カフェと古書店

315 サイコ

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 上星さんの家に行くのは、久し振りだった。

 まぁ…こっそり家の周りを徘徊してみたり。
 後をつけてみたりは、してるけど…
 それ以外で堂々とこうやって来たのは、久し振りだった。

 俺の家の離れみたいな造りの戸建てで、上星さんの祖父名義の家なんだとか…
 元々は、趣味部屋で1階の1室は、祖父さんの集めた蔵書置場になっているんたとか…
 駐車スペースは、2台分。
 スロープでそのまま玄関に行けるデザインらしい。
 古くもなくて新しいって程でもない築年数かリノベ済みかは、分からないけどこのクリーム色の外壁の建物が、上星さんの家だ。

 時刻は、2時過ぎ。

 上星さんは、コソコソとダウンのフードを被り玄関に向かう。
 近くが、広い公園で土曜の昼過ぎは、子供の姿が多し。
 連れ出された親の姿も見えた。
 丁度、上星さんの家は、この公園に向かう道沿いだから。

 コソコソしてるのか?

 1人納得しながら俺も、玄関に向かった。
 主に1階のキッチンと居間バス・トイレが、上星さんの1階での居住空間スペースで主に2階が、上星さん個人の住居で、後は1階も2階も2DKの間取りだ。
 玄関脇の先の階段上って直ぐが上星さん部屋で、そこからバタバタとゴソゴソと音が聞こえてくる。

 「お邪魔しまぁ~~す…」
 
 玄関で靴を脱ぐと2階から降りてくる上星さは、ハイネックのニットをシャツの上に着込んでいた。
 
 「店…けっこう暖かいでしょ?」
 
 ジットっとした視線の上星さんは、通勤ようのバックを持って玄関に出た。
 その表情は、誰のせいだ? と言わんばかりだ。
 勿論、からかっている訳じゃない。
 
 「時間、大丈夫?」  

 上星さんは、腕時計を見ながら。
 俺に視線を移しながら戸惑っている。

 「なに?」
 「……………」
 「大丈夫。ちゃんと留守番してるって!」
 「…………」
 「3時から仕事なんでしょ? 行ってらっしゃい!」

 わざとらしくヘラってして見せると上星さんは、かなり戸惑いながら玄関先の棚から鍵を取り出し俺の前に差し出した。

 「これ…何度か見てると思うけど…家の鍵…何か用事が出来た時に使って…」

 うん。
 何度か、借りたやつだ。
 
 “ 何度か ” とは俺が、次の日、月曜日なのにも関わらず、家に押し掛けて泊まった時の事だとして…
 ワガママに捉えられたかもしれないけど、あの日も前日に別れないとか、揉めてて…
 音信不通になりたくなくて、無理矢理に押し掛けた。
 最初、上星さんは玄関越しの対応だったけど…
 その日は寒波で、俺が鼻をすする感じの応対をしたらアッサリと家に入れてくれた。

 まぁ…寒かったのは事実だから上星さんには感謝してる。

 あの寒さの中で家に戻るためにバス待って家に帰っていたら確実に風邪引いてたから…

 温かい部屋で、温かい珈琲を淹れてくれた時は泣きそうになった。
 そしたら上星さんは、気を遣う訳でもなくて…
 夕飯を作ってくれて、ご馳走してくれた。
 焼きうどん。
 市販の味噌ダレだとか言っていたいけど、野菜とか具沢山で美味かった。
 ホカホカになって、昨日から悩みまくってたのと、イライラして思い付きで駅前からここまで走ってきた疲れかで、腹が一杯なのと俺を迎い入れてくれた事に満たされて、そのまま眠ってしまった。
 案の定、俺は少し揺らしたぐらいでも、大声で呼ばれても、目を覚まさないほどに爆睡。

 上星さんは、仕事に行かなきゃで悩んだらしい。

 何とか俺が、目をしましたのは、10時過ぎ。

 焦って起きると、テーブルにはラップに包まれたおにぎりと家の鍵が、置いてあって…

 “必ず返してね” と紙に書かれていた。 
 
 百均で売ってそうなカナビラが付けてあるだけのシンプルな鍵で、妙にテンションが上がった。
 信用してくれたのかな? とか、嬉しいとか…
 掛けてあった厚手の毛布に包まって、床をゴロゴロしながら鍵を握り締めた。
 
 本当は、そこから合鍵を作っちゃおうかとも、思ったけど…
 俺を信用して預けてくれたんだからと、思い留まった。

 本音は、嫌われたくないからだけど…

 家に押し掛けて、飯も食わせてもらって言える立場か? って自問自答した。
 それでも、決まって答えは上星さんの事ばっかり。

 窓の外は、少し雪がチラついていて、どんよりとした空に気分が同調してしまった。
 
 “ なんで…毎回、脅しみたいなこと言っちゃうかなぁ… ” 

 “ なんで、自分から高校生だとか言っちゃったかなぁ… ”

 でも、言わなかったら普通に家に来れてた?

 いや…

 上星さんのことだもの…
 俺のつく嘘なんって、直ぐに見破るよね。

 だから答えは、入れてくれるわけがないだ。

 俺が、上星さんを脅してまでこの関係を迫っていなかったら。
 こんな風に悩む事もなくて…
 上星さんにバレる前に関係とか清算して適度に会うとかにしていれば、ずっと優しいまんまで俺を見てくれていたのかなぁ…

 往生際が悪るい自分に嫌気が差すけど、俺自身、年上とか社会人の人とか、何度か関係をもった事はあった。
 勿論。割り切ってもあったし。
 俺も、高校生だって隠さなかった。
 見て見ぬ振り。
 速攻で、年とか高校生だって身バレしてバイバイもあったし。
 じゃコレっきりにって事でと、事後に別れた事もあった。
 そんなこと嫌って程、経験しているのに俺は、上星さんの存在だけを強く拘っている。

 
 何か言いたげな佐賀野に対して、素っ気なく家を後にする上星は、ドアを閉める瞬間、佐賀野をジッと見ただけで出て行ってしまった。
 その時の横顔が、何となく赤あったような? とは思ったが、気のせいぐらいで見送った。
 気にしたらまた好意を、勘違いした時みたいに辛くなる。
 そう思いながらも、本音は早く帰ってきて欲しいだ。

 でもそれは上星も、似たようなもので…
 ドアを閉める瞬間、大好きな人が、家で待ってると言うシチュエーションの恥ずかしさに思わず身悶え赤面してしまったのだ。

 それ以上は、どうにも感情が乱されそうになると分かった上で、上星は車に乗り込んだ。
 昨夜の余韻が、もろに残っていた為か変に身体が疼いてしまうような錯覚に陥るも、気を取り直すように注意深く仕事モードに切り替え書店の裏にある従業員専用の駐車場に停めた。
 フト目に止まった自販機のカフェラテを買い書店の通用口から入った。
 

 その頃、佐賀野は上星の家から伍藤へと連絡を入れていた。

 数回目のコール音から伍藤は、イラッとした風な口調で出はしたが、機嫌の悪さは相変わらずと言うか、仕方がないから出てやったんだと言う感じだった。
 佐賀野も感じ悪るとは思ったが、他に相談する相手も微妙に居ない事に気付いての電話らしく。
 しおらしく。
 出来るだけ控え目に話しをし始めた。

 「あのさぁ…今良い?」
 『良いって?』
 「時間とか? あっ…もしかしてカノジョのとこ?」
 『…ノーコメント…』

 と、伍藤は言うが、居場所は自宅ではない。
 佐賀野が、想像したようにカノジョの家だ。
 カノジョは、違う高校の同学年で、最初の1年は自宅から通っていたが、地方の電車の本数は、数少ない。
 一本を逃せば30分、1時間の待ち時間はざらだ。
 終電ギリギリで親が迎えに行くにも、それなりに時間が掛かる。 
 それならと高2から学校近くのアパートに一人暮らしいをしていて、その部屋に伍藤がよく訪れているが、今の所カノジョの親には、伍藤の存在はバレてないらしい。
 伍藤にしてみれば、ドコで何をしていようと関係ないだろ?
 そんな言葉が、真っ先に思い浮かんだ。
 
 『で? お前こそドコにいんの?』
 「え~っ、ドコでしょうか?」
 『切るぞ…』

 さすがに、イラッとしたらしい。
 
 「怒んなって!」
 
 やや諦め顔の伍藤は、カノジョに断りを入れてベランダに移った。

 『…カレんち?』
 「まぁ…ね…でさぁ…カレシが、今仕事で居ないんだ…」
 『ふ~ん…で?』
 
 伍藤によるいつものつっけんどんな物言いに一瞬、ムッとしたが…
 そもそも気軽に相談できる相手は、幼馴染の伍藤だけだ。

 「いや…だからさぁ…その今日は、いつもよりも夜遅いらしいんだ…」
 『うん…』
 「えっと…お腹空いて帰ってくるかなぁ…って…」
 
 丁度、伍藤の背中に上着が掛けられた。
 カノジョが、気を利かせて寒空の下の伍藤に上着を持ってきたらしい。
 スマホを、顔から遠ざけながらはにかむように頭を下げるとまたカノジョも、ニコリと微笑み部屋の中に戻っていった。
 スマホが、鳴っているとカノジョが差し出してきた時点で、通話相手が佐賀野と知っているし口調から相手が、間違いなく幼馴染で、少し面倒臭いヤツだと知っている。
 しかも佐賀野は、段々と声がデカくなる傾向がある。
 自分の部屋ならまだしも、カノジョの部屋だ。
 咄嗟にベランダに行ったから。
 上着を持ってきてくれた。
 こう言うのを、親切または、思いやりとか?
 
