ゆびきりしよう

りあ

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1章

2話-オーディション-

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--ピンポンパンポン--

「大人女性でまだオーディションを受けてない方は集会室までおこし下さい。」

「杏!とうとうだね!」

まみは笑顔で私の肩を叩いた。

「.....。」

「杏?」

「え、、、、なに?」

子供のオーディションでのあの男の子の姿が忘れられず少しぼーっとしていた。

「何って、オーディション!早くいかなきゃ!杏!」

「えあ、、!」

やばい!もう私の番が回って来てしまったのか。
さっきまでの、胸のドキドキが焦りのドキドキへと変わった。
まみにうながされ、オーディションの場所、集会室に向かう。
どうしよう。
手に汗がじわじわ滲み出す。

--ガチャ--

「し、、、失礼します、、。」

「どうぞ。」

ピアノと机だけの部屋。
ピアノの前には綺麗な女性。
机には恐そうなおじさん。きっと演出家だろう。
おじさんが口を開く。

「初めまして。演出の兵藤です。よろしくお願いします。ではまずは自己紹介からしてもらおうかな。どうぞ。」

「い、、、和泉、、杏です。」

ついおどおどした口調で答えてしまった。
まさか1人でのオーディション?
緊張で震えが止まらなかった。

「年は?」

「19歳、、です。」

こんな自己紹介でいいのだろうか。
他にも何か言おうと思ったけど
自分でも情けないと思うくらいに言葉が出てこない。

「ありがとうございます。では早速ですが今から言うお題で何か自分で思いついた台詞で、芝居をして下さい。」

な、、、!?
何すればいいの?
うそでしょ。
こんなことなら、芝居やったことない超初心者とでも言っておけばよかった。
そんなこと、初心者の私に出来るわけない。
出来るわけ、、、な。

その時ふとさっきの男の子のダンスが頭をよぎった。

出来るわけ、、、、、、、、、、ある、、、。

あの子は決して上手くはなかったけど
全力だった。

私だって、、、せっかく参加してるんだもん、、
下手なりに、ぜ、、全力で。


「ではお題は、夕方。
、、、どうぞ。」


夕方、、、。
私は思いっきり息を吸った。


「カァー!カァー!カァー!
おっかー!どこいったんだカァー!
私を1人にしないでよカァー!!」

自分でも、何をしているのかわからないくらい
体をカラスに、みたて羽を動かすように手をバタバタさせ、叫んだ。

「ぷっ、、、。ふふははは。」

わ、、、笑われた、、、、!!
やだ!

「ご、、、ごめんなさい!わ、、私こんなこと、、!!」

あまりの恥ずかしさに謝ってしまった。
顔を手で覆いしゃがんだ。

「ううん、いいよ、大丈夫だよ。そうだよね、夕方だもんねえ、、ふふ。」

演出の兵藤さんは笑って答えた。
ピアノの前に座ってる女性も笑っていた。

は、、、恥ずかしい。

その後、ピアノに合わせ夕焼け小焼けを歌わされた、、。
それはもう酷い歌いっぷりだったと思う。


こうして、私の初めての稽古1日目が幕を閉じた。




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