10 / 25
命懸けの美食 チャージダック①
しおりを挟む魔物データNo. FA-022
種族名:チャージダック
種族:鴨系鳥型魔物
寿命:6~8年
身長:40~70cm
体重:成体で800~2,500g
通称:突撃兵
特記:卵がこの上なく美味しく、多くの美食家が求めた。その為、200年前に絶滅した。多くの冒険者が一攫千金を目指して卵を求めたが……チャージダックの高速突撃の前に撤退を余儀なくされた。その見事な突撃に敬意を込めて、いつしか冒険者達は〝突撃兵〟と呼ぶようになった。
▲▲▲
私はチャージダックの卵が好きだ。
いや……大好きだ。
チャージダックの卵のオムレツが好きだ。
ゆで卵が好きだ。目玉焼きが好きだ。
プリンが好きだ。
ケーキに使えば、フォークが止まらない。
濃厚で食欲をそそる芳醇な匂いが大好きなのだ。
チャージダックの卵を手に入れる為に、200人の冒険者を投入したが……無惨にも撤退してきた。
何百羽の突撃の前に撤退した?いや!あいつらは絶対、持ってくる前に食べたに違いない!!
それなのに持ち帰りもしないで金を払え?
ふざけたことをほざくなと言いたかったが、国が支払いを認めた。
もう、我が公爵家に払う金はない。残るのはこの館だけだ。
まさか私の代でこの公爵家が無くなることになるとは。
これも全て美味しすぎるチャージダックの卵のせいだ……。
チャージダックの卵が食べたい。
チャージダックの卵が……食べたい……。
チャージダック……のたま……た……べたい……。
チャー……ック……の……ま……た…………い…………
その後の文字は解読不可。
世界の美食物語より ダゾ王国公爵の手記
▲▲▲
トレント達が持ってきてくれる食料は、木の実や野生の野菜だけではない。時折、仕留めた魔獣の肉も混じる。
その中に、なぜか妙に頻繁に混ざるものがあった。
とてつもなくまずい鳥――いや、鳥系魔獣の肉である。
脂はほとんど感じられず、繊維ばかりが口に残る。
噛めば噛むほど水分を失い、鼻の奥に残る獣臭が、飲み込むたびに逆流してくる。
正直に言えば、食事とは呼びたくない代物だった。
だが、この大陸では選り好みなど許されない。
私は顔をしかめながらも黙って捌き、干し肉にして冬の備えに回していた。
あまりにも回数が多いため、ここでは当たり前の鳥なのだろうと思っていた。
そう思って姫に名を尋ねた瞬間、返ってきた言葉に、私は手を止めた。
チャージダック。
通称〝突撃兵〟。
私の国では200年前に絶滅したとされる鳥系魔獣であった。
その卵は、かつて「食の頂点」とまで称された。
一口で価値観が変わる、美食家の舌を狂わせる味。
その欲望が連鎖し、やがて狩り尽くされた……そう、私は学んできた。
だが〝突撃兵〟は、その通称の通り従順な獲物ではない。
危険を察知すれば、群れを成し、高速で飛行し突撃する。
卵の入手は命懸けで、当時は一個につき金貨千枚。
噂では、それ一つで屋敷が一つ買えたとも言う。
卵を求めて身を滅ぼした者。
争奪戦となり、共倒れした貴族。
一攫千金を夢見て串刺しになった冒険者。
この卵を携え、姫にプロポーズした魔法使い。
逸話は尽きない。
その伝説の魔物が……今、薪小屋の軒先で、無造作に干されている。
15
あなたにおすすめの小説
【流血】とある冒険者ギルドの会議がカオスだった件【沙汰】
一樹
ファンタジー
とある冒険者ギルド。
その建物内にある一室、【会議室】にてとある話し合いが行われた。
それは、とある人物を役立たずだからと追放したい者達と、当該人物達との話し合いの場だった。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる