ゆびきりしよう

りあ

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1章

1話-また見たい-

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「おはようございますー!!」

土曜日。
市民ミュージカル稽古。

稽古は基本土日。
市民劇団なので、社会人や学校に通いながらでも出来るようなスケジュールになっている。

市民体育館に響き渡る大勢の声。
100人、、、いや150人はいるのだろうか。
沢山のミュージカル出演者。

5歳~50歳
それはもう年齢の幅が広くて
さらに60歳を超えるであろう人も。

市民劇団とは聞いていたがここまでの規模は想像していなかった。


「そっか、杏はこういう所来たことないか。」

隣にいる誘ってくれた友達、酒井まみ。
おどおどしている私を和まそうとしてくれているみたいだ。

そもそも歌なんて歌えるのか、踊れるのか、、、。
急にとても、心配になってしまった。


「よう、まみ!」

「お!なかちゃん!おはよー!」

髪は茶髪で所謂イケメンといえばいいのか。
そんな男の子が、まみに声をかけてきた。


「あれ?初めましてかな?
おれ、中田健太です。よろしく!」

「あ、、和泉杏です、、!」

やはり男性にはなかなか慣れない、、。

「いくつ?」

「19...です。」

「え!タメじゃん!年下かと思ったよー!やった!よろしく!」

「そーなんだ、よろしく、、!」

年下にみえたんだ。
それはそれで少し切ない。

「ほら、決まってないあの役にいいなぁって思ってスカウトしてきたんだ!」

まみは自慢げに私の肩を掴んだ。

「なるほど!杏ちゃん、絶対その役とってよ!俺の恋人役!」

「え、、!?」

いきなり下の名前、、、といか恋人役なんだ、、、。
何も聞かず来た自分も悪いが、緊張がこみ上げてきた。

どうやらまだ稽古内での役決めオーディションの期間らしい。
そこでなかなか決まらないでいるのが
主役の娘役のケイコ。
物語でもとても重要な役になっている。

そんな役をいくらイメージが合ってたとしても
なんの経験も無い私が出来るのだろうか。
オーディションを受けることすら恥ずかしい。






「うおおおおおおあああああああ!!!ちゃああああああん!」

いきなりすごい声が聞こえた。
子供の声?

「ゲホッゲホッ」

「はははは!むせてやんのー!はは!」

体育館の端で小学生が集まってはしゃいでいたみたいだ。
なんとも可愛らしい。


--ピンポンパンポン--

「それでは、今から子供の部のオーディションを開始します。小学校3年生~6年生までの参加者は前に、並んで下さい。」

30人前後の子供が前に出る。
どうやらそれをみんなで見ている形式みたいだ。

音楽が鳴る。
子供たちが踊り始めたと思うと、、、
ふざけ始めちゃう子や、恥ずかしくて何もできなくなる子、小さーく踊る子、なんとなく踊る子。
そういうの恥ずかしいお年頃なのかな。


そんな中1人、目を引く子が。

決して上手いとは言えないが
力強くダイナミックに堂々と踊る少年。

「わっ、、」

思わず声が出てしまった。
その少年の目はまるで獲物を仕留めようとする虎のようにじっと審査員の席を見つめながら激しく踊りそして歌い続けた。
その目を見るたび胸がドクンと鳴った。


オーディション期間の稽古では
子供達は課題を練習しながら審査をしていくようだった。


また見たい。
あの子の踊ってる姿をまた見たい。

そう強く思った。

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