 『ん~っ…』
 「何? 何で唸ってるの?」
 『…まぁ…腹は減るんじゃねぇ?』
 「だよな!」

 キーンとした声が、ベランダに響き渡る。
 毎度ながら。うっせーなぁとは思っているが、口には一切出さない伍藤は、一応に無害な口調を心掛けた。

 『で? お前は何がしたいの?』
 「夕飯だよ! 夕飯! 作って出迎えるの!」

 伍藤は、無表情まま天を仰ぐようにして気を落ち着かせた。
 
 『お前が、作るのか? カップラーメンのお湯も、溢れさせるお前が? 無謀だろ…』
 「だから…その俺にも、作れる料理とか…」
 
 自分の料理スキルを考えてから言えよと言いたげな口調になってしまうのは、もう仕方がない。
 ゆで卵を作ろとして、鍋に水貼って茹でたら水を蒸発させ鍋を焦がしそれならと生卵をレンチンしたら爆発させ…穏やかな佐賀野母の逆鱗に触れ…
 お金を持たされて、コンビニの弁当を買って家でレンチンしていたら停電って…
 どう言う使い方したらそうなるやら…と、穏やかな佐賀野父からは、家のキッチンを出禁にされている。

 『そんなお前が、他人の家で何するつもりだよ…』
 「何って、料理だよ!」
 『無理だ。お前が出来るのは、コンビニ弁当買ってくるだけだ…後は何もするな! 今カレに迷惑掛けたくねぇーだろ?』

 おそらく佐賀野を知っている誰もが、佐賀野の料理下手を知っている。
 勉強もスポーツもそこそこ出来て掃除も洗濯も出来るのに料理だけが、壊滅的にできない。
 そこに至るまで、中身は別として見た目も完璧と称されているのに…
 
 『残念なヤツだな…』
 「…どう言う意味?」
 『まんま…』

 全て、言われていることが事実だから言い返せない。
 
 『取り敢えず…そこさぁ…住宅街だろ? 駅寄りかは分からねぇーけど…コンビニはあるだろ?』

 スマホ越しから。う~ん…と唸る声を出す佐賀野は、数百メートル先のコンビニを思い出した。
 
 「あるけど…なんか…こう…嬉しがらないような気もするし。褒めてもらえないよ…」

 と、意外な答えが返ってくる。

 『相手は、お前が料理下手なの知ってんじゃねぇ? お前の部屋の料理できそうもない。使った試しなしのミニキッチン見てりゃ分かるって…』
 「何で!」

 佐賀野は、噛みつくような声で声を荒げる。

 こう言う所は、素直だと伍藤は苦笑しながらコンビニ弁当代替案を切り出す。
 要点をまとめると佐賀野の今カレは、今日帰りが遅い。
 いくら休憩を挟んだといっても、食事まで意識は回らないと考えると、身軽な佐賀野がコンビニか弁当屋で、美味そうなお弁当を見繕い得意の掃除スキルを活かして、風呂をキレイに磨いて浴槽にお湯を張り大人しく待っていた方が、今カレは喜ぶだろうと言った。
 
 「喜ぶ?」
 『弁当は、今カレに温めてもらうとして…お風呂は、良いと思うぞ…相手は、仕事して帰ってくるんだろ?』
 「うん…」
 『褒めてもらえるよりも、喜んでくれる方が良くねぇ?』
 
