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リクエスト
1 赤ちゃんができました!
アフタヌーンティーのひととき。旦那様と一緒にお茶を楽しんでいると、突然、私の胸にむかむかとした感覚が広がった。
「え……? 気持ち悪い……」
手に持っていたスコーンを口に運ぶと、その香ばしい香りが一瞬にして鼻をつき、食べた瞬間、胃の中で何かがひっくり返ったかのように感じた。
「ジャネット?」
旦那様の心配そうな声が、私の耳に届く。ふと顔を上げると、彼の表情が曇っていた。
「顔色が悪いぞ、大丈夫か?」
私は必死にほほえんだ。けれど、どうしてもその笑顔を保つことができない。
「大丈夫ですわ。ただ少し、気分が……」
食べかけのスコーンを口にしても、そこから先、喉を通らない。私の体がなぜかクロテッドクリーム添えのスコーンを拒絶していた。旦那様の目がますます不安げに細められ、私は思わず視線を逸らす。スコーンはアフタヌーンティーには定番で、私の好物のひとつ。でも、今はどうしても食べられない。
こんなこと、今までなかった。私は食欲がなくなることなんて滅多にないから、不安で胸がざわめいた。そして次の瞬間、急に目の前がぼんやりと暗くなり、うっすらと額に汗がにじむ。
「ジャネット! 今すぐ医師を呼ぶから……」
大声でキーリー公爵家お抱えの医師を呼ぶように指示する声が聞こえ、慌てて侍女長が駆けつけた。
「旦那様、どうされましたか?」
侍女長は私の様子を見ただけで、洗面室に連れて行くよう旦那様を促しながら、にっこりとほほえんだ。
「旦那様。それほど心配なさることではございません。これはたぶん、おめでたでございますわ! あぁ、どんなにこの時を待ちわびたか……なんという嬉しさ。この屋敷がますます賑やかになって、ウキウキしますわ」
おめでた。その言葉が耳に入った瞬間、胸の内に温かな驚きが広がった。
まさか、私が……?
いや、そうだとすれば、この気分の悪さも説明がつく。
でも……本当に? 信じていいの?
旦那様は一瞬驚き、そしてすぐに冷静になって、私に優しく声をかけた。
「吐き気があるなら、我慢しないで吐くといい。すっきりするぞ。俺が医師を瞬間移転魔法ですぐ連れてきてやる。待っていろ」
私はただ黙ってうなずくことしかできなかった。やがて、医師が来て丁寧に診察すると、満面の笑みでお祝いの言葉を口にした。
「おめでとうございます、奥様……間違いありません。ご懐妊されています。新しい命が、確かにお腹の中に宿っておりますよ。脈も穏やかで、母体の状態も安定しています。このような嬉しい報せをお伝えできるのは、医者冥利に尽きますな……本当に、おめでとうございます」
私は旦那様と顔を見合わせた。彼の瞳がわずかに見開かれ、驚きと喜びが波のように押し寄せているのがわかる。
そして次の瞬間、旦那様は私の手をそっと握りしめ、潤んだ瞳のまま、ゆっくりとほほえんだ。その笑みは、優しくて、温かくて、私の胸に深く染み込んでいった。
「ありがとう、ジャネット……幸せって、終わりがないんだな。こうして、君と一緒に少しずつ積み重ねていくものなのか……生まれてくる子が男の子でも女の子でも全力で愛するよ」
その言葉に、胸の奥がじんと熱くなった。
幸せだ。言葉にするのがもったいないほどに。
私は、こんなにも愛されている……そして、新しい命を授かった。
使用人達がわっと押し寄せ、口々に祝福の声をあげた。庭園でミュウと遊んでいたアベラールまで気がついて、こちらに駆けてきた。
「みんな、すごっくよろこんでいるね。いったいなにがあったの?」
「アベラール。ジャネットに赤ちゃんができた。おまえに妹か弟ができるんだぞ。可愛がってやってくれよ」
「えっ! すごいな。ぼくにいもうとかおとうと? ミュウ、きいた? ぼくたち、おにいちゃんになるんだよ」
ミュウがパタパタと羽を動かし、嬉しげに鳴くと、私のお腹をじっと見つめた。アベラールは私のお腹に手を当て、その温かさを感じているようだった。
「もしもし、きこえる? ぼくはきみのおにいちゃんだよ。ここはね、とてもやさしいせかいさ。おとうさまもおかあさまも、きみをとてもかわいがるし、ぼくとミュウは、いつだってきみのみかただよ。だから、あんしんしてうまれてきてね」
その言葉を聞いて、私は胸がいっぱいになった。アベラールの誠実な言葉に、何とも言えない安心感を覚えたから。世の中には仲の悪い兄弟や姉妹もいるけれど、キーリー公爵家ではそんなことには絶対にならない。そう確信していた。
アベラールは血のつながりがなくても、私にとってはかけがえのない息子。そんな彼が、これから生まれてくる子にまで、惜しみない愛を注ごうとしてくれている。ミュウまで目を輝かせているので、生まれてくる子は属性外の魔法まで操る最強のお兄様と白銀竜に守られて、安心だわね。
「神様、私にこんなに素晴らしい夫と息子、そして新しい命を授けてくださって……ありがとうございます」
心の中で何度も祈るように感謝を繰り返していると、そばにいた侍女長がぽつりとつぶやいた。
「頼もしいお坊ちゃんと白銀竜様ですわ……でも、もし女の子が生まれたら、旦那様もお坊ちゃんも溺愛しすぎて、誰にも嫁がせたくないって顔をなさるのが、今から目に浮かびますわね」
ん? それって、そんなに大変な未来なのかしら……。
まぁ、でもそれも――仲良し家族にはありがちな、かわいらしいエピソードよね。
そんなことを思いながら旦那様に目を向けると、彼はやけに真剣な顔で、しみじみとつぶやいた。
「ジャネット。娘が生まれたら、遠くの領地には嫁がせないようにしよう。すぐ顔を見に行ける場所に……そうだ、婿を取って敷地内に住まわせればいい。伯爵家の三男あたりで、穏やかな性格の男を選び……うんうん。遠くの領地、まして異国などには絶対に嫁がせん!」
「……旦那様? あなたは瞬間移転魔法で、どこへでもひとっ飛びでしょう? それに、まだこの子が女の子と決まったわけではありませんわよ」
私が苦笑混じりに明るく否定すると、ミュウがふわりと羽ばたいて、庭園から小さなピンクの花を摘んできた。虹色の羽をきらきらと光らせながら、それを私の手にそっと置く。
まるで、『この子は女の子だよ』と、教えてくれているかのように――。
そして……
「え……? 気持ち悪い……」
手に持っていたスコーンを口に運ぶと、その香ばしい香りが一瞬にして鼻をつき、食べた瞬間、胃の中で何かがひっくり返ったかのように感じた。
「ジャネット?」
旦那様の心配そうな声が、私の耳に届く。ふと顔を上げると、彼の表情が曇っていた。
「顔色が悪いぞ、大丈夫か?」
私は必死にほほえんだ。けれど、どうしてもその笑顔を保つことができない。
「大丈夫ですわ。ただ少し、気分が……」
食べかけのスコーンを口にしても、そこから先、喉を通らない。私の体がなぜかクロテッドクリーム添えのスコーンを拒絶していた。旦那様の目がますます不安げに細められ、私は思わず視線を逸らす。スコーンはアフタヌーンティーには定番で、私の好物のひとつ。でも、今はどうしても食べられない。
こんなこと、今までなかった。私は食欲がなくなることなんて滅多にないから、不安で胸がざわめいた。そして次の瞬間、急に目の前がぼんやりと暗くなり、うっすらと額に汗がにじむ。
「ジャネット! 今すぐ医師を呼ぶから……」
大声でキーリー公爵家お抱えの医師を呼ぶように指示する声が聞こえ、慌てて侍女長が駆けつけた。
「旦那様、どうされましたか?」
侍女長は私の様子を見ただけで、洗面室に連れて行くよう旦那様を促しながら、にっこりとほほえんだ。
「旦那様。それほど心配なさることではございません。これはたぶん、おめでたでございますわ! あぁ、どんなにこの時を待ちわびたか……なんという嬉しさ。この屋敷がますます賑やかになって、ウキウキしますわ」
おめでた。その言葉が耳に入った瞬間、胸の内に温かな驚きが広がった。
まさか、私が……?
いや、そうだとすれば、この気分の悪さも説明がつく。
でも……本当に? 信じていいの?
