星さんですよ! どうしたんですか? 他のスタッフさんも、皆心配してましたよ!」

 別にと、上星は視線を伏せた。
 得に気にした感覚は、なかったが、言動に出ていたのかと思うと気恥ずかしいらしい。
 昔から引っ込み思案で、クラスではその他大勢の中の1人と影薄くしていても、上星の容姿に目を引かれた女子は、よく声を掛けていた。
 うっとおしいとまでは、思わなかったが、当時も今も、1人にしておいての傾向が、やや強い分。
 カッコ良い男子や綺麗で可愛い女子達の会話は、苦痛だった。
 同じ年代で会話の内容も、分かるしどう答えれば良いかも頭では、分かっているはずが、上星はいつも無言か、本を読んでいて聞いてなかった風に装う事が多かった。
 傍目から見れば、上星の外見は物静かで、本をずっと読んでいる。
 でも、本を読むのに伏せられた横顔の線が何とも儚げで、人の目を引き付ける。
 その動きに溜息混じりの声が、いつくも漏れる程だ。
 一方で、そんな女子を見ながら。あんなヒョロヒョロの男のドコが良いんだ? と悪態を付く男子達も、からかい混じりに嘲笑しようとしたが、薄い地色のサラサラとした髪に静かな目元が、女子よりもドコか艶かしく見えてしまいどよめいて何も言えなくなってしまう。
 それに気付き上星が、顔を上げるとバツが悪そうに何とも言えない表情で、視線を外された。
 等の上星にとってその行為が、嫌われているのでは? と言うイメージを植え付ける事になる。

 「仕事の悩みではないように見えますけど…」 

 田辺が、平積みのままズレた本を綺麗に陳列しながら心配げな表情を上星にしてみせると、本人はいたたまれなくなったのか、シュンとした風に視線を落とした。

 「上星さん?」

 いつも冷静で、何か起こっても毅然として対応できる上星のこの動揺。
 同期で、同僚としての付き合いも長い田辺にとっても、意外な反応に一瞬、戸惑った。
 
 「2人して固まらないでくださいよ!」
 「…………」

 珍しく上星は、無言だった。

 「…取り敢えず。店は閉めたんですから。休憩しましょうよ。ね!」
 「そうだね!」

 2人が相次いで、ね! を連呼するものだから上星の表情は、和らいだ。

 「で、どうしたんですか?」
 「えっと…」

 本音を言って良いものか、上星は首を傾げる。

 佐賀野との関係を言って良いものか、年下としかも高校生と…
 部屋に連れ込んだつもりはないが、待っている状態だ。

 「……もしかして、恋愛的な?」

 ガバッと顔を上げ、何でと佐々口を見ると少し照れた風に視線そらす。

 「あっ…いえ…その…さっき上星さんが、首を傾げた瞬間にチラッと…その」
 
 と、例のキスマが付けられた方と同じ所を、自分の指で首元を差した。

 「昨日は、丸襟のトレーナーだったし…そう言う無かったなぁ…って…」
 
 その発言に驚いたのは、上星よりも田辺の方だ。

 「本当だ。よく見ると耳の下とかにも薄っすら跡付いてませんか?」
 
 それを聞き上星は、見ないで欲しいとその場にしゃがみ込み首全体を両手で抑えた。
 
 「いや…上星さん! そう言う変な意味じゃなくてですね!」
 「どう言う意味で?」

 田辺も上星自身も、自分で何を言っているのか、微妙な返しをするものだから佐々口は、吹き出した。
 
 「スミマセン。お2人の反応が、意外すぎて…でも、恋愛しててキスマは、無いとも言い切れないじゃないですか?」

 少し冷静になる田辺と、俯く上星は、シュンとしたまま僅かに顔を上げる。

 「上星さんが、誰かと付き合っているって話は、聞いたことないですけど、上星さんぐらいな人ならモテそうですもんね」
 「まぁ…女子が本を探して見つからないと、高確率で上星さん聞きに行くし…」
 「そんな事ないと思うよ…」
 「いやいや! 上星さんモテるから嫉妬されてるんじゃないんですか?」

 嫉妬と言う言葉に上星は、正面を向くように顔を上げた。

 「まさか…」
 
 その言葉に田辺と佐々口は、顔を見合わせるが、佐々口は「どう言う人なんですか?」と、興味津々だ。
 表情は変えてないが、田辺も興味はあるようで…「いつから?」と、聞き迫ってる。