 褒めてもらえるは、自分に対して喜んでもらえるは、相手に対してだ。
 

 「…相手に?…」

 そんな事、考えてもみなかった…
 何か…本当に、自分の事ばっかりだ。
 褒めてもらいたいとか、言いながら俺は、上星さんから認めて欲しいんだよな…

 「あのさぁ…お弁当を売ってるお店も、近くにあるんだ…どう言うのが良いと思う?」

 『…っなもん自分で、考えろ…』と、ガチャ切りされながらそりゃそうだよなぁ…って漠然としながら部屋の時計を眺めた。

 時刻は、3時半…
 もうちょっと経つと、4時に近い。
 弁当か…
 そうだよなぁ…
 いくら上星さんの家でも、家で出禁やらかしたと同じ事したら次に入れてもらえる保証ない。
 俺は、財布をバッグから取り出しスマホと一緒にパーカーのポケットに入れた。
 そして上星さんから預かった鍵を持って家を出る。
 ここら近いのは、お弁当屋さんかな?
 コンビニも悪くないけど、味気ないし。
 上星さんって、好き嫌い無いんだよな…
 何でも食べるし。
 俺が、あんまり好きじゃない肉系の料理とか美味しそうに食うから一口貰うけど、なんか肉系の味が苦手で俺は、いつも魚とかさっぱりした方の味を好んでる。
 決して食べられない事はないけど多分。油っぽい味を嫌う母親の影響かな…
 通り掛かる公園に入っていく1組の親子。

 3人して手を繋いで、楽しげに公園に入っていくのを遠目に眺める。
 天気の良い日で、母さんの調子も良い日は、よく3人して散歩がてら近くの公園に連れて行ってもらった。
 母さんが、木陰のベンチに休んでもらっている間に俺は、父さんや近所の友達とアスレチックで遊び回って…
 たまに母さんの方を振り返ると、こっちを見て笑って手を振ってくれたそんな思い出だ。
 病弱って言われるけど、何か病気を抱えている訳じゃない。
 丈夫じゃないってだけ…
 おそらく普通に動ける体力が、なさ過ぎるんだよな…
 多分だけど…

 でもまぁ…

 喋るのは好きだし。
 お手伝いさんと一緒に料理をするのが、大好きで…
 今日は、コレを作りましたってメッセージを送ってくるから帰ったら食べるよって送り返すと、めちゃくちゃ喜ぶ。
 
 相手に喜んでもらう。

 上星さんにも、そんな風に接したいけど…
 なんか上手くいかない。
 空回りばかりする。

 ダメだ。
 単純に俺が、好き過ぎんだよ…

 日差しの割には、北風が冷たのに上星さんを考えると火照りそうになる顔に、その北風が吹き付けるから幾分か…マシって言うか、伍藤との会話で、かなり冷めてはいるけど…
 何となく冷静になれた。
 目的のお弁当屋さんには、徒歩14~5分程。
 昔からある店構ではあるけど、キレイな店内は花や季節柄の小物何かを飾り付けられている。
 そして味わいのある厨房が、少し見えるカウンターからは、フライヤーの揚げる音やご飯の美味しそうな匂いが充満して、さっき遅めの昼を食べたばかりだって言うのに思わず腹が減るような感覚になった。

 「いらっしゃいませ」

 昼過ぎだし。
 そこまで混んではいないらしいけど、夕方の仕込みでもしているのか、カウンターの後ろの方では調理担当の人達が、フライヤーのの揚げる音とは別に忙しくしてた。

 『ヒソヒソ…』『ヒソ…ヒソ…』
 「?」視線を感じて顔を向けると、店員さん達と目が合った。
 咄嗟に笑顔で会釈すると、ヒソヒソが、キャッて浮き立つ感じになるのは、まぁ…慣れはいるけど…
 と内心、溜息をついた。
 無駄に顔だけは良いと伍藤からは、言われ続けているから…
 今更なんとも思わない。
 それでも、静かに心内で吐く溜息は、数え切れない。
   
 『大抵、近付いてくる理由って…顔が良いからだから…』

 あぁ…なんか上星さんと普通に会えていた時に何気に言ったら上星さんが一瞬、目を逸らした。

 咳払いして誤魔化していたけど、上星さんも最初は、そんな感じで俺に会いに来てたんだ…とか、少し冷めかけた。

 でも、よくよく考えれば…
 自分も上星さんに一目惚れして1年もの間付けていたんだから。  
 人と事はいえねぇーか…

 気を取り直してカウンター下に並べられたお弁当のデスプレイを眺める。
 上星さんは、何でも食うしなぁ…
 同じ物を食いたいけど、俺は煮たり焼いたりした魚とか好きだし…
 仮に上星さんに同じ物をを買っていっても、喜ぶとは思うけど…
 仕事終わりで、疲れているだろうしもう少しガッツリした物を食べて欲しい。
 やっぱり。
 お互いに好きな物を食った方が良い?

