【色欲物怪物語】

色酉ウトサ

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『妖怪・小袖の怪』<妖怪?・人間♀>

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 三日前、私が古着屋で見つけたこの服は、すぐに私のお気に入りになった。

「あんた、またその服着てるの!?」

「うん!!今、一番のお気に入りなの」

「だからって、二日ぶっ続けで着なくても…」

「ちゃんとお洗濯してるよ~」

「そう言う問題じゃなくてね…」

 彼女の言ってる意味が分からなくて首を傾げると、大きく溜め息を吐かれた。

 自分が変な事をしている気は無い。

 昔からお気に入りのものは常に近くに置いていて、使いきるまで肌身離さずに身に付けるのが癖なのだ。
持ち歩けないものは家に置いてあるけど…。

「しっかし、あんな怪しい古着屋で見つけた服をそこまで気に入れるなんて、あんたも変わり者よね~」

「そんな事無いよ」

「いや、変わってるって。古い物って色々いわく付いてたりするみたいだし、その中でも服なんて誰が着てたかも分からないのに…」

「別に気にならないけどな~。染みが付いてる訳でも、穴が開いてる訳でも無し。気にし過ぎは良くないよ」

「まあ、あんたが良いなら良いんだろうけどね…」

 本当に一目惚れだった。
今までにも、色々な物に一目惚れしてすぐ購入なんて事はたくさんあったけど、その中でもこの服への一目惚れはいつもと違っていた。

 お店に入るなり目に飛び込んで来たこの服は、私の心を鷲掴みにして目を逸らす事を許してくれなかった。
そんな気持ちは今までに経験した事が無くって、戸惑いながらも近付いて手にとってみると、もう手放す気になれず、すぐに購入したのだ。

(今考えてみれば、試着してないのよね…)

「あ、そうだ。今日あんたんちに泊まりにいっても良いかな?」

「え、何かあったの?」

「今朝、親と喧嘩してそのまま出て来たの…。家に帰りたくないのよ、良い?」

「私は構わないけど…」

「ありがとう!!なら、帰り真っ直ぐあんたんちに直行するね」

「ちゃんと仲直りしなよ?」

「大丈夫よ!いつもの事だから」

 ウインクしながら話す彼女に、思わず溜め息が零れた。

 彼女が家へ泊まるのは実のところあまり好ましくない。
嫌いだとか、来ないで欲しいと言う訳では無いし、むしろ遊びに来てくれるのは嬉しい。

 だけど、彼女は家へ来て泊まると何故かスキンシップが過剰になり、いつも振り回されるから少し困ってしまうのだ。



「今日はなに食べる?」

「ん~何にしよっか…、簡単なところだとカレーとか…?」

「そうね!無いものは?」

「えっと、じゃがいもとカレールーかな…」

「分かったわ。行って来ます」

「気を付けてね」

(さ、私は玉ねぎと人参を切って、豚肉を用意しなきゃ…あれ?)

 何度か彼女が泊まりに来る内に、いつの間にか彼女が買い物、私は準備と言う役割分担が出来ていた。

 出掛けた彼女を見送り、もう一度冷蔵庫の方へ向かうと、突然、身体に違和感を覚えた。

(今、誰かに触られたような…あっ!)

 急に誰かに胸を掴まれた気がして、思わず胸を腕で隠した。

 それを切っ掛けに、身体中を撫で回される感覚を覚えて、私はその場に座り込むと身体を丸めて誰にも触られない体勢をとった。

(急にどうして…。周りには誰も居ないのに…やっ)

 身体を丸めてるにもかかわらず、何者かに触れられている感覚を肩や首筋だけでなく、お腹や胸の辺りにも感じた。

 触れてくる何かを追い払おうにもそれは見ることも触れることも出来ず、得体の知れなさに、恐怖から私は動けなくなってしまった。
そうしている内にも何者かは私の身体を撫で回し続け、しまいには、人に決して触らせない部分にまで何者かの手が滑り込んできたのだ。

(何で!?い、や…)

 どれ位の時間そうしていたか分からないけれど、身体中を撫で回している手に、始めはくすぐったく感じていたのに徐々に身体が火照り始めている事に気付いて恥ずかしくなった。

ガチャ

(!)