 「あの…4ヶ月ぐらい前から…こう言う感じになったのは、2ヶ月ぐらいかな…」

 2人は、どよめいた。

 意外と言うよりも、誰も気が付かなかった事に驚いている状況だ。
 書店員の中には、噂好きのオバちゃんも居る。その人の耳にも入らないぐらいだと言うなら。
 会うも、連絡も、秘密裏にしていたと言う事になる。
 
 「相手とか、聞いちゃマズいですか?」

 上星が、あまりにも秘密にしたがるように見えてしまい聞かずに居られなかった。

 「この書店系列?」と、ハラハラした田辺が聞き寄ると上星は、フルフルと首を振る。

 「じゃ…お店以外の…人?」と、佐々口の尋問が始まる。

 別に何も、言いたくないのなら言わなければいいのに、上星はコクッと頷く。
 見た目物静か、真面目で寡黙そう。
 それが、上星の最初の印象で、誰もが1番に上星を語る上でまず口にする言葉だろう。
 一緒に働き始めても、恋愛や浮いた話は聞いたことがない。

 「まさか…ヤバいコと付き合ってるとか?」
 「いや…その付き合ってはまだなくて…」

 付き合ってないのに…
 首にキスマ? 田辺と佐々口は顔を見合わせた。
 見方によっては、付き合ってもないのに…そう言う事するのか? と疑問を投げかけたいが、上星の性格上そう言うのは、きちっとしてそうとは、思ったらしい。
 
 「因みに聞くけど…出会いはドコ?」
 
 真面目な顔で知りたい欲求をストレートに田辺が、聴き込む。

 「…向こうの一目惚れみたいな……でもその…凄くキレイなコで…」と、言いながらゴニョゴニョと言い淀み顔を赤くして見せるからか、また2人は戸惑った。
 勿論。キスマを付けられる相手の存在もそうだが、どうしてもそう言う行為をしている姿が、日頃の上星を知っている2人には想像できないと、半笑ってしまった。
 どうしても相手のペースに振り回されている姿が、リアル想像できしまう。
 そのリアルな想像の方は、あながち間違ってはいない。

 「あのさぁ…2人共ちょっといい?」
 「はい! 何でしょうか?」
 
 佐々口の口調から田辺は、同じ事を想像していたのかと、あたふたする佐々口を見て少し吹き出してしまいキッと睨まれてしまう。
 
 どうしようかと、2人を見守るも少し険悪気味にみえてしまい上星は、「あの!」と声を掛けたが…
 同時に

 ブーッ
 ブーッ
 ブーッ
 ブーッ

 「上星さんのスマホ鳴ってません?…」

 佐々口から指摘されたエプロンのポケットを見る。

 「ゴメン!」

 上星は、断わってからスマホを取り出すと、表情が明らかに変わった。
 ペコリと頭を下げながら奥に下がって電話をし始めた。
 
 『……えぇ? いやだから…はぁ! えっ…お弁当…チンジャオロース?………好きかって? 嫌いじゃ無いけど…って…ちょっと!!』と、ガチャと切られたらしい光景を気にしながら2人は、聞き耳を立てていた。
 
 「誰ですかね?」
 「あの焦りようは…カノジョとか?」
 
 2人が耳を澄ませてジッとしていると、そこに電話を切った上星が現れ妙な空気が流れ込んだ。

 「…聞いぃ…てた?」
 「あの…」
 「えっと…」

 スミマセンと2人はは、頭を下げると同時に上星に向き直す。

 上星も、また申し訳なさそうに頭を押さえるように頭を掻きながら電話の相手から付き合って欲しいと迫られていると2人に話してしまった。

 「年下の子ですか…」
 「もしかして年が離れてるとか?」
 「…んっ…うん…」

 重苦しいとまでは、いかないがこんな事を言ってどうするつもりかと上星は、俯いた。
 
 「もしかして…言い寄られて困ってるとか?」
 「…そこまでは、第一オレも向こうも…その事については、言わなかったし…」
 
 あぁ…と佐々口は、呟く。
 その一方で田辺は、焦ったような仕草を見せる上星に2人は、動揺することなく話し出した。

 「私の同級生にも、当時社会人の人と付き合ってた子が…何人か居ますよ…」
 「えぇ?!っ」
 「そんなに驚きます?」
 「だって…高校生でしょ?」
 「いや…まぁ…そうですけど…珍しい話しじゃないし…女子校だったからか、そう言う話題はかなりの頻度で聞かされましたよ。出会いは、こうだったとか…色々…」