 『…ヒソヒソ…ヒソ』『ヒソヒソ…ヒソヒソ』

 さすがに視線が痛い。


 佐賀野は、悩んだ挙げ句。
 焼き塩サバとチンジャオロースの弁当の2つとカップの豚汁を2つ買うことにしたらしい。
 それなりに悩んで注文したために夕飯として食べるので、家でレンチンできますか? と当たり前だが、料理下手な佐賀野にとっては死活問題をレジを担当してくれた大学生風な女子に質問した。
 
 「ハイ。ご飯とおかずの方は別々のトレーですし。今日中にお召し上がりなら大丈夫です」
 
 ニカッと笑いお釣りを受け取ると佐賀野は、商品を袋に下げて軽やかな足取りで、来た道を帰っていく。
 まるで親からおつかいを頼まれた子供が、買い物をしてそれが上手くいったことを喜んでいるかのような姿に見えるが、佐賀野にしてみれば、大好きな上星に喜んで欲しいがメインだから自然と浮足立つのは、言うまでもない。

 喜んでくれる。
 絶対に喜んでくれる。

 …と、呪文のように何度も小さく口にしながら帰っていった。
 傍から見れば、カッコいい好青年なのに何だか、ニヤニヤして小走りに帰っていく…
 何か、良いことでもあったのかなぁ?
 ぐらいの心情と視線はあったかも知れない。
 上星の家に着くなり佐賀野はまた伍藤にメッセージを送った。

 『お弁当買ってきた!』
 『あっそ…』

 それに対して直ぐに返事が帰ってきた事に佐賀野は、一瞬ビックリしてしまった。
 
 『弁当は、直ぐに食わねぇなら涼しいとこか、冷蔵庫にでも入れとけ…』
 『温かいの買っても、帰るまでに冷めてんだろけど、変な所に置くと腹壊すぞ…』

 と、続けざまにメッセージが返信される。
 メッセージを見て頷きながら。
 それは大変だと慌てて冷蔵庫に入れた。
 
 『大丈夫! 今入れた!』
 『うん。じゃ…また』

 素っ気ないと思いつつも、返信してくれた伍藤は、やっぱり頼りになると佐賀野もまたホッとした空気になる。
 子供の頃から伍藤との関係は、こんな感じだ。
 公園でよく遊び回った中の1人で、親同士も比較的に仲が良い。
 家に遊び行く事も普通にあり佐賀野の持つ独特な今好きになった人が、とにかく好きを、最初に目の当たりしたのも伍藤が、誰よりも先だった。
 別なクラスの新任で、女の先生が『大好き』って言ってくせに…  
 近所で別な学区に通う男子を見て『カッコいい!』とかニヤニヤしてると思ったら。
 隣のクラスの女子を、好きと言っていたりと、何度もそう言う光景を目の辺りにしてきた為に最初は、戸惑った。
 子供心にも、恋多きヤツだと本気で思った程だ。

 佐賀野は、誰が見てもどう見方を変えても、顔だけは良い。
 見た目に騙される方が悪いとはよく言うが、佐賀野に関しては騙されたとしても、それでも構わない言うヤツやステータスのように思うヤツが、多く居るらしい。

 『タチが悪い』と、スマホを眺めながら伍藤は、呟く。
 目の前には、不思議そうに伍藤の顔を覗き込むカノジョの姿。
 それに伍藤は、安堵するように苦笑う。

 「何でもない」
 
 すると伍藤は、カノジョにスマホのやり取りを見せた。
 カノジョは、マジマジと見つめるとクスッと笑いだした。

 『…一途だけど、相変わらずの重さだね…』と、カノジョが言う通り佐賀野は、この1年で人一倍重く一途になってしまった。

 大方、佐賀野の性格上は今頃。
 指摘された通りに、風呂場でも磨いてピカピカにしているに違いない。
 佐賀野にとって、それは嬉しいことかも知れないが、相手にそれが伝わっている保証はない…

 分かっいるのか、分かってないのか…

 伍藤は珍しく塞ぎ込むように頭をかかえた。
 暴言に近い言い回しでも、本音は上手くいってほしい。
 辛そうに悩んでは、狂ったように自分も相手も、追い込んではどちらにせよ自滅か拒否だ。
 一緒に居られるわけがない。
 ただでさえ監視してる仕草を見せてるわけだ。

 仮に相手に、そんなつもりがなくて道を聞かれた相手でも嫉妬心丸出しで割って入る事ぐらい佐賀野にならあり得る事だ。

 いい加減に取っ替え引っ替えで、気に入ったヤツとの恋愛を遊びと解釈してた頃の佐賀野からにしたら今の佐賀野の行動は異常だ。
 何も起きなければ、良いがと思いつつも、ドコかで上手くいけと願ってしまう。
 
 



 
 

 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
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