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『適応力』<♂♂>
しおりを挟む~大根の花言葉~
スッ
「…何だよ?」
「まつ毛付いてた」
「そうかよ…」
こいつはいつもこうだ。
突然しゃがみ込んだかと思えば十円玉を拾っていたり、草わらに分け入ったかと思えば仔猫を抱いて戻って来たり。
とにかく何かする前に言葉を使わないのだ。
「なあ、行動に移す前に一言言えよ。驚くだろ…」
「たるい…」
「あのなあ…」
驚かされるのは今に始まった事では無いが、こいつの行動に慣れる事はこれからも一生無いと思う。
「大体、たるいって何だよ。相手に自分の意思を伝える為にある言葉をたるいって…」
「だったら、伝える意味を教えてくれ」
「そりゃあ、何か物事を起こす前に事前に伝える事で相手に心の準備をさせたり、自分の思っている事を伝える事で相手に自分を分かって貰ったり…」
「何だ、それだけか…」
「それだけって…」
「それだけだろ。心の準備をさせた所で行動に移すまで時間が掛かるし、皆が皆、自分の事を分かってくれる訳じゃない」
「そりゃそうだけど、心の準備をしないよりはマシだし、中には自分の事をより分かってくれる人が居るかもしれないだろ!!」
「だったら…」
「ん?」
「だったら、俺がお前に好きだと伝えたらお前は受け入れてくれるのか?」
「………………はあ?」
「…ほら」
「いやいや!!好きっ…て、そんな事は口にしなくても知って…」
「………キスしたい…」
「え!?い、いや、だから…」
「心の準備をさせたんだよ。していい?」
「お、俺達、男同士…だし…」
「ほら、やっぱり…」
大きく溜め息を吐いたこいつに何だかバカにされた様な気がして、何か言い返そうと口を開いた時、俺はこいつに口を塞がれてしまった。
しかも、口で。
すぐに離れはしたものの、今まで以上に唐突過ぎるこいつの行動にとうとうついて行けなくなった。
「………」
「お前が望んだ通り、俺は言ったよ。‘お前が好きだ、キスしたい’って」
「………いや、けど…」
「どう?意味はあった?」
「………無かったよ…、俺にとっては…」
「だろ?」
満面の笑みで話すこいつに、俺はこれから何があってももう驚く事は無いだろうと確信したのだった。
「…はあ…、お前なぁ…」
「言葉が無くても大丈夫だと思ってたから。お前ならな」
「!っ~…」
終わり
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