 驚きと言うよりも、体調不良でも訴えるような顔の上星に田辺が、割って入る。
 
 「ボクに関してだと、16の夏休みの盆踊りで、年上のお姉さんをナンパして付き合うようになって、ボクが部屋入り浸り風になって…」
 「えっ! 田辺さんが、ナンパで入り浸り? 見えない!!」
 「うちの両親ラブラブでその頃、母が父の単身赴任に付いてちゃったんだ…兄貴は、それを逆手に遊び回るわで、家に帰ってこなくて…」
 
 真面目な田辺の口から遊び回るのワードは、一瞬耳を疑った。

 「そうなると1人で家に居ても、退屈でしょ?」
 「そうなるのか?」
 「ボク的にはね。で、話し聞いたら向こうは、社会人1年目で忙しそうにしてて、ならご飯作るよってなっただけ…勿論。兄貴とは違って、親には了解とってだよ」

 「へぇ~~…」了解を出したご両親も、中々…凄いな…

 「田辺さん。以外です!」
 「生意気に支えたいとか思っていたのかも、カノジョは兎に角。当時からバリキャリで私生活とかが、二の次になっていたから…で、高校を卒業してここに就職してパートから正社員になれて安定した収入になって、無事に入籍した感じですね?」
 「あぁ…確か、奥さん年上だったね…」 
 「えっ…じゃ去年、結婚した相手って…その時の?」
 「そうなりますね。カノジョは本当に出会った時から真面目な人で日々、学ぶのが大好きで、今も昇進試験とか受けてますから…ボクは、キャリアとか学歴マウントとかには興味がないので、上手くいっているのかも知れません。なので家庭での役割は、ボクが主夫って感じです」
 「凄くラブラブな幸せマウントされてる!」
 「そんな事ないですよ!」

 年下や年上と付き合う事に違和感なく語っている2人に上星は、何か悟るように静かに話し始める。

 「あの…学生さんとか…その…高校生のコと社会人が、付き合うって…有りなの?」

 最初に目が合ったのは、田辺だ。
 すると田辺は、自分が言うのも変だが、互いに本当に好きなら取り敢えず出会い的には、良いのでは? と答えた。
 
 「ただ…ボクには経験ないですが…やましい気持ちとか、別れ話を拗らせたりすると…ややこしくなるんじゃないですかね?…年が離れている分、やっぱり価値観は多少、違いますし…」
 「価値観?」
 「えぇ…まぁ…何と言うか、カノジョからしたらボクは、年下じゃないですか? 今もでそれは、変わらないってことですよ…」

 田辺は、やんわりとした笑みを見せる。

 「当初のカノジョだって…ボクと付き合うとか、戸惑いは、ボク以上にあったと思いますよ」
 「田辺以上に?…」
 「そっ…外見がいくら大人に見えても、やっぱり考えは浅はかな子供だし…そこまで色々と深く考えられなくて、知らずに迷惑とか掛けたかもしれませんから…」
 「なんか…聞いたことあります。大人に見られようと話を合わせようとすると、かえって悪い方にいくって…」
 「そう。別に相手に合わせようとするのは、悪い事ではないけど…下手すると、自己満になるかもしれないから」
 
 上星は、ずっと俯いたままだが何か言いたげに口ごもる。

 「なんですか?」と、田辺。
 「あの…自己満は、大人だって…あり得ると思うよ…」

 そう上星に問われた田辺は、一瞬ハッとなりながりも、優しい笑みを浮かべる。

 「そうですよ。当たり前じゃないですか? 誰だって自分の考えに固執したりしてませんか?」

 何となく分かるような気がすると、高校生とか社会人とか関係ないと迫る佐賀野と、それに割り切れない自分にピタリと重なった。

 「だからドコかで、ドチラも折れたり妥協すんですよ…」
 「…………」
 「だって…自分の思い通りにならないとか、御託並べて飽きられて捨てられたくないですし」
 「捨てぇえ?」と、上星の声が裏返ると田辺は、微妙な表情を見せる。

