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19 隣人の向居さんと最後の晩餐を…
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志野を気にしつつ『あ~~ん』を実施中の向居に対して…
少々呆れが強く出ていないわけじゃないが…と
志野は、指で摘んだフライドポテトを見つめる。
「なんってね…でも、1本は頂戴よ!」
にっこりと唇を閉じて笑う向居の口元に、そのポテトを近付けると…
なぜか向居は、照れるように唇を固く閉じさせた。
「食べないんですか?」
「えっ…いや…食べるけど…」
自分からあ~んと口を開いた手前、微妙に引き下がれない状況である事に気付いた向居は、かなり迷った挙げ句に志野の指からポテトを取りムシャムシャと食べ終え志野を見ると…
折角あ~んしてあげたのに…と、言う表情が見て取れた。
「いやアレは…ノリで…」
ハンバーガーにかぶり付く向居も、また居た堪れない表情を志野に対して見せている。
ギリギリまで、海外赴任話をしてくれなかった志野の自分に対する気持ちが、知りたいと思うのは仕方がない。
『別れないから』は、向居の本音だそれは、志野も理解している。
向居との関係を壊したくない志野と、別れを拒否している向居達は、同じ気持ちであることは変わりはない。
「志野くんが、海外赴任の話を僕に言ってこなかったのは…そう言うことだよね?」
志野は、注文したプラスチックカップに注がれたお茶を一気に飲み干しコクリと頷いた。
「ありがとう…僕の事を考えてくれて…」
「いえ…俺は、向居さんが大事なんで…でも、海外だし…関係も中途半端だったし…安易に付いてきてもらえますか? なんって言えなくて…」
伝えたい事を言い切ったように志野は、テーブル両手を置いてソワソワと両手を握り締めたり指でテーブルを鳴らす仕草を見せたが、その顔はドコかスッキリとしていた。
これが志野の本音かと向居は、漠然としながらも、少し気持ちが穏やかになれていた。
それは、志野が自分に対してきちんと考えてくれた事や思ってくれていたからだ。
「…志野くんは、1人で…たくさん悩んで、考えてくれたんだね…嬉しいよ」
人目を気にせずハッキリと聞けた気持ちに安堵したのは勿論、心が温まる。
人にどう思われているのか…
自分は、その相手に対してその思い伝えるべきなのか…
「あのね…志野くん」
「はい?」
向居は、一段と柔らかい笑みを見せ志野を見詰める。
「何って言うか…分かりにくいかも知れないけど…」
そんな前置きをしながら…
「僕は、こうやってご飯を食べるのが好きなんだ…」
こう? と、志野は繰り返した。
「抽象的過ぎたかぁ……別に特別とか、そう言う意味じゃないよ」
向居は、自分が小さい頃に思っていた感覚や家族の事や祖母の手料理や忙しかった母が、張り切って作った夕飯の話ををした。
「…そう言うことが…」
志野自身、向居の食事に対するこだわりを見ていたからその説明は、分かりやすかった。
「それでも祖母が、留守の時とかあるじゃない? うちは祖父が料理好きだったから良かったけど…父が…苦手と言うよりも、料理の才能まるでなしで…片付け専門だったよ。それでもチャレンジするんだけど、合わないんだろうね…」
志野もまた得意と言う方ではないために、空を仰ぐように視線を上げた。
「まだ志野くんの方がマシだよ。野菜炒めは、できるでしょ?」
一応は…とは、頷くも多くの食事を向居に頼り切っているのは確かだと、改めて礼を言った。
「そんなことないって、言ったでしょ? 美味しいって食べてもらえる事が好きだってね」
「食べることは、好きなんだと思います」
チラッと志野は、静かに向居に視線を移す。
ムシャムシャとハンバーガーを頬張る向居は、嬉しそうだ。
のんびりと食べながらこれまたのんびりと店内を眺めたりしている。
「向居さんって…一人っ子?」
「そうだよ。ただ…母の妹…伯母さんが近くに居るから。イトコとは良く遊んだかなぁ…あっ…一緒に夕飯とか…食べたかなぁ?…バーベキューとかは、よくしたかなぁ? 志野くんの所はお兄さんと弟さんが居るんでしょ?」
う~~んと、何とも言えない表情を見せながら実家の様子を思い浮かべる志野は、半笑う。
実家でバーベキューなんってしようものなら…
「肉の争奪戦が、始まりますよ…自分で焼いた肉まで食われますからね…」
「そう言うものなの?」
「そう言うものです…」