旦那様は一瞬驚き、そしてすぐに冷静になって、私に優しく声をかけた。
「吐き気があるなら、我慢しないで吐くといい。すっきりするぞ。俺が医師を瞬間移転魔法ですぐ連れてきてやる。待っていろ」
私はただ黙ってうなずくことしかできなかった。やがて、医師が来て丁寧に診察すると、満面の笑みでお祝いの言葉を口にした。
「おめでとうございます、奥様……間違いありません。ご懐妊されています。新しい命が、確かにお腹の中に宿っておりますよ。脈も穏やかで、母体の状態も安定しています。このような嬉しい報せをお伝えできるのは、医者冥利に尽きますな……本当に、おめでとうございます」
私は旦那様と顔を見合わせた。彼の瞳がわずかに見開かれ、驚きと喜びが波のように押し寄せているのがわかる。
そして次の瞬間、旦那様は私の手をそっと握りしめ、潤んだ瞳のまま、ゆっくりとほほえんだ。その笑みは、優しくて、温かくて、私の胸に深く染み込んでいった。
「ありがとう、ジャネット……幸せって、終わりがないんだな。こうして、君と一緒に少しずつ積み重ねていくものなのか……生まれてくる子が男の子でも女の子でも全力で愛するよ」
その言葉に、胸の奥がじんと熱くなった。
幸せだ。言葉にするのがもったいないほどに。
私は、こんなにも愛されている……そして、新しい命を授かった。
使用人達がわっと押し寄せ、口々に祝福の声をあげた。庭園でミュウと遊んでいたアベラールまで気がついて、こちらに駆けてきた。
「みんな、すごっくよろこんでいるね。いったいなにがあったの?」
「アベラール。ジャネットに赤ちゃんができた。おまえに妹か弟ができるんだぞ。可愛がってやってくれよ」
「えっ! すごいな。ぼくにいもうとかおとうと? ミュウ、きいた? ぼくたち、おにいちゃんになるんだよ」
ミュウがパタパタと羽を動かし、嬉しげに鳴くと、私のお腹をじっと見つめた。アベラールは私のお腹に手を当て、その温かさを感じているようだった。
「もしもし、きこえる? ぼくはきみのおにいちゃんだよ。ここはね、とてもやさしいせかいさ。おとうさまもおかあさまも、きみをとてもかわいがるし、ぼくとミュウは、いつだってきみのみかただよ。だから、あんしんしてうまれてきてね」
その言葉を聞いて、私は胸がいっぱいになった。アベラールの誠実な言葉に、何とも言えない安心感を覚えたから。世の中には仲の悪い兄弟や姉妹もいるけれど、キーリー公爵家ではそんなことには絶対にならない。そう確信していた。
アベラールは血のつながりがなくても、私にとってはかけがえのない息子。そんな彼が、これから生まれてくる子にまで、惜しみない愛を注ごうとしてくれている。ミュウまで目を輝かせているので、生まれてくる子は属性外の魔法まで操る最強のお兄様と白銀竜に守られて、安心だわね。
「神様、私にこんなに素晴らしい夫と息子、そして新しい命を授けてくださって……ありがとうございます」
心の中で何度も祈るように感謝を繰り返していると、そばにいた侍女長がぽつりとつぶやいた。
「頼もしいお坊ちゃんと白銀竜様ですわ……でも、もし女の子が生まれたら、旦那様もお坊ちゃんも溺愛しすぎて、誰にも嫁がせたくないって顔をなさるのが、今から目に浮かびますわね」
ん? それって、そんなに大変な未来なのかしら……。
まぁ、でもそれも――仲良し家族にはありがちな、かわいらしいエピソードよね。
そんなことを思いながら旦那様に目を向けると、彼はやけに真剣な顔で、しみじみとつぶやいた。
「ジャネット。娘が生まれたら、遠くの領地には嫁がせないようにしよう。すぐ顔を見に行ける場所に……そうだ、婿を取って敷地内に住まわせればいい。伯爵家の三男あたりで、穏やかな性格の男を選び……うんうん。遠くの領地、まして異国などには絶対に嫁がせん!」
「……旦那様? あなたは瞬間移転魔法で、どこへでもひとっ飛びでしょう? それに、まだこの子が女の子と決まったわけではありませんわよ」
私が苦笑混じりに明るく否定すると、ミュウがふわりと羽ばたいて、庭園から小さなピンクの花を摘んできた。虹色の羽をきらきらと光らせながら、それを私の手にそっと置く。
まるで、『この子は女の子だよ』と、教えてくれているかのように――。
そして……
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