 やっぱり向こうは、どうしても年上で。
 視野を拡げた柔軟さを持っている。
 その上で仕事場は、年上の良い男など掃いて捨てるほど居る。

 「…たまにカノジョが、目移りしてしまうのでは? なんってバカみたいに思う時もありますよ」

 そして目に見えない何かに嫉妬していると、呆れるように笑う。

 「だからボクは、自分の意見は、言うようにしています。でもその意見が、残念ながら伝わなるかったり。正反対だったりする時もありますから…難しいですね」
 
 何となく分かる気がすると上星は、溜息を吐いた。

 「でも…難しいからって、何も話さないで逃げたり無視をしちゃダメですよ」
 「えっ…」
 「言いたいことが、言えないから変に気を使うのは、自然なんです。それを踏まえて、話し合わないまま妥協してばっかだと…」
 「お互いに疲れちゃうですね!」
 
 興味津々の佐々口が、身を乗り出して来た。
 
 「まぁ、そう言う感です」

 上星は、佐賀野との関係を改めて思い浮かべた。

 恋人と言う訳じゃない事。
 それに対して相手を、知りすぎている関係にある事…
 そう考えて思い詰めてしまう程に胸が苦しくなっていく。

 「…元々が他人同士なんだから話しが、合わないのが普通なんですよ。それに年の差があると余計に価値観も違うし…でも、似ている所とか探したり…安心するから一緒に居られたり…ね!」

 と、田辺は立ち上がった。
 
 「年の差は一生、埋まりません。それでも良いから一緒に居られるんです」と、田辺は笑ってみせた。

 「少しは、ヒントか…対策になりそうですか?」

 普段から私生活について、話したがらないと思われている上星の今の反応を見ると…
 
 「あの! 上星さん!」
 「…は…はい…」
 「上星さんは、恋愛とか、かなり奥手なんじゃないんですか?」
 「…その通りです…」
 「なら。相手の子が、上星さんを大事に想ってくれているなら。思いっ切って付き合っても良いんじゃないですか?」
 
 「えっ!」

 「確かに年上、年下って微妙ではあるかもですけど、両想いで上星さんも、相手のコを大事にしたいと思うなら。取り敢えず付き合ってみたらどうですか?」
 「付き合う?」
 「…そうですよ。付き合わないと見えてこない事もありますよ。きっと!」

 
 とは、言われたものの…
 帰りの車内で大きな溜息を吐いてしまった。
 時刻は、11時過ぎ…
 
 『俺、上星さんが帰ってくんの待てるね! 夕飯作れないから弁当買ってきた。チンジャオロースとか好きでしょ? 前に似たやつ食べてたじゃん!』とは、電話で言われたけど…

 嬉しいやら気まずいやらで、微妙き気が重い。

 一目惚れ。
 好きだから。
 両想い。

 取り敢えず…

 色々な事を3人で話したけど、オレ自信は、佐賀野くんをどう思っているんだろう。
 
 好き…なんだとは思う。

 じゃなかったら会いに行かない。
 田辺達が言った通りに側に居るわけない。

 それじゃ…
 なんだろう。

 佐賀野くんみたいに、素直さ全開で側に居たいって言ってくるのも違う。

 おそらく世間体とか、そう言う自分への負い目。
 全てが、綺麗事で年の差なんって気にしないとか、純愛とか…
 両想いとか…
 夢見がちなフワフワした考えで、居たくないだけ。

 『まったく体裁が、悪いわ…何を考えているのか、知らないけれど…迷惑かけないでね…』

 数え切れない程、言われてきた言葉に肩が震える。
 尖った針で刺されるような鋭い痛み。
 
 オレは、首を振る。
 
 他人から言われて、納得できる程オレは器用じゃないから。
 ダメな事はダメだって、分かる事には抵抗しないと気持ちが収まらないらしい。

 それでも素直な気持ちを、オレにぶつけてくれる佐賀野くんに、どう応えるのが正しいのか…
 
 好きって気持ちは、お互いに同じ…

 それは、対等って言うのかな?

 オレ達の出会い的に言えば、対等だったかも知れないし。
 それこそ田辺達が、言うように歳の差とか立場って関係ないのかも知れない。 
 佐賀野くんは、オレが年上とか誰でとか、関係なく好きって言ってくれていると思う。

 それは、対等にオレを見ていてくれるからだ。
 色々と全部をひっくるめて、好きだと言っていてくれる。

 で、合っているのかな?

 こうやって自問自答して悩んでいるから向こうが、対等と接してくれてもオレが、佐賀野くんを対等に見ようとしないから拗れるんだ…
 
 頭で考える恋愛とか、気持ちで考える恋愛…
 いやそもそも、恋愛って考えないと出来ないものなの?

 初めて人を、好きなったから恋愛の仕方が分からない。
 
 そんな風に佐賀野くんに言ったって…
 きっと困るだけだよね。
 
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