「じゃさぁ…去年の真っ昼間のバーベキューは、堪能できた?」
「あぁ…アレですね?」
少々呆れが強く出ていないわけじゃないが…と
志野は、指で摘んだフライドポテトを見つめる。
「なんってね…でも、1本は頂戴よ!」
にっこりと唇を閉じて笑う向居の口元に、そのポテトを近付けると…
なぜか向居は、照れるように唇を固く閉じさせた。
「食べないんですか?」
「えっ…いや…食べるけど…」
自分からあ~んと口を開いた手前、微妙に引き下がれない状況である事に気付いた向居は、かなり迷った挙げ句に志野の指からポテトを取りムシャムシャと食べ終え志野を見ると…
折角あ~んしてあげたのに…と、言う表情が見て取れた。
「いやアレは…ノリで…」
ハンバーガーにかぶり付く向居も、また居た堪れない表情を志野に対して見せている。
ギリギリまで、海外赴任話をしてくれなかった志野の自分に対する気持ちが、知りたいと思うのは仕方がない。
『別れないから』は、向居の本音だそれは、志野も理解している。
向居との関係を壊したくない志野と、別れを拒否している向居達は、同じ気持ちであることは変わりはない。
「志野くんが、海外赴任の話を僕に言ってこなかったのは…そう言うことだよね?」
志野は、注文したプラスチックカップに注がれたお茶を一気に飲み干しコクリと頷いた。
「ありがとう…僕の事を考えてくれて…」
「いえ…俺は、向居さんが大事なんで…でも、海外だし…関係も中途半端だったし…安易に付いてきてもらえますか? なんって言えなくて…」
伝えたい事を言い切ったように志野は、テーブル両手を置いてソワソワと両手を握り締めたり指でテーブルを鳴らす仕草を見せたが、その顔はドコかスッキリとしていた。
これが志野の本音かと向居は、漠然としながらも、少し気持ちが穏やかになれていた。
それは、志野が自分に対してきちんと考えてくれた事や思ってくれていたからだ。
「…志野くんは、1人で…たくさん悩んで、考えてくれたんだね…嬉しいよ」
人目を気にせずハッキリと聞けた気持ちに安堵したのは勿論、心が温まる。
人にどう思われているのか…
自分は、その相手に対してその思い伝えるべきなのか…
「あのね…志野くん」
「はい?」
向居は、一段と柔らかい笑みを見せ志野を見詰める。
「何って言うか…分かりにくいかも知れないけど…」
そんな前置きをしながら…
「僕は、こうやってご飯を食べるのが好きなんだ…」
こう? と、志野は繰り返した。
「抽象的過ぎたかぁ……別に特別とか、そう言う意味じゃないよ」
向居は、自分が小さい頃に思っていた感覚や家族の事や祖母の手料理や忙しかった母が、張り切って作った夕飯の話ををした。
「…そう言うことが…」
志野自身、向居の食事に対するこだわりを見ていたからその説明は、分かりやすかった。
「それでも祖母が、留守の時とかあるじゃない? うちは祖父が料理好きだったから良かったけど…父が…苦手と言うよりも、料理の才能まるでなしで…片付け専門だったよ。それでもチャレンジするんだけど、合わないんだろうね…」
志野もまた得意と言う方ではないために、空を仰ぐように視線を上げた。
「まだ志野くんの方がマシだよ。野菜炒めは、できるでしょ?」
一応は…とは、頷くも多くの食事を向居に頼り切っているのは確かだと、改めて礼を言った。
「そんなことないって、言ったでしょ? 美味しいって食べてもらえる事が好きだってね」
「食べることは、好きなんだと思います」
チラッと志野は、静かに向居に視線を移す。
ムシャムシャとハンバーガーを頬張る向居は、嬉しそうだ。
のんびりと食べながらこれまたのんびりと店内を眺めたりしている。
「向居さんって…一人っ子?」
「そうだよ。ただ…母の妹…伯母さんが近くに居るから。イトコとは良く遊んだかなぁ…あっ…一緒に夕飯とか…食べたかなぁ?…バーベキューとかは、よくしたかなぁ? 志野くんの所はお兄さんと弟さんが居るんでしょ?」
う~~んと、何とも言えない表情を見せながら実家の様子を思い浮かべる志野は、半笑う。
実家でバーベキューなんってしようものなら…
「肉の争奪戦が、始まりますよ…自分で焼いた肉まで食われますからね…」
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「そう言うものです…」
「じゃさぁ…去年の真っ昼間のバーベキューは、堪能できた?」
「あぁ…アレですね?」
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