「ただいま~、準備出来て…って、え…」

「っ見ない、で…やぁ…」

「ちょっ、どうしたの!?」

「分かんな…んっ…」

 驚いて駆け寄ってきた彼女に触れられて、私の身体は更にビクついた。
私の様子に彼女も戸惑いつつ、何があったのかと訊ねながら私を見つめてくる。

 自分でも分からない事を説明しようが無かった。

 けれど、何とかこの手を止めて欲しくて私は彼女の手を握り、何者かに触れられている胸元へと引き寄せた。

「ちょっと、何して!?」

「ふっ…おね、がい…」

「…っ~、もう!」

ドサッ

「きゃっ!?」

「あんたが、誘ったんだからね…」

 私を押し倒して軽く睨み付けてきた彼女は、小さく呟くと、服の上から私の胸を撫でるように触り始めた。

 彼女の行動に驚き、慌てて手を退かそうと掴みはしたものの、反対に指を絡められ、床へと押さえ付けながら唇を奪われれてしまった。

「ふうっ…ん…、はあ、やめ…」

「…ずっと、隠してたのに…」

(隠してたって…?!)

「ああっ!!」

 抵抗している時に不意に聞こえた彼女の言葉。

 その意味を考えていたのに、今まで動きを止めていた見えない者が思い出したかのように私の下着の中へ手を潜り込ませ、敏感な部分を弄り始めた為、私はその刺激に堪えられず仰け反った。

 漸く、彼女も私の身に何かがおきている事に気付き、一度身体を起こすと、ヒクつかせている私の身体を見つめて何が起きているのかを確かめ始めた。

 しばらくすると彼女は私の服へ手を伸ばし、どこか慌てた様子でそれを脱がし始め、何事かと目を向けた先の彼女の表情は青ざめていた。

「どう、したの…?」

「いいから、この服を早く脱ぎなさい!!」

「え…」

「信じたくないかもしれないけど、あんたの服の袖の所から白い手が伸びてたのよ…、あんたの腕以外に…」

「………」

 どう見ても、彼女が嘘を吐いてる様には見えず、慌てて私も服を脱ごうと裾へ手を伸ばした。
その瞬間、再び敏感な部分を強く擦りあげられ、そこには今まで見えなかった何者かの手があり、手に繋がる腕は私の腕に重なるようにして袖から伸びていたのだ。

 私の服を脱がす力が弱まると、袖から伸びていた手は、更に指を大事な部分へと挿し込み激しく掻き回し始めた。

 挿し込まれた指は一本、また一本と増えていき、私の意識は半分飛びかけていた。
けれど、私の意識が飛ぶより先に、彼女が服を脱がしてくれた。

 服を脱ぐと同時に指は全て消えさり、それまで好きなようにされていた私は疲れきって、その場から起き上がる事は出来なかった。

「はぁ…、はぁ…、あり、がとう…」

ギュッ

「………」

「…どうし…あっ!」

「…あんな姿見せられて、我慢できる訳ないじゃない…」

「何、言っ…んぅぅ…」

「………ずっと、好きだったのよ…」

「え…、好きって…」

「鈍いわね!!」

「きゃっ!?」

 またも押し倒され、下着の上から胸を揉まれて身体が仰け反った。

 彼女の表情はいつも見せる悪戯っ子のようなものだったけれど、目には艶を含んでいて、私は初めて女の子にときめいてしまった。
それでも、何とかこれ以上されないようにと考えを巡らした。

「良いでしょ?」

「で、でも…」

「あんたは私の事、嫌い?」

「嫌いなわけないじゃない!!」

「だったら…」

「う~…」

「覚悟しなさい」

「…う、う…やっ!?」

「どうしたの!?」

「何かが…」

「「あ…」」

「まずは、あの服を処分しなきゃね」

「え…」

「私よりも先に、あんたに好き放題したんだから当たり前でしょ」

「っ~…」

 その後、彼女はあの服をごみ袋に入れて玄関に置き、私は一晩中、彼女に愛され続けたのだった。





終わり
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